沖縄が赤化されたとの指摘があるようです。
2014年12月の衆院選で、小選挙区4区共に自民候補が惨敗したのが理由のようです。
大東亜戦争を振り返れば沖縄県民の反軍感情が激しいのは人間感情としてはやむを得ないと、私は思います。
なぜ沖縄が反軍なのかは、非常に簡単な理由です。沖縄県民にとっては、軍隊などは有害無益だというのが実感だからで、これは戦後の多くの日本人が抱いた感情だと、私は思うからです。
こうした、沖縄県民の反軍感情を、左傾化・赤化などと批難することは的外れであり、尖閣問題などの中共政府の軍事的脅威にさらされている国防上の最重要拠点の沖縄に根づいている反軍感情という宿痾を何とかしなければ、日本の国益を大きく損なうと、私は思います。
そこで、沖縄がなぜ反軍なのかを、帝国海軍の戦略・戦術構想を振り返ることで、考えてみます。
一般的には、大東亜戦争当時の沖縄戦について、帝国陸軍批判・帝国海軍擁護の風潮があるように、私は、感じています。しかしこれは、軍事常識の点からは、海軍擁護など非常識極まりない。
確かに、帝国海軍は真珠湾攻撃のように空母機動部隊を集中運用するという、人類史上まれな軍事革命を起こした優れた面もある一方で、恐るべき欠陥も抱えていました。国家総力戦には全く役に立たないという、帝国海軍の欠陥です。
日露戦争の日本海海戦でのバルチック艦隊殲滅などの活躍にみるように、帝国海軍は、艦隊決戦に特化した海軍でした。そのため、敵の通商破壊、自国の航路の安全確保、艦砲射撃による上陸支援等々は、ほとんど考えもしないという、いわば畸形の海軍だったのです。
そして特に大東亜戦争のような国家総力戦においては、極めて重要な海軍の任務というのは、制空権・制海権の確保以前に、航路の安全を確保(敵潜水艦を駆逐)し、人員・物資の船舶により充分な輸送を行うことです。
当たり前ですが、燃料がなければ軍艦も航空機も戦車もただの鉄くずの役立たず。武器・弾薬がなければ兵は戦えず、食料がなければ人は餓死し、戦わなくても無力化してしまうからです。輸送がとまれば、敗北なのです。
繰り返しますが、海軍の任務として艦隊決戦で敵の軍艦を沈めることも重要ですが、大東亜戦争のような国家総力戦においては、敵潜水艦の通商破壊からの防御・自軍潜水艦による通商破壊戦の実施(敵側の輸送を妨害・破壊)が非常に重要なのです。
通商破壊戦の威力は、第2次大戦で独海軍デーニッツ提督による灰色の狼と怖れられたUボートが英国チャーチル首相を最も苦しめたことでもあきらかです。
一方、前述したように、潜水艦の運用などについて大日本帝国海軍は、航空機搭載の伊400型などの世界最大の潜水艦を実戦配備するなど、技術面では優れた点もあったものの、あくまでも艦隊決戦を想定していたため、通商破壊戦争に潜水艦を活用する考えすら持っていませんでした。
また、敵・米国が潜水艦で日本の通商破壊をするとも考えず、対潜水艦装備も戦術も貧弱なままでした。
例えば対潜兵器は、爆雷(船尾から海面に撒く対潜爆弾)だけで、米英海軍のヘッジホッグのような前投兵器(爆雷を潜水艦が潜んでいる海面上に投擲する兵器)を装備せず、海防艦自体も戦争末期に配備されるような状態でした。そのため、日本近海ですら米潜水艦の跳梁跋扈により、好き放題の通商破壊戦を許しました。
この帝国海軍の潜水艦運用面での無能無策・対潜作戦での無能無策により、戦争当時の帝国は海上輸送が極めて困難でした。
沖縄戦に話を戻すと、米軍に攻撃されることがハッキリしている沖縄諸島から、帝国海軍は安全に民間人を避難させる能力がなかったわけです。沖縄の学童疎開途上、撃沈された「対馬丸」などの多数の悲劇を産みました。
沖縄の陸上戦を戦った、帝国海軍陸戦隊の大田実司令官の電文は、非常に有名です。
「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後生特別ノゴ高配ヲ賜ランコトヲ」
これを好意的に受取り、「海軍軍人は人道的だった」などというのは、勘違いだと私は思います。
大田実提督は、責任感の強い立派な軍人で、海軍の無能ぶりを痛感していた。
それ故、沖縄の民間人を避難させることもできず戦闘に巻き込んだことへの慙愧に堪えずに打電したのがこの電文だと、私は思います。
国民を守れないどころか、民間人をムザムザ戦闘に巻き込むなど、軍隊の風上にも置けない。これが帝国海軍の無様な実態だったことは、日本人として冷徹に認識すべきだと、私は思います。
当たり前ですが、戦闘に徴用する以外の民間人、特に女子供・老人を海軍が避難させていれば、沖縄の戦闘に巻き込まれてで死ぬことも、自決に追い込むことなどなかった。そもそも、命を捨てる覚悟は軍人には必要でも、民間人に強要すべきではありません。避難させてもらえず、死の覚悟を強要された民間人が、自分たちは見捨てられたと思うのは、当然至極の感情です。
こうしてみれば、沖縄県人はサヨクだから反軍だというのではなく、沖縄戦の海軍の無能・無策・無責任の実体験から軍は有害無益だと思い込んでいるのだと、私は思います。
まずは、沖縄の皆様方の気持ちを理解することが重要で、その上で、日本の国防軍事力の充実を図る必要があると、私は思います。
現在、多くの日本人は自衛隊を支持していると、私は思います。自衛隊の違憲論議はなりを潜め、中共に対抗するための軍拡などは当然のこととして世論に受容され、自衛隊の専門誌が書店に並ぶようになっています。
このように、自衛隊が支持されるようになった理由は、阪神・淡路大震災などの多くの災害、そして何よりも東日本大震災での自衛隊の命を賭しての大活躍が日本人の目に焼き付いたためだと、私は思います。
戦後70年を経て、やっと日本人が軍隊の有効性を再認識し始めたのだと、私は思います。
沖縄が反軍感情から抜け出すのには、残念ながらもっと時間が掛かりそうだというのが、私の危惧です。