side柳生
仁王くんに肩を掴まれてしまい、逃げることが出来ません。
せめてもの抵抗で、顔を伏せますが気休めでしかありません。
「無駄ぜよ。柳生」
「っ…」
「俺の勝ち、ぐはっ!」
目をぎゅっと閉じた瞬間、仁王くんの悲鳴が聞こえてきます。恐る恐る目を開けると、目の前に居たのは仁王くんではありません。
「…丸井くん?…本当に…」
息を切らしている丸井くんがいました。そして彼の足元には、片方の頬を腫らしている仁王くんがしがみついています。
「何してくれたんじゃ!せっかくいいところじゃったのに!」
「誰がお前に比呂士をやるか!」
2人は私を置いて口ゲンカを始めました。助けてくれた丸井くんに何も言わないのは私の性分が許しません。
が、これはある意味自分の人生が懸かっている勝負。非道にならねばいけません。
私はこっそりと調理室を後にしました。
このまま走り続けるのは無理があるので、やはりどこかに隠れなければなりません。
私は近くにあった、生徒会室に逃げ込みました。