このブログを書き始めた頃に比べて 世の中すこぶる平和になって 久々に書いたここ3記事なんかは 全くもってお気楽なテーマでした。
とある日 どういうアルゴリズムのせいかYouTubeに上がってきた動画
派遣と労働に関する法改悪で 日本の貧富を拡大した張本人として 最凶のホストに取り囲まれ 逃げも隠れもできない番組で吊し上げられた竹中平蔵氏。
番組自体は3年ほど昔のものだけど ここ数週間のうちに誰かがアップすると 夥しい恨みつらみのコメントが数百件投稿された。
そこに連なる呪いの言葉は 地獄にこだまする怨念のようで
3年経っても いや、法改定からどれだけ時間が過ぎても成仏できない死霊がスクリーン越しに蠢いているように見える。
そういえば数年前にも この動画についてブログで書いたことがありました。
この時も私は特に竹中平蔵氏を庇うつもりもなかったけど
その後、何気ない日常を長く営んでいると もう少しフラットで別の角度から
コメント欄に呪いの言葉を吐く人たちに 一つ問い質したいことが出てきました。
彼らは肝心なことを見落としていないでしょうか?
企業が派遣や非正規雇用を多用することができる(しやすくなった)ようになったといっても
実際に労働力として非正規雇用者を使うかどうかは 企業自体の選択に委ねられているということを。
そう、企業は派遣労働者や非正規労働者を『使ってもいいですよ』と言われただけで 『使いなさい』と強要されたわけではないんですよ。
(元請けからコストカット(人件費削減)を促されるのは ある種の(間接的な)強要と言えなくもないが)
派遣法改定によって何が変わったのか 具体的には知らなかったのですが
元々、雇用は企業が直接雇った労働者しか使ってはいけないという決まりがあって ”他社の社員を雇ったり指示を出してはいけない”ものだったのですね。
それが派遣法改定後は ”派遣業者に雇われた労働者を 別の企業が使ってよい”ということになりました。
ただし、既存の正社員を非正規雇用に会社都合で変えてしまうのは違法であることに変わらないので
不景気でリストラは行われたかもしれませんが 派遣法によって既存の正社員が非正規雇用に移された訳ではなかったのです。
もし、正社員5名のみの小さな町工場で 景気の影響を受けなかったとしたら(大きくも小さくもならなければ) この会社は派遣労働者を使うことはありませんが
人員の変動が大きい大企業が リストラや早期退職を促して社員を削減し 再度人手が欲しくなった時に使ったのが派遣労働者(非正規労働者)ということになるのですね。
大雑把に書くとこんな感じですが 基本的に誰の肩も持たないスタンスで書かせていただくと
多くの企業にとって経験も学習もなかったバブル期の勢い(人員)のまま突っ切ってしまえば 倒産を回避することは難しく
いずれ労働者は会社の崩壊とともに 市場に投げ出されてしまってたのでしょう。
私は13年独りでお店を回しているだけで 人を雇ったことなどありませんから偉そうなことは言えませんが
思えば、企業が正社員のみを雇い 変動する景気の中で丁度いいバランスを保ち続けるのは
高い偶然性がなければ 企業側が労働者のために”損を受け入れている場合もある”のです。
どういうことかというと もし会社の製品の需要が著しく増して 人手を増やした後で需要が減れば
当然、人件費が会社を圧迫していくことになります。
つまり、もし増えた需要に対し 後のこと(人件費削減)を考えて人手を増やすことを躊躇すれば
会社は増えた発注に対し 『人手が足らないので無理です!!』と断わり続けるしかないのです。
せっかく取れた利益をみすみす逃すことになるのです。
社員都合で退職したりで 自然と会社の人員が流動することはあるでしょうけど 会社側が労働力に対し何の調整も行わないのは そもそもあり得ないことで
どんな時代でも内部のストレスなく 絶妙なバランスを保ち続け 昔ながらの顔ぶれだけで回し続けれた会社が この日本に一体どれだけあるでしょうか?
ここで補足しておかないといけないのは 派遣よりも昔からある”契約社員 パート アルバイト”の存在です。
残業代(変動費)を除けば 景気が悪くても労働時間と給料の固定された正社員のみでは 会社はリスクを背負いますが
派遣でなくとも契約社員、パート、アルバイトを使って 今まで調整は行えてきた訳です。
では何故 派遣なのか?
私は企業全体の方針がどうのではなく 労働力を調整する人事部の心理の方に問題があるように思うのですね。
契約社員もパートもアルバイトも いずれも企業が直接雇用し直接指示を出す という括りだけは正社員と何ら変わらないのです。
つまり、人手が不要になった時に(シフト、労働時間を減らすだけでなく)
解雇も直接会社がしないといけないのです。
早い話、大企業も零細企業も 人事は恨みを買いやすい立場で 労働者に直接解雇を言い渡したくないのです。
派遣労働者を使う方が派遣業者に払う手数が含まれているのでコストはかかりますが 労働力を募集するコストが省かれ 欲しい時に確実に動員できるというメリットもあります。
どちらがコストがかかるのかは私にはわかりませんが
それでも、人事が雇用者に『辞めて欲しい』と通告するストレスを免除する意味合いの方が大きいように思います。
数年前に”退職代行”という 絶妙に現代人のニーズに応えた感のある業種が現れた時に
『自分の働いていた会社に辞めたいの一言が言えないなんてふざけた奴らだ!』 『業務の引継ぎとか 自分の尻くらい自分で拭けよ!』 と感じたものですが
雇用者と労働者の間に 派遣業者が挟まれている構図は何だか酷く似かよっているように見えるのですね。
その時だけでもお世話になった労働者に 辞めてもらう理由を説明し(契約上は説明済みのはず) きっちりとお礼を述べるのは当たり前のことだと思うのだけど。
パート、アルバイトではなく 他でもない派遣法が改定されたことは大多数である労働者にとって都合の悪いことでしたが
調達のしやすさ 解雇の通告を免除されるメリットから 企業側にニーズがあったことは確かです。
ここで冒頭の話に戻りますが
竹中平蔵氏に『戦後最大の犯罪者』などと恨みの言葉を 動画のコメント上で吐き出した人たちに聞きたいのですが
もしあなたが労働者でなく経営者の側であれば 雇用は正社員か従来の契約社員、パート、アルバイトのみで
派遣労働者を使わないと言い切れますか?
景気が良く大量発注を受けて たくさんの利益が見込めそうなときに 人手の募集をかけても応募がない時に 派遣業者に頼らないと言い切れますか?
企業の人事部にいたとして 解雇しないといけない労働者に 解雇の通告をする重さから逃げずに背負えますか? と。
派遣法改正によって企業は 派遣業者を使うことができるようにはなったけど 別に使わなきゃいけない決まりはないのです。
改定後に労働者をどう扱ってきたかは 法そのものではなく企業の方針だけの問題なのです。
権利を得ることと行使することは別物なのではないでしょうか?
”派遣を使った方が経営に有利でスムーズになる” と判断した多くの企業が使い出し 実際に自社が出し抜かれたとして
それを穴埋めするのに派遣の力が必要だったとして
それでも自分たちが忌み嫌う派遣という手段に手を付けずにいられるのか?
加えて、彼らは今現在 PayPayをはじめとする”電子マネー”を使ってはいないでしょうか?
量販店よりも少しでも安く買いたいと Amazonなどのネット通販を利用してはいないでしょうか?
私の店(美容室)はクレジットカードも電子マネーも対応しておりませんが 対応している知り合いの業種などは
『周りがやってるから仕方なく対応しているけど やっぱり使って欲しくはない』 と本音を漏らしています。
利用者(客側)の方は『ポイントが貯まるのだから やらなきゃ損』と 自分の得になる使えるものは何でも使いたいと思うのは 当然の心理だとは思います。
店側からすれば『自分ら(電子マネー業者)は何の価値も生み出していないのに ウチら(店側)とお客の間に入り込んで 利益をくすねていく』と怒るところですが
利用者は『権利を使って何が悪い!?』としか思ってないんじゃないでしょうか?
今、PayPayを使ってる人で 『そっか、今まで意識してなかったけど 店側は使われると手数料分利益が減るから困るんだ。 だったら使うの辞めよう』と言える人はいますか?
私はAmazonでモノを買いますが Amazonが大きくなったことであらゆる小売業からデパート、大型商業施設までが利益を奪われることになりました。
けど、その昔は地元の商店街の近くに大型スーパーができて 商店街の人たちは煮え湯を飲まされる思いだったでしょうけど
しばらくするとその大型スーパーでさえネット通販に苦戦を強いられるようになります。
派遣法改定と違って 規模の大きな民間業者が現れたというだけで 一利用者は自分に得のあるものなら何でも使ってやろうという流れは変わらないのではないでしょうか?
その時に『自分は地元の商店街を支えるためにスーパーは使わない』と決め込んで商店街を利用し続けた人はどれだけいたでしょうか。
私は絶対に死んでもやりませんが たとえば家電屋で店員さんに商品の説明を聞いてからネットで安く買うとか
洋服を試着してサイズを確認してネットで買うとか
法に触れる行為ではありませんが やる人にとってはその方が”得”と思えるからやるのでしょう。
アメリカ カリフォルニア州ではバイデン政権終盤に ”10万円いないの万引きは罪に問わない”という 耳を疑うようなとんでもない法案が通されましたが
ジョークで終わらずに 本当に白昼堂々スーパーからありったけの商品を店から持ち出す市民が大勢いたというのです。
確かに、法が変われば 今まで犯罪扱いだったものがそうではなくなることもありますが 『どう考えてもやらんだろ⁉』というレベルの行為が勃発した時に
悪いのは 法律を変えた側なのか? 法の範囲で”迷惑な行為”を好き放題行った側なのか?
何のためにわざわざ竹中平蔵氏が動画に姿を現したのかは不明だが ひろゆきの得意なアンフェアな論法で 本来の意図は伝わらず(私も分からない)
視聴者も見事に術中に嵌り 頭に血が昇ってマトモに人の言い分を聞こうなどという姿勢は一切見られない。
『こんな言い合いして 一体何になるんですか?』と苦笑いする竹中氏は 冷静に見れば少なくともこの動画内で おかしなことは何一つ言っていないと思うし
話しの論点が”派遣法改定によって自分の会社に利益をもたらした”とか ”8千万円の資産を持ったら金持ちかそうでないか?” などになっており
それを低賃金労働者の前でわざわざ言わせるレベルの低さは見るに堪えない。
仮に竹中氏が 『じゃあ、あなたたちは店側が使われると困るから PayPayは使わないって言えるんですか?』と問えば
十中八九、視聴者は『話を摺り替えてる』と言うのだろうけど 本質はそこなのだ。
立場が変わっただけで やってることはみんな同じで 誰も変わらないのだ。
『みんなやってるけど そこで困る人がいるなら自分はやらない』と言える人以外は 自分の都合が悪くなったことで他人を責めることなどそうそうできないのだ。
多くの人は私のことを 『一体どっちの味方なんだ!』 とか 『権力側の人間だ!』なんて思うかもしれませんけど
私は電子マネーも対応していないしがない個人経営の美容師で 世間がまだ眠ってた2021年頃 後ろ指を差されながら第一回、世界同日デモにも足を運んだことのある人間ですよ。
少なくとも、誰の味方でもありませんが 動画で恨みのコメントを吐いている人たちには一つだけ言いたい。
『もういい加減 こんな不毛な過去の動画を見ては 済んだ昔のことに怒りを覚えるのはやめたらどうだ』と。
こんな権力者の一人葬り去って憂さ晴らししたところで あなたたちの人生なんて1ミリも良い方へは進まないですよ。
そして、あらためて聞くけど 竹中平蔵氏が行ったと”されている”派遣法改定は 戦後最大の犯罪者と呼ばれるほど悪いことなのでしょうか?
もし『その通りだ!』と答えるなら 派遣労働者を使うことが犯罪的行為であるなら もし自分が経営者側に立ったときに
絶対に派遣労働者を使わないと言い切れるのですね?
それに、コメントで罵声を飛ばしている人の多くは おそらく派遣業で不遇を喫したことがあるのだと思うけど
派遣業のシステムが悪だと言いながらも その中に取り込まれていったのは 他でもない自分自身じゃないのか?
露骨に首を切られたなら怨む気持ちも分かるけど 『誰が派遣なんてやるか!!』と拒否し 正社員登用されるレベルまでスキルアップすることもできたはずなのに
それでも派遣業者のもとにスーツを決め込んで『よろしくお願いします。』と頭を下げたのは 決して気の迷いではないだろう?
私は、嫌いだと思った奴は絶対に使ってやらない。
私は個人経営なので雇う側でも雇われる側でもないけど みんなが当たり前に使っている電子マネーもホットペッパーも
『誰がお前らなんか使ってやるか! このハイエナめ!!』と営業電話を一蹴した。(こんな口調では全くない)
だからきっと立場が変わっても派遣登録はやらないだろう。
世の中は椅子取りゲームのように 自然と誰かがこぼれ落ちるように設計されている。
総正社員で生涯雇用を掲げた”イレギュラーな時代”を 社会のあるべき姿と幻想を抱くのは 今後、至る所で現実とのギャップに悶えることになる。
こういう社会で不平不満をタレずにいたければ 自分ができることをやり切るしかない。
それが出来ない人は 派遣だとか正規非正規とかも関係なく ちょっとした制度の変革によって 思わぬ方へ転がることになる。
まあ、そんなことを私が言ってもしゃーないし 陰鬱な気分になってしまうだろうから最後にこう締め括りたい。
それでも日本に生まれただけで 宝くじの特賞以上の大当たりということを 海外を見て感謝してみてはどうでしょうか?


