女子アスリートの一定数が、

お腹を出したユニフォームを着ることについて、

空気抵抗を減らすためだというツイートを見かけた。

男性と違い、胸の膨らみが妨げになるらしい。

どこまで効果があるかはわからないようだけど、

空気抵抗という自然に対し、少しでも抵抗したい、

という人間の工夫だろう。

 

そこで思い出したのが「かすみ嬢の居場所」の、

かすみさんのこと。

彼女は本格的に水泳をやっていて、

当時流行していた「スピード水着」をめぐる、

思い出を語っていた。

あれは水の抵抗を減らすため、極力、

体を締め付けるようにできていて、

長い時間と力業的な手間をかけないと着られない仕組み。

ところが、痩せるにつれ、ゆるみが生じて、

楽に着られるようになり、泳いでいると、

水が入ってくるようになったという。

棒のような体になって、

それにピッタリな水着がもしあれば、

速く泳げそうなものだが、そもそも、

痩せ姫に合うサイズの水着はないし、

そこまで細くなると、体力もなくなる。

彼女は水の冷たさに堪えられなくなり、

泳ぐことをあきらめた。

 

で、思い出しながらふと考えたのが、

痩せ姫もまた、自然というものに抵抗しようとする、

そんな存在だということ。

抵抗したい気持ちは誰にだってあるけど、

彼女たちはその気持ちが強く、抵抗に必要な能力も高い。

ただ、かすみさんはそれを発揮した結果、

痩せることの次にやりたかったことをあきらめる、

ということにもなってしまったんだなと。

痩せ姫になるような人は、強く生きたいという、

気持ちも能力も大きくて、それでもいろいろ、

ときには生きることすら、あきらめることにもなる。

それもまた、痩せ姫の生きづらさなんだなと、

改めて感じた。

 

かすみさんがいなくなって、4年余り。

しかし、その記憶は褪せることがない。

彼女を知る人はみな、その記憶を、

心の中で大事にし続けているはずだ。