最初に長く勤めていた会社に日本酒女子(なんて呼び方はあるのか?)がいて、「何かおススメってある?」と酒席にて尋ねた時、「自分、ホウオウビデンがダントツです。」と聞いてから事あるごとに思い出しては飲んでみたいと思ってはいました。漢字で鳳凰美田と書くとのことで、収穫期を迎えて黄金に輝く稲田から飛び立つフェニックスを想像したり、鳳翼天翔なんて架空の必殺技やらを連想したり、募る想いはあってもこれがどこで買えるのかわからないまま時間だけが過ぎてゆきました。

 

初めて飲める機会を得たのは、確か東京駅近くの丸ビルは焼き鳥の今井屋本店だったはずです。お酒の一覧に憧れのきみがあったのです。それなりに日本酒も飲み知りえたつもりだったのが、これほどまで「一飲み惚れ」した銘柄は初めてだったかもしれません。そこではかの有名な十四代もあって飲み比べましたが、同じ流派っぽさはあっても名前の通り鳳凰美田の方により美しさが際立っていた、少なくとも私にとっては。かつて多岐川裕美さんが出演されていた某日本酒のCMでのキャッチコピーを借りるならば、これこそが正に美酒じゃないかなと。その時、「自分、ホウオウビデンがダントツです。」と断言した時のきらきらした彼女の、少しくすぐったげな表情も見えたような気がしました。

 

 

蔵元のある栃木県まで行けば買えるだろうと酒屋を周った時、確かにお膝元では売っていて、つぶやきシローさんに何となく似ているそこの店主と話をしているうちに「わざわざ遠くからうちに来なくても、小林酒造さんにどこへ卸しているか聞けるよ。」と親切に教えてくださって、今では地元からそう遠くない酒屋で買えるようになりました。しかも一升瓶で3,000円ちょいですからべらぼうに高い訳でないのも嬉しいです。

 

その酒屋で小林酒造さんの創業150周年を記念して作成したというテイスティングノートを置いてあったことがあって、改めてこの純米吟醸酒についての紹介があったので以下に。

鳳凰美田が食中酒として提案したいお酒です。フルーティーな吟醸香、口に含むと程よいコクがあり後味はスッキリとしています。バランスのとれたお酒なので、様々な料理との相性が良いお酒です。

原料米:麹米 兵庫県産 山田錦

     掛米 富山県産 五百万石

精米歩合:55%

アルコール度数:16度以上17度未満

 

確かに色んな料理に合うお酒であって、いわゆるかび臭さが全く感じられない、日本酒でありながら白ワインのごとき趣きを有している特徴が、このお酒の広い守備範囲の秘密じゃないかとはいつも飲んで思うことです。あえて言うならクリームシチューとかフレンチトーストには合わせようと思わないくらいかな。美男でもそうでなくてもぴったり寄り添ってくれる、そんな美酒・鳳凰美田なのであります。