『じつは怖い外食』は レポーター=著者が自ら飲食チェーン店を回って 食べた感想(うまさ 食材の分析 後味)をまとめている他に

 

 

かつてその会社で長年勤めて 内情を知り尽くした元スタッフのインタビューが細かく載せられており 

そちらの方がより説得力があり 今まで以上に飲食チェーン店やコンビニ食を敬遠する原動力になりました。

 

 

 

 

私は美容学校時代 今はもう姿を消した アイスクリーム専門店である『ハーゲンダッツ』のリアル店舗でバイトをしてまして

 

 

そこでの様子は『じつは怖い外食』で書かれているような 恐ろしい衛生状態の営業ではなく

逆に、軍隊並みに厳しく 完璧で突つきようのないものでした。

 

 

 

今思うと それは全国中全ての店舗が”直営店”だったからで フランチャイズのオーナーが過剰に利益を上げるために 必要なプロセスを省くことがなかったからだと言えます。

 

 

 

正に”異常”と言えるくらい厳しく レジでお金の処理をしたら必ずアルコール消毒をさせられ ”3秒ルール”も一切なし 

水を飲んだだけの水洗いで事足りる食器も高熱の食洗器で洗浄していたので

 

確かに無駄といえば無駄な部分もあり それが利益を大きく削っていたことも無きにしも非ずだけど

世の中の事を何も知らない若いスタッフが『大丈夫か?』などと余計な不安に駆られることはまずなかった。

 

 

 

当時の店長はバイト上がりの26歳だったと覚えており 

これまた異常な会社への忠誠心があり 仕事へのジョークは通じないといった硬さがあったものの

『ここで耐えれたらどこでもやっていける』と やけに厳しさに誇りを持ってる風だった。

 

 

 

 

確かに、グダグダのなあなあがデフォルトで芯まで慣れ切った状態から いきなりやって来なかったことを当たり前にやれと言われても 

 

人によっては適応できずに心が折れてしまうこともあるだろうから 自分は初めてのバイトがそこで良かったなと心底思ったことがあった。

 

(おじいさんの会社とか身内の草むしり、窓拭き、内職は昔からやっていたけど 外へ出たのは初めてだった。)

 

 

 

 

当時(20数年前)の時給は ¥750。

 

 

とにかくよく流行っていたので 忙しく全く割に合わなかったのだろうけど もともとバイト選びの基準が『面白そう』といったもので 

”時給が高く楽なバイト”という視点で見たことがなかったので さほど不満はなかった。

 

 

 

市の夏祭りの日なんて 土日だけで売り上げが¥100万くらいで 朝から閉店までひっきりなしにレジが途絶えることがなかった。

もちろん時給は変わらないのだけど あそこまで”ハイ”になってるような感覚はそうそう味わえないのでいい経験にはなったと思う。

 

 

 

ちなみに当時のシングルカップ(コーン)の価格は¥250。

 

中のカフェスペースでは買ったアイスの他にアイスクリームを使ったパフェも充実していて かなり贅沢な食材にもかかわらず¥450~600くらいだった。

 

 

現代ではもう当たり前になってしまった千円超えのカキ氷とは比べ物にならないくらいお得で 戻って来ない時代を懐かしく想う今日この頃。

 

 

 

 

ただ、自分も愚直で忠誠心が強かったので カフェスペースに入ってきたサラリーマン風のオジサン組にオーダーを取りに行った際『ホット2つ』と言われると無性に許せず

 

『(ここはアイスクリーム屋なんやから コーヒーだけ飲みたきゃ他所に行け!)』といつも憤ってましたね。無気力

 

 

 

 

ちなみにハーゲンダッツは15年ほど前に全国の店舗を一斉に閉店し 量販店での販売のみになった。

 

 

確かに人件費も相当かかるし 直営なので多店舗で欠勤が出ると 遠くまで電車を乗り継いでまでヘルプに行っていたので 交通費も相当余計な経費だっただろう。

 

 

ちなみにウチの店舗で欠勤や遅刻が出るということはまずなかったので 店長の厳しさが顕著に出ていたのだと思う。

 

 

 

 

面白いのが 

 

量販店でのミニカップ(蓋と封つき)は当時¥250で125㎖。(現在は¥350で110㎖)

フレーバーは バニラ  ストロベリー  クッキークリーム  抹茶の4種類しかなかった。

 

 

 

 

実店舗でもミニカップで買うことはできるのだけど 他に15種類くらいはあるので わざわざそこへ足を運ぶなら他の味を試したいと誰でも思うだろう。

 

 

 

ただ、店舗で『シングルカップ(ミニカップではない)』を注文すると86g~90g(60g+30g)で計量する。

 

(毎朝出勤すると このグラム数での計量テストを5回中3回合格しないと仕事に入れず どんなに忙しい時でも絶対のルールなので 動揺すると失敗しドツボに嵌まる。)

 

 

 

これは冷凍庫でのカチカチのものと違い 『食べやすい温度管理がされているから』という理由だったのだけど

同じお金を払うのに125gと90gの差はどう考えても自分は勿体ないと思っていた。

 

 

 

が、高齢のお客さんはせっかく来店しても ディスプレイの数多いフレーバーをろくに見ることなく 

必ず『バニラ』と 無難中の無難をオーダーするので

 

 

『あの~ それだったらこっちの(開封してない)ミニカップの方がお得なんですけど』と言いたかった。

 

 

それどころか『カップとコーンはどちらにしますか?』と聞くと やはり『カップでいい』と返ってくるので

 

『あんた、ここに何しに来たん?』と内心いつも呆れていた。

(コーンはハイコストのかかったものでメッチャ美味かった。)

 

 

 

 

同じアイスクリームチェーンの『サーティワン』はそれぞれが直営なのかフランチャイズなのか知らないけど

そこでバイトしていたお客さんは『常に食べ放題だった』という。

 

 

それに比べて自分の店舗は(他は知らない)スプーン一杯たりともツマミ食いをできる隙など無く スタッフであることの恩恵は一切受けなかった。

 

(仕入れに対する売り上げと消費量や廃棄量までキッチリ記録して比較していた)

 

 

 

店長だけでなく他のバイトも恐ろしく忠実で 裏でも”お客”を『お客様』というくらいだったので 自分も迂闊な発言はできるはずもなかった。

 

 

 

が、とある店長の不在の日に パフェが4つほどオーダーミスが発生し

通常なら発注ミスは例外なく問答無用で廃棄になるところ 理解あるマネージャーが冷蔵庫で保存しており 終了後にこっそり食べたのが唯一の思い出だった。

 

 

 

 

夏のもっとも大変な作業は 高温の食洗器で洗ったパフェのグラスを アイスクリームが溶けない温度まで冷やすこと

水を溜めたシンクで冷ましてから冷凍庫に入れるのだけど

 

狭い冷凍庫の僅かな隙間にグラスを並べるのはパズルゲームのようで 激烈に忙しい中、落として割ってはいけない緊張感は半端なかった。

 

 

少なくとも自分がオーナーだったら 水洗いや水と洗剤で済むものを そこまで非効率な洗い方をすることはまずないだろう。

 

 

 

 

 

そんな感じに 生ものを扱ったり油で揚げる作業は無いものの バックヤードも常にキレイで 今も会社に対する不信感は特にない。(価格が上がりすぎた以外は)

 

 

 

 

一般的なアイスクリームは空気の含有量は 総量の半分なのに対し

ハーゲンダッツのアイスは2割しかないので 見た目の小ささの割にズッシリと重い(なので早く溶ける)。

 

 

 

昨今の値上げやコスト増しの絶えない中 今後、このもっとも分かりづらい『空気の含有量』でコストカットするのだけは勘弁してほしい。