今年は梅雨を真夏が追い越したかのような気候で、

7月初めから最高気温が35℃を超えるようになった。
義妹の雪は数年前から拒食症を患っていて、

冷房が苦手になり、また、

体型のことをあれこれ指摘されないよう、

肌の露出を避けているが、

こんな日はさすがに堪え切れず、手足を露出した服を着る。
といっても、家の中にいるときだけで、

しかも家族以外の者、それこそ、

姉の夫ではあるが血のつながりのない自分のような存在にも見られるのはいやなようだ。
ただ、ひとつ屋根の下に住んでいる以上、

おたがい顔を合わせないわけにはいかず、

年に十日あるかないかの、そういう姿の雪を見るたび、

よほど暑い日なんだなと感じたりもする。
特に今日は、目にしたのが去年の晩夏以来ということで、

その痩せ方に改めて驚かされた。
日焼けと無縁な細い腕には血管が浮き出て、

青白くさえあり、

薄い生地の水色のシャツから肩甲骨が透けて見える。
針金細工の人形、あるいは美女の幽霊画のような

その姿に遭遇すると、汗まで引っ込みそうで、

本人は気づきもしていないだろうが、

周囲の者にとっては

一服の清涼剤となる眺めでもあると思った。

 

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谷崎潤一郎の「細雪」に敬意を表して、

ヒロイン・雪子をめぐる描写を、

現代の痩せ姫に置き換えてみた。

フェティシズムの大家でもあるこの文豪もまた、

痩せた美女を「人形」にたとえている。

なるほどというか、我が意を得たりでもある。