キングオブコント2014の感想です。


今年は準決勝2日目 を見に行ったので、その時感じた「客席レベルでの感覚とテレビを通しての感覚の違い」を一つのテーマに決勝を見ることにしました。


それでは感想に行きたいと思います。

ちなみになんですがもし準決勝を見に行ってなかったとすると、知ってる・ネタを見たことあるコンビは

さらば・ラバーガール・ラブレターズ・シソンヌ・チョコレートプラネットの5組でした。半分。



第一試合

○シソンヌvs巨匠



●シソンヌ

準決勝でこのネタを見ました。その抜群の演技力と声量、キャラ造形で

客席にいて、どこが笑えるポイントなのかわからないまま、その空気感で笑っていました。

そのとき「これテレビを通したらどう映るのかな」と思ったのもそうですし、上の準決勝の記事でも書いてるんですが、シソンヌのネタってテレビでやってもあんまり受けないイメージだったんですよ。

「シュール」と「つまらない」は紙一重って良く言いますけどそんな感じで。

なのでこのネタも、おそらくお茶の間は「?」だったのではないでしょうか。たぶん僕も初見ならそうなります。

テレビを通してだと空気感なんてわかりようがないですからね。

準決勝と共通してウケてたのは「黒沢さんはジャリを食う」ってとこですかね。


●巨匠

「テレビで流せなさそうなおっさんのネタ」と聞いていましたが、あーこういうことか。

おっさんが子供をいびったりせず、むしろ教育を施しているのが良いですね。ダメおじさんなのに。

社会風刺的なネタに収まりそうなところを、道徳的なワードを入れることによって

コント自体がやわらかくなるので、どの世代にも受け入れられるネタになる。お茶の間ってブラックネタを嫌いますからね。



結果はシソンヌの辛勝。僕は巨匠の方がいいかなって思ったんですが、シソンヌって「若手芸人でシソンヌがわからないやつはセンスがない」って言われてるぐらい芸人の中で神格化されてるみたいなんですよ。

なので、その分かな・・。でも接戦だったと思いますよ。



第二試合

○ラバーガールvsリンゴスター


●ラバーガール

ラバーガールらしいコミュニケーションコント。ほぼほぼのボケがスカシ系だったり突拍子もないものなので苦手な人は苦手(僕もあんまり)だと思いますが、このネタはやはり準決勝1日目で1ウケだったこともあり

かなり爆発力を持ったネタだったと思います。ラストの会計の下りが一番の盛り上がりで尻切れトンボにならなくていいですしね。

ほんのちょっとだけ思ったんですが、ラバーガールって「すっとぼけ系手数ネタ」でジャンル的にはサンドウィッチマンと似てると思うんですが、サンドウィッチマンはしっかりとツッコむのに対しラバーガールは訂正なので、淡々とやってるような感じに見えるのかなと。


●リンゴスター

すごい学生演劇感。なんか安心する。

リンゴスターが出たのは準決勝1日目で、この日はあまりウケがよくない日だったんですよね。

もちろんしっかりとウケての進出だったんですが、もしウケが多かった2日目だったら・・・(今年は1日目と2日目で半分ずつの選出)

いやでもやっぱり、正統派コントを引っ提げて芸歴4年弱でテレビ初登場しかも生放送が賞レースの決勝ってとてつもなく凄いことですよ。

審査員もかなり勇気ある選出だったと思います。内容も「送り出したスパイがライバル企業先で革命を起こしてくる」って面白いですしね。


結果はラバーガールの圧勝。でもね、芸歴13年に芸歴4年が向かって行った試合。

これが後楽園ホールだったら大拍手ですよ。いずれプッシュされますよ。(プロレスの例えですみませんが)


第三試合

○バンビーノvsさらば青春の光


●バンビーノ

準決勝2日目で1,2を争うほどのウケでした。実際かなり面白かったです。

ただ、テレビを通したときにどう映るか気になってたんですが杞憂でしたね。

このネタを見て「よくわからない言語や踊りが笑うところなの?」と思った人もいるみたいですが

このネタの面白いところは「獲物ごとに狩猟方法を考え試行錯誤を繰り返し、最後には対人でその地域を支配する」という文明の発達を4分のネタで表してるとこなんですよ。それなのによくわからない踊りに釣られた動物たちをニーブラで捕まえていくだけという下らなさとのギャップ。2700と比べられましたが、このネタはシステムの提示に+αあるから決勝まで来れたわけですね。


●さらば青春の光

このネタ、準決勝では微妙なウケで選出も危ぶまれてたんですよ。

下ネタで引くところで客の方も引いてしまうので笑いがなくなるのが難点だと思いますが

聞いていた割にはそこまで悪いネタでもなかったなという印象でした。

まあ、良いネタでもないんでしょうが。でも、後半の掛け合いや間なんかは「っぽく」て良かったですね。

それと、準決勝でそこまでで決勝だとそこそこってことは、さらば青春の光はテレビ向きなんだなーと思いました。


結果はバンビーノの勝ち。思ったよりさらばに票が行きましたね。バンビーノの方が面白いですが、二本目が確実にあるのはさらばの方という。


第四試合

○ラブレターズvs犬の心


●ラブレターズ

さまぁーずの三村がツイッターで言ってましたけど「いじめVTR」は要らなかったですね。

そういうの初登場でやるものじゃないのかと。


準決勝のレポでは「金に汚いメジャーリーガー」とのことでしたが、期待していたよりそんなに性格悪くなかったっていう。

溜口さんのテンションの高さがあんまり見てる側のテンションと一致しなかったのが敗因かなーと思います。

それと、やっぱりVTRでああいうこと言ったからこういうネタで笑えなくなってしまう。

社会風刺ネタでも道徳的ワードを入れ軟化させた巨匠を見てしまうと。


●犬の心

一方で絶妙な鍋捌きを見せるV(笑)


出だしの演技がすごく古臭くて芸歴の長さを感じさせましたが、服を脱がせた辺りから一気に盛り返してきましたね。

「リバーシブルかよ!」は聞きとれなくて後で知ったんですが、かなりウケて良いキッカケになっていた。

それからバイセクシャルネタに持って行くんですが、安易な同性愛(セクシャルマイノリティ)ネタは嫌われる傾向にある中で「それ今、関係無いだろう!」とあくまで主軸は一万円の行方というのが上手かったなと思います。

すぐに舵を切らないってのがミソだったのでしょうか。テレビでLGBTに間違った触れ方をすると、あらぬところから批判が飛び交うことがありますが、誰も傷つけないところで収まってたように感じます。


結果は犬の心の圧勝。準決勝ではラブレターズの方が圧勝だったでしょうから、VTRってこわいですね。


第五試合

○チョコレートプラネットvsアキナ


●チョコレートプラネット

クイックオープンネタ。準決勝で見ました。立ち見で遠かったので小道具があまり見えづらかったのですが

あんな機械を使っていたとは(笑)

やはり、このネタはどうでもいいことにお金をかけることを厭わない世界観とそれをラストで「時代っすかねー」で片づけてしまうところが面白いですね。

あと、オチが見たときより大人しめになってました。準決勝では飛び跳ねてたのに。


●アキナ

あ、不祥事を起こしたのは映していいんだ。


これも準決勝2日目組なんですが、準決勝では「スッキリした?」から最後の捕獲まで「おー!そうくるかあー!」というような雰囲気につつまれ最後のオチで笑って締まるといった感じだったんですが

決勝だとなんだか「スッキリした?」で引いてましたね。それか「うまいなー」となっても笑いには繋がらなかったか。


結果はチョコプラの勝ち。キング取れへん・・。


ファイナル

順番はチョコプラ→バンビーノ→犬の心→ラバーガール→シソンヌ


●チョコレートプラネット

カラオケの字幕の当て字がひどい、というネタ。うまく言い表せないですが、関西っぽいネタだなーと思いました。

チョコプラは昨年2回戦止まりと出ていたように、燻っていた印象が強いので2本目あるのかなーと思いましたが

後のメンツのネタを考えたら良い方でしたね。

男女男は(なぶる)だよ!全然そんな平和的な意味合いはないよ!ってのが一番のポイント。

というか、カラオケの映像を作ったの凄いですね。どうやらお抱えの映像制作みたいですけど。


●バンビーノ

あー、こういうシステム的なネタをやるコンビなのか。


前にあらびき団で別の若手芸人がゲーム的なネタをやったときに、基本的に生温かい目で見る東野が「ゲーム世代やなあ」と一蹴してたのを見て、確実にゲームの世界観が瞬時に理解できる世代とそうでない世代があるということがわかりました。そしてその「ゲーム脳」というのは短時間でのネタ、テレビを通してのネタへの相性が悪いのではないかと。

今回のネタもゲームに慣れ親しんでる人は「ハグハグハグゲッター」で1Pと女が出てきた時点で

「これが抱き合えばゲームクリアなんだな」というのがわかると思いますが、そうでなければ最後までなんなのかわからない。

まあ、わかったところで面白いかどうかは別問題ですが。ダンシング~はシステム提示+αがあったので笑いになりましたが、このネタはシステム提示だけだったということだと思います。

若くて勢いはあったのですが、やはり2つ目のネタってどの賞レースでも難点ですね。


●犬の心

妹が欲しい!というネタ。まさかゴールデンで京都アニメーションという言葉を聞くとはな・・。

一本目に比べると、ビジュアル的にも弱いというか基本的にはツッコミだけだったので

難しかったですね。オシャレに興味が無くて坊主で虫好きの34歳もそこまでワードが強いわけでもないですし。

うん、難しい。ラクロス部の京アニに出てきそうな美少女像は天津向の頭の中にいます。


●ラバーガール

あ、このネタ見たことある。

「緑茶オレンジジュースコーヒーのホット下さい」がちょっと面白かったです。そりゃ文脈で言ったらそうなっても仕方ないよね。

ラバーガールが好きな人はあの顔芸ってのを嫌いそうなイメージなんですが、個人的にはラバーガールってスキがなくて淡々とネタをやる印象なのでああいった緩急は良いように思えます。

前にラバーガールがキングオブコント決勝にきたときに(猫カフェネタ)、「言葉よりも小道具とか飛び道具の方が面白い」と言ったことがあるんですが、たぶんそれって緩急を欲してたんだなって今気が付きました。

最後のタコ焼き屋さんはちょっと尻すぼみでしたね。


●シソンヌ

昨年の決勝感想 でこんなことを言ったんですけど

「劇」と「お笑い」の分量の問題に苛まれた今大会、バッファロー吾郎やTKOのような関西的なコントの作り方に原点回帰する可能性がある。演劇性を持たせたいコンビは頑張らなきゃ!(意訳)

まさか、ブッチぎりで演劇性のあるコンビが来るとはなあって感じです。

個人的な賞レース論として「前大会でブームになった・なりそうなものを芸人たちは察知し研究してくる」というのがあり、つまり前年の大会のテーマと今大会のテーマがリンクするということなんですが

前大会を受け演劇寄りに踏み入ることを芸人たちが選択したとは、って感じです。

今大会で見ても、バンビーノが少し異色でチョコプラが関西コントっぽいだけで後はキャラの面白さ先行というのはあまり無いですよね。それよりもバンビーノとアキナの関西勢がこういったコントを持ってきたというのに若手関西芸人の明るい未来が見えます。今まで発想勝負だった関西勢がしっかりとしたコントを作れるようになってきたということですね。

シソンヌの感想ですけど、僕はこのネタ好きです。ただこれも「コント」か「劇」かって言ったら微妙なところですね。

これぐらいだったらコントって言ってもいいと思うけど・・・。これに関しては「ドラマっぽい」コントってことでいいのでは。3回目の「プロね」が消えゆくとかそういうところ。

チョコプラが最後まで残るもシソンヌの勝利。シソンヌが優勝。

・・・・正直、準決勝で実際にシソンヌの迫力を見てなければ、一般的な声と同じく「なんでシソンヌなんだよ!笑えるところがなかったのに!」って僕も言ってたような気がするんですよ。だってキングオブコントだから当然笑えるものだろうし。

でも、あの会場での空気感を見てしまったので、今回もあの空気感だったんだろうなって思います。

これ、もしかしたら2011のロバートのときもこんな感じだっただろうか。

あとがき

冒頭に「客席レベルでの感覚とテレビを通しての感覚の違い」って書きましたが、今回その「テレビというフィルター」の限界を感じました。僕は小さい頃からテレビっ子だったので基本的にテレビ擁護というかテレビを通したものを好み、それがこじれてこんな長文の感想なんて書いてますけど

もう若手芸人が出る賞レースをテレビで流すの限界なんじゃないかと。

現在のアーティストはCD売上よりもライブでの売上を目標としてる、なんて言いますけど

おそらく現在の芸人もライブでの売り出しを考えて、あわよくばテレビに出れるっていう路線がスタンダードなんだろうと思いますよ。かもめんたるも「舞台にシフトしてる」って言ってたり、今回のシソンヌもそういった括りだし。

ここ2年ぐらいの賞レースの進出者は準決勝のレポを見る限り、ほとんど観客のウケで決まってるんですよね。

なので名前だけはある中堅よりも一発決めた若手芸人が決勝に上がるようになった。

準決勝に行って見て思いましたが、前売りでチケット買ってる人らは「プロ素人」ですよ。素人のプロですよ。

たぶん、年に何十回とライブに通って舞台客慣れしてるんですよね。もうライブでアピールするっていう時代なんですよ。

前に「単独ライブで固定客の中でネタをやってウケたからってテレビでやると大ゴケする」ってのを知った時は、あんまりライブってのもいいもんじゃないなって思ってたんですけど

今回の審査員席にいた芸人って中堅どころなんかはテレビで普通に出てる人ですけど、こと賞レースということに関しては時代遅れの集まりってことになるんです。

賞レースは準決勝の会場にいる目の肥えたプロ素人の笑いの量、そして会場の空気をどれだけ作れるか。

それで勝ち上がってきた人たちのネタが果たしてテレビで伝わるか、ってところだと思うんです。

伝えなきゃいけないんでしょうけど、もうちょっと別物じゃないですか。これ。

それと「コント」と「喜劇」問題ですが、神保町花月の躍進もあるでしょうし

そういった、舞台に携わっていくことで芸人の中での「コント」観というのに変化があって

憶測ですけど、シティーボーイズとかあの頃の感覚に戻ったのでは?という。生まれてないので完全に妄想ですけど。「コント」かと言われれば「コント」だし、「劇」かと言われれば「劇」じゃないですか。あの辺の感覚って。

従来のコント観って90年~かあるいはその前の「ひょうきん族」を子供時代に見ていたか、ですよね。

そのコント観が中堅芸人、ひいては審査員席にいる芸人たちで

決勝にいたのは、舞台客慣れした客が選んだ舞台に順応できた芸人たちってことなのかと。

長々と書いてしまいましたが、シソンヌのじろうは深夜時代の「OV監督」で映像作品への才能を開花。

その番組が今度ビートたけしがメインでゴールデンになります。また出演もあるでしょうから、そこで才能が認められるといいですね。

これで落としたいと思います。