第五章 パイロットとして小空にはばたく 10 | プライベートジェット機長が見た「超」大富豪の投資の世界

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チェックライドの前のレッスンでは担当教官による見極めがある。

「この訓練生はチェックライドを受けて合格するだけの実力があるかどうか」という視点で見るわけだ。

教官からお墨付きがもらえないと当然、再レッスンとなり、再度の見極めとなる。

チェックライドの前哨戦というわけだ。

 

 

 

そしていよいよ来た。

事業用操縦士のチェックライドの日。

 

ちなみにこのチェックライドが終わると日本へ一時的に帰国になる。これは事業用操縦士の免許にさらに追加で資格が必要なため、その資格の学科試験を受けに行かなくてはならないからだ。

日本には約3か月滞在することになる。

本場の日本食を食べることができるし、そしてムフッ、彼女にも会うことができるわけだ~(笑)。

 

うーん、いかんいかん、ムフムフの前にやり通さなくてはならないことがある。

そう、チェックライドだ。

 

 

さて、チェックライドは二つのパートに分けて行われる。

 

前半は午前中にエアポートワーク(飛行場周辺での離着陸)とエアワーク(各種マニューバー)、

後半は午後にクロスカントリーだ。

チェックライドの日は11月。結局カリフォルニアの天気はすっかり悪くなってきていた。

案の定、当日も曇り時々雨のような天気。

チェックライドが中止になるほどではないとしても、地雷が多いコンディションだ...............

 

しかし、ここは覚悟を決めて受けざるをえない。

 

 

チェックライドはまず審査教官にブリーフィングを行うことから始まる。

自己紹介から始まり、ライセンス、航空身体検査、ログブック、訓練の進捗状況の確認を行う。

そして航空法73条の規定に従って「機長の出発前確認六項目」の説明を行う。

これは

一  当該航空機及びこれに装備すべきものの整備状況
二  離陸重量、着陸重量、重心位置及び重量分布
三  航空情報(NOTAM)
四  当該航行に必要な気象情報
五  燃料及び滑油の搭載量及びその品質
六  積載物の安全性

についてひとつづつ説明を行うのだ。

 

この機長の出発前確認六項目というのはもちろん、エアラインでも毎フライトごとに行われており、基本中の基本といえる。

 

一通り確認の説明が終わると査察教官から本日行うチェックライドの注意事項について説明がある。

 

そしてブリーフィングルームを出て機体に向かうと、今度は同じ航空法にある

「機長は、前項第一号に掲げる事項を確認する場合において、航空日誌その他の整備に関する記録の点検、航空機の外部点検及び発動機の地上試運転その他航空機の作動点検を行わなければならない。」

の法律に基づいて機体の確認を行うのだ。

 

外回りの点検が終わってコックピットの左席につく。右席には査察教官が座る。

緊張しないわけはないのであるが、今までやってきた訓練通りに行うだけだ。

エンジンをかけ、無線でATCに連絡をとる。地上走行をして、滑走路のわきでエンジンのランナップ(試運転)を行う。

そして、許可を得た後に離陸。

 

離陸後はエアワークを行うことができるエリアに向かう。途中、多少の雲があるので目視で避けるように飛行する。有視界飛行なので雲に近づかなければパイロットの判断でどのように飛ぶこともできるのだ。

 

ストール、スローフライト、スティープターン、シミュレートエンジンフェイル、ターンアラウンドザポイント、シャンデル、レイジーエイトなどのエアワークを済ませ、飛行場に帰ってきてエアポートワークだ。

 

飛行場周辺ではタワーと無線で連絡しながら様々な形式のタッチアンドゴー(離着陸の繰り返し)を行う。

 

エアポートワークを終わらせ、ランプに帰ってきてエンジンを切ると前半の審査は終了となる。


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 チェックライド後半はクロスカントリーのチェックだ。

午前中と同様の機長の出発前確認六項目にクロスカントリーの飛行計画を加えた説明をブリーフィングで行う。

 

そしてエンジンを始動して離陸。

有視界飛行におけるクロスカントリーなので地上の地点目標を確認しながら、時間、風を読み取り方位を定めて行く。

天候が良くないとは言っても雲に入ってしまうと一発アウト、だ。そのため外部の視界も常に確認しなくてはならない。

この飛行機にはもちろんオートパイロットなど装備されているわけでもないので、高度、速度、エンジンの出力など常に目を配らせて操縦しなくてはならない。

片道1時間ほどのクロスカントリーとはいえ、一瞬たりとも気を抜けないわけだ。

 

無我夢中で1時間のクロスカントリーが終了して、目的地の飛行場への進入を行う。しかし着陸はせず、ゴーアラウンド(着陸のやり直し)を行って上昇、そして帰路につく。チェックはここで終了。

 

帰りはもちろん操縦をしていくのであるが、帰りの1時間は査察教官がこの訓練生の弱いところにアドバイスを行う形でレッスンのようになる。

1時間の帰り道、指摘の課目を練習しながら帰るわけだ。

 

到着後、ブリーフィングルームにて本日のチェックライドのデブリーフィング(終了後に行うブリーフィングのこと)を行う。

当然、ここでチェックライドの合否を伝えられるわけだ。

合否を伝えられた後は、本日までの課題、そしてこれからのことについて大先輩機長としていろいろなアドバイスをいただいた。

 

ブリーフィングルームを出てくると、先輩たちや後輩たちから祝福の握手を求められる。

これって、世界共通のパイロットの習慣なんだよねえ。

 

 

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早速宿舎に帰って荷物の整理。

 

明後日にはサンフランシスコから日本へ一時帰国となる。

久しぶりの日本だあ~~~。うれしいな~、キュン!

 

小空にはばたく基礎訓練の半分が終了、まだ残り半分がある。

とは言ってもパイロットになるために離陸できたし、少しだけだけど自信も出てきたような気がする。

 

日本で数か月過ごしたのち、再度このアメリカに来る。それも楽しみだ。

今度アメリカの地を踏む時は少し大人になった私がいるのだろうか?

 

つづく

 

 

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