既に新聞等で大きく報じられたためご存知かと思いますが、2011年7月15日に建物賃貸借における「更新料」条項を巡る初めての最高裁判決が下されました。
今回の判決では、
賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、賃料や契約更新期間等に照らし高額すぎるなどの事情がない限り、消費者契約法10条の「民法の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない
として、更新料条項は有効であるという結論を導き出しています。(判事1名の反対意見あり)
2011年3月24日に敷引を有効とする判決が出ておりましたので、今回の結果はある程度予想されていたことですが、不動産賃貸・不動産投資に与えるインパクトは小さくないと思います。
最高裁判決というのは、その後の下級審における裁判の規範になるものです。
一方で、判決はあくまでも個別事案に対する裁判所の判断であることも事実です。
今回の判決で更新料がいかなるものでも有効であると考えるのは早計であり、事案によっては無効とされる余地はあると考えられます。
実際今回の判決でも「賃料や契約更新期間等に照らし高額すぎるなどの事情」があれば無効となる可能性があることが示唆されていますので、賃貸借契約の際には留意する必要があります。
今回の判決そのものは常識的な結論となっており、妥当な判断だと考えます。
しかし、貸主側(業界)にも反省すべき点があると思います。
「契約書に書いてあるのに、後から無効だというのはおかしい」という論調が貸主サイドにありましたが、それは両当事者が本当の意味で対等な立場になって初めて言えることです。
現実問題としては、以前よりも差は小さくなったとはいえ、事業として不動産賃貸を行っている人と借り手の間には、依然として情報力・交渉力の格差があるのは事実です。
この格差を埋めるものが事業者側からの「説明」であり、貸主側が事業者として丁寧な説明を心がけていれば、このような紛争にはならなかったかもしれません。
また、更新のない定期建物賃貸借(定期借家)がもっと普及していれば、適正な賃料設定がなされるとともに、更新料という慣行もなくなっていたのではないかと思います。
知らないのか、面倒くさいのか、あるいは借り手がつきにくいと思っているのか、定期建物賃貸借で募集する貸主はまだまだ少ないです。
更新料という慣習も、借主保護に偏重した借地借家法が生み出した歪みの一つだと思います。
定期建物賃貸借が定着させることこそ、こうした歪みを正し、対等な賃貸借関係を作り上げる道ではないでしょうか。
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会場: オフィス東京(中央区京橋1-6-8)
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第1部 不動産投資におけるリスクマネジメントとは?
講師 中沢 誠 (行政書士・不動産法務サポートオフィス代表)
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