ただいま本山萬福寺では、重要文化財 松隠堂特別公開 「歓天喜地 高須英輔展」 が行われています。
ご縁があって今回の展示の運営に携わらせていただきましたので、個人的な感想も含めてここで紹介させていただきたいと思います。
高須英輔(たかすひでほ)さんは1983年から建築空間デザイナーとして活躍されている方で、主に古財を用いた彫刻やオブジェを制作され、各分野で高い評価を受けています。
今回展示会場となった松隠堂は約350年前に建立されました。萬福寺の開山隠元禅師が住職を退かれた後、晩年をお過ごしになった建物として国の重要文化財に指定されています。
そんな歴史的空間と現代アーティストのコラボレーションとなった訳ですが、そこには大きなハードルがありました。
約1年半前になりますが今回の展示の下見に松隠堂を訪れた際、高須さんはこんなことをおっしゃっていました。
「本当にすばらしい空間です。こんな場所で自分の作品を展示できるなんて光栄です。
しかし、困った・・・松隠堂は空間として完成されています。
作品を置くことによってその空間の雰囲気をじゃましてしまう恐れがある。
松隠堂に相応しい作品、禅の空間をじゃましない作品でなければ・・・」
そういって、たいそう悩まれていました。
私はその時、ある和尚さんとの話を思い出しました。
「最近は『萌え寺』ってのがあって、そこには観音さんをイメージした萌えキャラのフィギュアがあるらしいよ(笑)
でも、これはある意味とても面白いと思うんだ。
一口に仏像って言っても日本、中国、東南アジアそれぞれで全然趣が違う。
時代や仏師によっても表情が違う。
仏像ってのは崇拝の対象だからさ、それは同時にあこがれの姿じゃない?
だったら現代には現代の仏像のあり方があっても面白いよね。」
「禅の空間に相応しい」というなら、いっそのこと仏様ではどうだろう。
そう感じて私は高須さんに
「それでは、どうか仏様を作ってください。」
と提案しましたところ
高須さんは「ふうん・・・」と一瞬少しうつむき加減に黙りましたが
おもむろに顔を上げ
「今ので何かつかめた感じがします」
とおっしゃったのでした。
そうしてついに4月30日、歓天喜地開催前日。
展示会場である松隠堂での作品陳列がすべて終わり
私は改めて作品をぐるりと拝見しました。
そしてふと中央の部屋の前で思わず足が止まったのです。
なんとそこには仏様がいらっしゃいました。
作品が3点。中央奥にに丸い大きな作品。手前左右に2点。
夕方の西日を背に受けていました。
それがあたかも後光輝くお釈迦様と文殊菩薩、普賢菩薩のように映り、
私は思わず手を合わせました。
高須さんはおっしゃいます。
「今回、作品を制作していく上で大変だったのは、作品が主張すると空間をじゃましてしまうということでした。
作業の過程で、空間をじゃまするような要素、形、色、思い、いろんなものを削ぎ落としていくんですね。
そうして、最終的に円が残りました。」
禅でも余分なものを捨てて捨てて捨てきったところに仏があるといいます。
同時に円という形は、仏や宇宙を表します。
高須さんがそれを意図して作ったかどうかはわかりませんが
それを感じることができたことに、私は手を合わせ感謝します。
芸術の専門的なことは私にはさっぱりわかりません。
けれども高須さんの作品には不思議な暖かみというか、落ち着きというか
なんかわからんけど、なんかいい
そんな空気があふれています。

