土曜日はレッスンだった。
ポジション移動に入って、生徒さん達が少々混乱気味で練習している。
楽譜をにらみつけていると指位置、幅がバラバラになる。
運指まで間違っている。
特に途中から入られたかたは混乱がひどかった。
そこで全員に楽譜を見ないよう言った。
そして二小節だけ暗譜してもらった。
次に一人ずつ弾いてもらう。
混乱がひどかった生徒さんもスムーズに弾けた!
楽譜を見ないことによって。運指や正しい音に集中できたからだ。
次の小節、次の小節と暗譜してもらった。
全部通しての暗譜は無理だが、今やるべきことは正しい移動を覚えることだから。
少しずつでかまわない。自分の耳で音を覚え、自分の目で指位置、幅、手の形を確認することが大事だ。
レッスンが終わって生徒さん達と昼食をいただいた。
そこでこんなことを言われた。
「二胡を弾くのはたいへんだけど、教えるのはもっとたいへんですよね。体は大丈夫ですか?」と。
グループレッスンの場合、一時間半のあいだ、私はこま鼠のように動きまわっている。
一人一人の音を聞いてまわり指導する。
当然かがみこむ姿勢になる。ちょうど田植えをしているようなかっこうだ。
レッスンが終わると汗だくだ。そして腰はバキバキだ。
そんな私の姿を見ていてくれたのだ。
二胡を弾くのに精一杯のはずなのに…。
嬉しかった。腰の痛みなんか消えてしまいそうになるほど。
午後の個人レッスン(生徒さんご自宅)では休憩タイム時に使ってくれと新しい椅子が用意されていた。
私が普通に床に座れないことがわかったのだろう。
気をつかわせてしまって申し訳ない。
健康だったら生徒さん達に心配なんてさせないのになぁ。
ほんとにごめんなさい。でも嬉しい、ありがとうございます。
「いつまでここに来てもらえますか?」「みなさんが続けるかぎり来ますよ。歩けなくなったら車椅子に乗ってでも来ます」
そんな約束をした、青い空が眩しいほど美しい土曜日の午後だった。