side柳生
柳くんが勝利を確信し、キスをする寸前に私は片腕を振り下ろす。
しかし、その腕が獲物を捉えることは叶いませんでした。
「紳士も時には鬼になるのだな」
振り下ろした腕を掴みながら、柳くんは冷静に対処します。
「状況が状況ですから…」
「簡単にはいかないということか」
私たちの間には互いの腕があるため、簡単にはキスが出来ないはずです。
これで、10分凌げば私の勝ち。しかし、彼の力に圧されそうになっています。
ここまでかと諦めかけたとき、空気がズシッと重くなり、気温が5℃ほど冷えた気がしました。
その理由は嫌という程わかりました。
柳くんの後ろで元凶が、笑みを浮かべながら立っています。
「やぁ、お楽しみのところ悪いね」
柳くんはゆっくり私から離れ、近づいてくる人と対峙します。
私も立ち上がり、その人を捉えます。
「酷いな柳生。ずっと保健室で待ってたのに」
幸村くんは笑っていますが、彼が出す空気は重たいです。
「そうでしたか…」
保健室に行かなくて良かったと、心の底から思いました。口にすることはありませんが。
しかし、私はこの2人から無事に逃げれるのでしょうか。
そればかりが心配です。