前回、”モノの上達”に触れたので ついでに世間一般で勘違いされてるであろう問題について書きたいと思います。

 

 

 

 

 

美容室や美容師を選ぶときに どういった基準で選ぶか?

 

 

 

 

 

多くの人は、当たり前ですが”オシャレな人”を選ぶんじゃないでしょうか?

 

 

 

 

それは決して間違いではありませんし、お客自身の内面性、趣向、髪の悩みにもよりますが

 

 

”オシャレさ”だけで選んでいいものでもなく 一概にいい結果になるとは言えません。

 

(もう既に、お気に入りの担当を持っている人や その美容師のお洒落(着こなし)が自分の好みかどうか?という話しは今回は除く)

 

 

 

 

 

なぜなのか?

 

 

 

 

それは、”見た目がオシャレな人”は 服 という既製品を組み合わせる行為が優れているのですが

 

 

 

 

髪(美容)は 『素材からの造形』が主な仕事だからです。

 

 

 

 

 

美容師にとって”スタイリスト”とは 髪を切れるようになったという称号になるのですが 

 

 

広義での”スタイリスト”は 雑誌でモデルに服を合わせたり シチュエーションにおけるテイストを 服によって表現する仕事になります。

 

 

 

 

 

もう少し掘り下げると 美容師の課外活動”フォトコンテスト”の頂点である 『JHA』を画像検索すると

 

 

 

 

こういった”ヘアアート”が出てきます。

 

 

 

 

これらは、一瞬、一枚のベストを撮るのに膨大な仕込みをして挑んだもので 

 

モデル個人の髪質という素材を活かす ということは絶対になく ”目的の絵” が出来るまで徹底的に作り込みます。

 

 

 

そして実は 写真に写らない裏側は”手付かず” であることがほとんどです。

 

 

 

 

 

逆に、”ショートヘア”と画像検索すると出てくるのは

 

 

 

 

似たような形のものばかりで 美容師のサロンワークにおける造形の幅は ある程度の”相場”があり

 

 

 

実は、驚くほど自由度は少ないのです。

 

 

 

 

 

一般のお客さんにとって重宝される美容師の要素の大きくは

 

 

”現代の美容の相場に則った お客さんの希望” と 

”お客さんの髪という素材” をつなぐ作業です。

 

 

 

 

 

ちょっと分かりにくい表現だったと思いますが ネイリストの仕事”ネイルアート”はどうかというと?

 

 

 

 

”爪” という比較的フラットな素材に対する表現で 作業自体の細かさや やり直しが効かないという緊張感は凄まじいと思いますが

 

 

髪という素材に比べると 表現の自由度は高く 

 

”ある程度 どうにでもなる” 素材を扱います。

 

 

 

 

 

美容師もネイリストも 入門のキッカケはお洒落が好きであることがほとんどで 服や髪に何の興味もない人が目指そうとすることはほぼほぼ無いかとは思いますが

 

 

 

これが美術の世界になると やや事情が変わります。

 

 

 

 

 

私の通ってた高校は 私服と制服が毎日自由に選べるのですが 

 

美術一筋だった同じクラスの男子は 3年間ずっと制服&坊主頭で お洒落とは一切縁がありませんでしたが 

 

 

美しいものを描き出す実力は相当なものでした。

 

 

 

 

 

ピカソはビジネスマンとしても知られ ダリ共に洋服はお洒落だったと聞きますが

 

 

目を奪われるほど美しい 独特の世界観を描くクリムト

 

 

 

世捨て人のような風貌ですし

(服、髪型共に紙一重で これが彼のこだわりと言えなくもない)

 

 

 

”画狂” と呼ばれた葛飾北斎は もはや絵以外のことに一切の興味は無かったようです。

 

 

 

 

 

こうやって見比べると、スタイリストという既製品の洋服(和服や衣装全般)を組み合わせるという仕事は 

 

 

元々オシャレに興味のある人にアドバンテージ(優位性)がありそうですが

 

 

 

”造形”という分野になってくると あまりその人がお洒落であることは関係がなくなってくることが分かります。

 

 

 

 

 

失礼に聞こえるかもしれませんが 世間一般で好まれるファッションセンスとは 対角線上に位置づけられる

 

 

”オタクファッション系”の人たちも 

 

 

 

 

この手の”黄金バランス”を熟知し 自分で描ける人も少なくありませんし

 

 

逆に ”オシャレさん”と扱われる人も 絵を描かせたら全くダメ ということも多々あります。

 

 

 

 

 

美容の話に戻ると 髪型というのは自由なようでいて 実際にカタログを見て テイストや利便性まで加味すると

 

選択できるスタイルは ほんのひとつまみまで絞られますし

 

 

むしろ、『これがやりたい』という思いが強くない人なら

”消去法”で選んだ方が確実なのです。

 

 

 

 

 

そして、その先に求められる要素は 

 

 

 

 

造形的バランス感覚

 

 

コピー(模写)能力

 

 

 

で、この2つがないと話にならないのですが 更に大事な能力が 

 

 

 

ネイリストと違って 『髪という、どうにもならない素材を  目的の形に近づける”発想”』 です。

 

 

 

これについては、もはやオシャレ度とは全く別の次元 というかベクトルの能力になります。

 

 

 

 

 

そして、ヘアアートと違い 一般美容師のサロンワークでは 美容師個人の創作要素はなく

 

 

仕上がりの形は ”あるものの中から選んでいる” というのが実際のところ

 

 

世に出回っている既存の形(ヘアスタイル)の中から いかに、今のその人にとって適切なスタイルを選び

 

 

長さや梳き加減を調節し ”スタイルの持ち” を良くできるか?ということが 美容師の巧さ ではないかと思います。

 

 

 

 

 

もちろん、オシャレも好きで 造形的バランス感覚も良く

 

素材に対応する発想力も優れ 薬剤知識も豊富な美容師はいますが

 

 

単に”見た目がお洒落”というだけでは 自分の髪を良くしてくれる保証はありません。

 

 

 

 

 

それに、自分へのお洒落の執着と 

 

 

人へ美を提供する利他の気持ちは 

 

 

まるで違うものです。

 

 

 

 

 

美容の世界は語り出すと切りがなく 今回のは美容師を計る基準のほんの極々一部でしかありません。

 

 

 

 

 

結論は

 

 

 

 

『やってもらわないと分からない』 です(笑)