トラブル事例~区分登記された賃貸マンション(その2) | 不動産法務コンサルタントへの道

不動産法務コンサルタントへの道

信託受益権売買契約書等の作成から、金融商品取引法・コンプライアンス対応まで、不動産プレーヤーを全力でサポートします!

こんにちは。不動産法務コンサルタントの中沢です。

前回の続きです。


区分建物登記された賃貸マンションの全ての専有部分を落札したところ、管理人室だけが債務者名義となっていたという話です。

問題となっている管理人室は、抵当権設定当時には「規約共用部分」として登記されていました。

規約共用部分とは、区分所有権の対象となりうる建物の部分、すなわち専有部分及び通常の所有権の対象となりうる附属の建物を、管理規約によって共用部分として定めたものです。(区分所有法第4条第2項)

管理人室等を規約共用部分として定めると、共用廊下や階段と同様の扱いとなり、区分所有者全員による共有になります。

そして、規約共用部分である旨の登記をすると、所有権その他の権利に関する登記は一切なされないことになり、専有部分の所有権移転とともに規約共用部分に対する共有持分も当然に移転することになります。

ところが、競売が開始された時点では、すべての専有部分を債務者が所有していました。

したがって、管理規約の変更も債務者一人で行うことができたのです。

そこで、債務者はこの管理人室を共用部分とする定めを廃止し、その旨の登記を申請しました。

規約共用部分の定めが廃止されると、当該建物の部分は専有部分となります。

そして、その専有部分はその時点の区分所有者全員の共有となるわけですが、このケースでは債務者一人が区分所有者であったため、債務者が管理人室の所有者となったわけです。

専有部分に設定された抵当権の効力は共用部分には及びませんから、抵当権設定当時規約共用部分であった管理人室が専有部分になっても競売の対象とはならず、競落した会社が所有権を取得することはできなかったのです。

その後、競落した会社と債務者との話し合いにより、競落した専有部分を債務者の関係者へ売却するといった形で決着しましたが、競落した会社にとっては想定外の結果となってしまいました。