忘れる。


おのずと記憶がなくなる。

思い出せないでいる。心にのぼせないでいる。


-広辞苑より-






人は忘れる生き物である。





忘れる。

昨日の夕飯は何だっただろうか。

少し経って思い出してみると

この時までそれを忘れていたことに気付く。




一方で、これらの記憶を

思い出してみると簡単に届く距離に、

傍にずっといたことにも気付く。




ところがどうだろう

厄介なことに

私たちには自分の力だけで思い出せない

或いは存在していないに等しいほど

自身から離れてしまった記憶がある




実際に起こったこと

実際に思ったこと

大切だったことですら

どれも全て私が触れたもののはずなのに

それらが元よりなかったことであるかのように

遠いところにいる。




私たちは最後にどれだけの記憶を

傍に置いておけるのだろう。





自らを守る本能のために

争いようもなく

大切だったことまでも日々すり減らす

哀しい生き物である。