前回の話

 

 




障害者施設での仕事。

1泊の旅行という名の仕事。
行き先は北海道。

20名以上の
障害を持った利用者さんと
飛行機に乗る。



私は通路側。
奥に利用者さんたち。



いつも公共の作業などに
出かけている

軽い障害の利用者さんたちを
見守る・・・・

と、いうよりも
見守られている私。。。


いつも朝とお昼と帰りくらいしか
顔を合わせないのと、

今年はじめて一緒に旅行に出かけるから
色々と気を遣ってくれている
利用者さんたち。


彼らはグループホームの
世話人さん達から
事前に情報をたくさん仕入れていて

”飛行機ではジュースが飲める”
”飛行機ではジッとしていなくてはいけない”

確か他にも色々あったと思うけど、
それらの情報を
親切に子供に教えるように
私に教えてくれる。


彼らが飛行機で楽しみにしていたのは
やはり”ジュース”。


普段からジュースやコーヒーは
散歩のたびに買うから

きっと健常者よりも
たくさん飲んでるような気がするんだけど、


”飛行機で”っていうのが
また新しい体験で
ワクワクすることだったのだろう。

「なおさん、何のジュース?」聞かれ
「りんごジュース」と答えたら


そこからずっと
私の顔を見るたびに

「なおさん、りんごジュース」と
私がこの仕事を辞めるまで
言い続けていた1人の利用者さん。


りんごジュースひとつで
円滑なコミュニュケーションが
生涯続くのだ。

私も嬉しい。
その利用者さんも私の存在を
りんごジュース、飛行機と共に
生涯覚えてくれている。


なんとも不思議で面白い。


他にも飛行機の中では
あちらこちらで
小さなドラマが
繰り広げられていたらしい。。


一番前に座っていたのは
車椅子の初老の女性。

体も不自由で歩くことはできない。

話すこともできないけど
表情がとても愛くるしいから
みんなにとても好かれていた。


その方が、乗る前からすでに
“飛行機”が怖くて怖くて

乗ってからも
最初の離陸のふわっとした感覚で
もう震えが止まらなくなり、

涙を流しながらベテラン職員さんに
乗ってから降りるまで
ずっとしがみついていたと
後から聞いた。




それぞれが
それぞれの思いで、

仙台から北海道へ向かう飛行機の中。



この珍道中は
私の中で何が変化するのか・・・・


そんな期待も胸に秘めつつ
利用者さんと一緒に飛行機の下の雲を眺めた。



続く