平地では桜の花も散り、葉桜となる季節ですが、

ふじ爺がこよなく愛する「青木ケ原樹海」の春は これからです。

今回は芽吹き始める、早春の青木ケ原樹海 側火山

(片蓋山→猪ノツブレ→鹿の頭→野尻草原→長尾山)をご案内させて頂きました。

地図とコンパスを使い、さすらう様に野生動物と同じ感覚で道なき道へと歩を進めています。

↑執行する前に、あらかじめ国土地理院の地図(1/15000)に散策ルート(赤線)を書き込んでおきます。
↑ふじてんスノーリゾート(山梨県南都留郡鳴沢村)駐車場からスタートし、鳴沢林道を歩きます。
すぐにフジザクラ(豆桜)がお出迎え♪
↑バッコヤナギ(跋扈柳 別名 山猫柳)の芽吹き♪
 綿毛を白髪に見立てた「婆っこ」に由来すると言われています。
↑カラマツ(唐松)の芽吹き♪
↑モミジイチゴ(紅葉苺)の芽吹き♪
↑オオカメノキ(大亀の木)の芽吹き♪
↑笠雲に覆われた富士山!
「にかい笠」から「えんとう笠」に発達しました!
↑シラビソ(白檜曽)樹林帯の袖にタマゴケ♪
(玉蘚)
↑片蓋山南麓にアカフタチツボスミレ♪
(赤斑立壷菫) 
葉の葉脈に沿って赤い模様があるのが特徴です。
↑片蓋山南麓に溶岩を加工して「冨士仙元」と彫られた石碑。
富士講の一派である「山臣講」は、青木ケ原樹海を修行の場としていました。
おそらく山臣講(やましんこう)が建立したものと推測します。

↑片蓋山南麓の比較的等高線が緩やかな場所から、山頂を目指します。 
ふじ爺は この様な登山道が全く無い場所では、鹿のフンを確認しながら獣道(鹿)を利用して歩きます。
野生動物も人間と同じで、歩きやすい場所を選びます。
↑シッポゴケ♪(尻尾蘚)
↑強い風で折れてしまった? モミ(樅)の枝には、モミボックリの鱗片が落ちた後の芯が残っていました♪
↑片蓋山の火口底へ下るため、火口縁を進みながら傾斜が緩やかな場所を探します。
片蓋山火口縁では既に植生が変わり、針葉樹から落葉広葉樹になっています。
↑片蓋山火口底へと下る ふじ爺。
↑土へと還っていくブナの倒木。
青木ケ原樹海の大自然の営みと輪廻転生を目の当たりにする事で、「色々な生命の恵みによって生かされている」と、心から思います。
↑片蓋山火口底が見えて来ました♪
先の大きな倒木辺りが火口底です。
↑イワネコノメソウ♪(岩猫の目草) 
この時期、青木ケ原樹海ではよく見る事が出来ます。
↑マッチ棒の様なキヒシャクゴケ♪(黄柄杓苔)の胞子体♪
地域によっては 絶滅寸前の苔です。
↑ヨゴレネコノメソウ♪(汚れ猫の眼草)
↑苔むした涅槃樹から倒木更新♪
天寿を全うし、人知れずひっそりと倒れた樹木たちを 私は「涅槃樹」(ねはんじゅ)と呼んでいます。

倒木更新とは..倒れた樹木を苗床にして、次世代の幼木が育つ事をいいます。
苔むした倒木に他の樹木の種が落ち、苔の水分と養分、倒木が朽ちていく養分で芽吹き、幼木が育って行きます。
↑片蓋山火口底の観察を終え、片蓋山 山頂へと歩を進めます。
↑ヒゴスミレ♪(肥後菫)
葉は エイザンスミレと似ていますが、側弁の有毛が特徴♪
地域によっては、野生の子は珍しいみたいです。
↑片蓋山 山頂のフジザクラ♪(豆桜)
片蓋山(標高1468m)は 約3000年前にスコリアを噴出して出来た「スコリア丘」です。
マグマが地下の浅い所まで来ると、周りの圧力が下がり、炭酸ジュースの蓋を開けた様にマグマの中の火山ガスが泡になります。泡を含んだマグマは周りより更に軽くなるので、地上まで上がって来て噴き出します。これが噴火です。
↑片蓋山下山途中にユキザザ♪(雪笹)
若葉は山菜として食べれます。
↑ミヤマカタバミ♪(深山片喰)
↑ヤマシャクヤク(山芍薬)の蕾です♪
あと10日もすれば開花しますね♪ 
これから獣道を辿って「猪ノツブレ」へと登って行きます。
↑猪ノツブレ山頂から、先程登った片蓋山を望みます。
↑猪ノツブレは 標高1350mのスコリア丘です。
↑お昼休憩中に、マリンバンド演奏♪ 
お披露目曲は 本日の山行にピッタリ? の 
「さすらい / 奥田民生」と「桜坂 / 福山雅治」の 2曲♪
↑ハウチワカエデ(羽団扇楓)の花♪ 
鮮やかな赤!
↑土に還る野生動物..
猪ノツブレと鹿の頭の谷間は 野生動物の「安息の地」で、ヌタ場や墓場となっています。
↑鹿の頭へと登り返します。
鹿の頭(栂尾山)は南峰と北峰の双耳峰となっており、まず南峰を目指します。
↑鹿の頭 南峰(標高1318m)から鞍部を抜け、北峰(標高1322m)にやって来ました♪
鹿の頭 北峰からは富士山を眺望する事が出来ます♪
 写真右側にはコブシ(辛夷)が咲いています。


↑早春の空に、芽吹きの季節を告げるオオバクロモジ♪(大葉黒文字)
良き香りが漂っています♪
オオバクロモジは 花枝に有毛がある事と、更に葉裏にも軟毛があるのがオオバクロモジの特徴です。
通常のクロモジと比べて寒さに強い樹種です。
↑鹿の頭 北峰のウグイスカグラ♪(鶯神楽)
春のうららかな陽気が、明るく優しい色の花を次から次へと咲かせます♪
↑フジザクラ(豆桜)の胴吹き桜♪
老樹によくある事ですが、樹木にエネルギーが不足してくると、急いで葉を増やそうとして、幹から直接 芽を出す事があります。
それは樹木のエネルギーは、葉っぱからの光合成で作られるからです。
桜の場合、葉っぱより先に花をつけるので、胴吹き桜となるわけです。
こうして桜の木を守る働きをしているわけで、この逞しさに感動です!
↑満開のアセビ♪(馬酔木)
↑フイリヒナスミレ♪(斑入雛菫)
↑鹿の頭 北峰から北方向へ下山途中に、オレンジ色の樹液を出している樹木が目に止まりました。 
樹液を出している樹木は 樹肌と落葉、樹形から、おそらく水木(ミズキ)の古木だと思われます。
根から水を吸い上げる力が強く、字のごとく、春先に枝を切ったり、幹に傷が着くと、水(樹液)が滴り落ち、それが発酵しオレンジ色の樹液酵母となるようです。


↑青木ケ原丸尾溶岩流と野尻草原のキワに放置廃棄された「木製トラック」です。
ドアは木製のフレームに、3つの蝶番で取り付けられています。
おそらく、昭和初期に青木ケ原丸尾溶岩流のキワで製炭したり、茅葺きに使うチガヤやススキ、スゲを野尻草原で刈り取り運搬していたと推測します。
↑この野尻草原の母岩は溶岩で無く、今から約3000年前に片蓋山と大室山がスコリアを噴出し、堆積した場所で、植生の遷移が進んでおらず、チガヤやススキ、スゲ等の植物が 今でも繁茂する地帯となっています。
↑野尻草原を 更に東方向へと進むと、貞観大噴火(西暦864年~866年)で流れ出た溶岩の縁(ヘリ)を見る事が出来ます。 
約3000年前のスコリア堆積地である野尻草原に、1158年前の溶岩(青木ケ原丸尾溶岩流)が被っている場所です。
この「ヘリ」で、植生がガラリと変わります。
例えば、青木ケ原丸尾溶岩上にはヒノキが多く見られるのに対し、野尻草原側はヒノキが全く見られず、サワラ(ヒノキと似ている)が多く見られます。
↑草原地帯を抜け、長尾山へと歩を進めます。 
長尾山は 846年~866年の約2年間、貞観大噴火で大量の溶岩(青木ケ原丸尾溶岩流)を噴出させた側火山です。
↑長尾山 西麓から山頂を目指します。 
「西麓は等高線が狭いため、若干 急登ですが、登る距離は短いです。」と皆さんに伝え、登って行きます。
↑ミヤマエンレイソウ♪(深山延齢草)
↑アカマツ(赤松)のマツボックリ。
 な~んだマツボックリか!と思われるでしょうね.. 
実は この長尾山から噴出された溶岩の影響で、この一帯は焼き尽くされ裸地となりました。
長い年月を経て土壌環境が整って来ると、強い光を好む先駆樹種のアカマツなどの低木林を形成したわけです。その証がこの赤松のマツボックリです♪

↑長尾山 山頂です♪(標高1424m)
参加者全員 三本指で、三等三角点にタッチ!
↑長尾山を下山して行きます。
↑長尾山北麓のルイヨウボタン(類葉牡丹)の芽出し♪ 
ポツポツと雨が降り始めて来ました。
↑鳴沢林道に出た所で雨具を装着して、ふじてんスノーリゾート駐車場へと向かい、PM17:20にゴールしました♪ 
 帰路は雨になりましたが、青木ケ原樹海散策中は お天気に恵まれ本当に良かったです♪
↑活動データとして記載しておきます。
歩いた距離...11.49km
歩いた時間...9時間14分(ややゆっくり)
歩いた歩数...20703
累積標高(登り)...642m
累積標高(下り)...641m
消費カロリー...1369kcal