(横浜市イギリス館。目の前にバラ園、その先に港の見える丘公園。オサレに元町ショッピングした先で登山すると最初に出会う洋館です。)
今日も昨日に引き続き、税務上の特典である損益通算を確認します。
今日の内容は「不動産所得に係る損益通算の特例」その2。
昨日は規定の成立背景を確認しましたが、
今日は具体的な数字の流れを確認します。
1.不動産所得に係る損益通算の特例(規定)
その後のバブル収束と共に、大半の税制上の抑え込み措置は姿を消しましたが、
なぜか本稿の不動産所得に係る損益通算の特例は残されました。
恐らく半分は「宣言規定」のようなもので、背丈を超える投資をすれば、
税金というオッカナイ天罰が下るようなイメージを残しているんだと思います。
では、本規定がどういうものなのか、以下に確認します。
まず、本規定は損益通算の一部又は全部を否認するものであり、
その否認の基準となっているのが「必要経費に算入した土地等の取得に係る負債の利子」に対応する部分です。
要するに、ローンを組んで物件を取得した際、
不動産所得が赤字になった。
当然ローンを組む場合にバブルの要因となるような投資をするのは、既存の地主ではない(元々土地を持っている人ならローンを組んでも建物だけだろうということ)から、
土地建物を丸々購入するだろう。その場合にこの規定を発動させようというものです。
要件を端的にまとめると、
① 不動産所得が赤字であること
② ローンのうち、土地対応分の利子を支払っていること、
この2つを満たすとスイッチがオンされるようになっています。
1.不動産所得に係る損益通算の特例(例示)
では、【例 示】によって、
どのような数字が組まれることとなるのか、確認してみましょう。
【例示1】
→不動産所得の損益計算書が示されており、諸経費等が総収入金額を超え、赤字の状態となっています。以下に考え方を順序に従って示します。
①元々損益通算ができた範囲
この特例が登場する前は、不動産所得の金額が200万円-(450万円+150万円)
=△400万円となり、この金額すべてが他の黒字の所得と損益通算できました。
②この規定の登場によって
この規定の登場によって、【例示1】示す赤字400万円のうち、土地負債利子150万円が損益通算の対象から除外され、200万円-450万円=△250万円しか損益通算できなくなりました。
③不動産所得における土地負債利子の範囲
図解の左側、不動産所得を計算する場合における土地負債利子は、一番下にあるものと仮定します。つまり、本ケースでは、土地負債利子が丸々赤字の中に収まるようにして、その全額150万円が損益通算から除外されるようにできています。
【例示2】
①元々損益通算ができた範囲
この特例が登場する前は、不動産所得の金額が600万円-(400万円+500万円)
=△300万円となり、この金額すべてが他の黒字の所得と損益通算できました。
②この規定の登場によって
この規定の登場によって、【例示2】示す赤字300万円のうち、土地負債利子に対応する範囲300万円(つまり全額)が損益通算の対象から除外され、300万円-300万円=0、結局全額損益通算から除外されました。
③不動産所得における土地負債利子の範囲
【例示1】と同様、図解の左側、不動産所得を計算する場合における土地負債利子は、一番下にあるものと仮定します。つまり、本ケースでは、土地負債利子が赤字すべてに対応するようにして、赤字全額300万円が損益通算から除外されるようにできています。
…この規定は税務上の「懲罰的課税」を目的とするものですから、
納税者に厳しく厳しく…となっているんですね。
規模が大きくなれば数字も当然大きくなりますので、
投資初期に生ずる「赤字の切捨て」は正直ちょっとしたダメージとなるでしょう。
シミュレーションを組む際には、そして再確認。投資初期や赤字が見込まれる場合には、
この規定によって税金が増えますから、ダメージの増加には充分注意しましょう。
来週はこのお話しの続き。
損益通算可能な赤字だが、その年に通算しきれず翌年以後へ行くものを確認します。
最後はいつも同じメッセージ。
「精神的自由」やら「経済的自由」なんて心地よい言葉に浮かれると、
デンジャラスな人生を送ることになるかも知れません。
焦りは禁物ね。
大丈夫。不動産は逃げませんから。
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いわずと知れたカーネギーの著。
様々シリーズ化されており、読みやすいので是非どうぞ。
100年までは経っていないけど、なぜアメリカという国が栄え、発展したのか、
その一因がこれら先駆者の著書から読み取れると思います(感情的な好悪は別だよ)。
また、基本的なラインは今も昔も大して変わらないことも確認できるでしょう。
不動産投資も、思考と経験が結びついたら強力この上ありません。
自身を後押ししてくれる一冊としてどうぞ。