※彼岸・塔婆供養の大事さについて・・パート2

 

塔婆の題目をしたため、

「此中如来全身(此の中には、巳に如来の全身まします)」

と法華経の文を書くのは、この塔婆は、既に仏様のお身体であり、

この仏様のなかに亡くなった人が一緒に具わるということを示します。

 

塔婆を建てるのは、建てる人の信心と追善の願力とによって、亡くなった人の霊を仏心に表すのであり、

「ご本尊」を通じて「題目(南無妙法蓮華経)」を供養する故にその功力を得て、

故人もまた回向する人も「大功徳」をうけることになります。

 

そこで、塔婆供養に当たって、まず考えなくてはならないことに、人間の死後の問題があります。

 

これはたいへん難しいことで、その解明は最高の哲学と言えます。

 

日蓮大聖人は、前に引用したように、すべて「地水火風空」の五大の元素から構成されていると仰せです。

この五大は、分解してはまた集まり、集まってはまた分解するというように、常に離合を繰り返しています。

 

人間もひとたび死ぬと、その五大は離合します。

 

このとき、人間を形作っていた肉体が分解され、無に帰したように見えますが、

その「生命の業(ごう)」は、永遠に宇宙法界のなかに生きていくのです。

 

しかも、生前から死ぬ時に至る善悪の果報を、

そのまま死後の世界まで持ち続けますから、

苦しみ、悩み、あるいは間違った教えに惑わされて死んでいけば死後の世界でも「苦」を感ずるのです。

 

そして、もし先祖や親戚、知人で亡くなった人のなかに、

死後の世界で苦しんでいる人がいれば、

生きている親類縁者の側にも、その苦しみや悩みが影響してきます。

 

ですから、遺族の人たちの強い信心とご本尊の功力によって、

亡くなった人が成仏の境界にならないと、

生きている人も、この社会も、本当の幸せにならないということになります。

 

このことを仏教では、

「三世の益(やく)に欠けるが故に五濁悪世(ごじょくあくせ)となる」

と言われています。

したがって、塔婆供養・先祖回向ということが必要になっていくるのです。

 

前にも記したように、五輪の塔婆に題目(南無妙法蓮華経)をしたためて戒名や俗名を書けば、

それは亡くなった人の身体を表します。

 

そして、ご本尊を拝してお経を読み、題目を唱えると、その塔婆はご本尊のお力によって仏界を現じ、

亡くなった人の生命に感応(かんのう)するのです。

 

この感応というのは「御義口伝」に、

「衆生に此の機有って仏を感ずる、故に名づけて因となす。

仏、機をうけてしかも応ず、故に名づけて縁となす。」

 

と説かれているように、衆生の善根が仏を感じて発動する時、

その衆生の性欲(しょうよく)に応じて仏様が慈悲を垂れ、

仏様の心(応)と、衆生の心(感)がとけあうことによって、

仏果を成熟(じょうじゅく)させるのです。

 

「成仏したい」・「成仏させたい」という、

衆生の一念心に仏様が応じられるということで、

塔婆供養の場合は、回向する者の「一念心」が大切な「因」となります。

 

これはまことに難解なことですが、

塔婆供養はこの「観応」の原理によって、死者が成仏の境界に進むのです。

 

「草木成仏口決」には、

「我等、衆生視する時、塔婆をたてて開眼供養するは、死の成仏にして草木成仏なり」

と仰せられています。

 

生きている者がご本尊にしっかりと題目を唱えると成仏できて幸せになるように、

塔婆供養により、自分で意思表示のできない「故人」や「非情の草木」がご本尊の慈悲、題目の功力によって成仏できるのです。

 

「昔、インドに「はしのく」という王様がおりました。

ある時、仏様のところへいって、

 

「私は占い師に見てもらったところ、あと七日しか寿命がないと言われたのでたいへん苦しんでいます。

どうかこの苦しみを救ってください。」

 

と言われました。これを聞いた仏様は、

「王様よ、そんなに苦しむことはありません。

あなたが寿命を延ばして幸せになりたいのでしたら、塔婆を建てなさい。

塔婆を建てる功徳はとても大きくて、計り知れないほどです。」

 

と言われ、また、次のような因縁話をされました。

 

「大昔、ある牧場に一人の子供がおりました。

そこへ占い師がきて、その子供はあと七日もすれば死ぬであろうと言いました。

ところが、その子供がほかの子供とママゴト遊びをしながら、

自分の背丈ぐらいの塔婆を作りました。

 

すると、その子供はその塔婆を建てた功徳によって、七年も長生きしたのです。」

 

つまり、ママゴト遊びをした塔婆でさえその功徳で寿命が延びた、と言う事です。

 

この話をきいた「はしのく」王は、信心を起こして盛んに塔婆をたてたところ、仏様の言葉とおり大功徳を受け、

寿命も長く伸ばすことができて、王の家は栄え、

身体も健康になり、一生、幸せな生活を送ることができました。 」

 

このようなことが、造塔延命功徳経に説かれています。

 

法華経方便品(ほうけきょうほうべんぽん)には、

「土を積んで、仏廟(ぶつびょう)を成し、乃至童子のたわむれに、砂を集めて仏塔とせる。

かくのごとき諸人等、皆、すでに仏道を成じき。」

 

と説かれています。

 

このように塔婆供養をすると寿命を延ばせる、大きな福運を積める、

常に仏様に御慈悲を受けることができる、など、

仏法上、とくに大聖人の教えから見ると塔婆供養の意義はまことに深いものがあります。

 

亡くなった人に追善回向をするには、

塔婆供養が最上の方法で亡くなった方は塔婆供養を待ち焦がれています。

 

しかしながら、

ここで忘れてはならない大事なことは「戒壇のご本尊」を離れた塔婆供養は「真の供養」とはいえないということです。