みんなが同じ方向を向いているときは、たいてい間違っている。
——ベルナルド・ベルトルッチ(1941-2018)
イラン戦争の勝敗ははっきりついたと考えていいのでしょうね。もちろん、イランが勝利し、アメリカは敗戦となりました。
今月6日、イランのアラグチ外相は中国を訪れ、中国の王毅外相と会談したそうです。(2026.5.6Reuters) おそらくこれは戦後処理について話し合ったのでしょう。どのような条件で戦争を終わらせるのかということと、さらには今月14~15日で行われる、習近平・トランプ会談に対応するためでもあったでしょう。
しかし、本当にトランプは習近平と会談するのでしょうか。「どのツラ下げて」というか、「小っ恥ずかしくもなく」というか・・。案外、高市早苗お得意のドタキャンをトランプがするかもしれませんね。私ならとてもじゃありませんが行く気になりません。笑われ、馬鹿にされて帰ってくることになるからです。もちろん習近平が直接トランプを嘲笑うわけではありませんが、両者の間に明らかな優劣が生じるのは避けられないことです。
しかし、この先トランプはどうするつもりなのでしょうか。私は何らかの形でトランプが退任する可能性もあると思っています。健康上の問題を理由にするかもしれませんね。でもそれもなかなか難しいと思うのは、それをすると後任の大統領はJ・D・バンス副大統領になってしまうからです。
私から見るバンス副大統領はまだ若い(41歳)こともあって、いかにも子供子供しています。実際に大統領になってみないと彼がどのような人物であるか分かりませんが、今のところはトランプ大統領にとっての良い子でしかありません。大統領はトランプのような"悪"ではいけませんが、良い子だから適任ということでもありません。
つまり、バンス程度の器では、周囲に波いる大物たちに太刀打ちできない、潰されてしまうということですね。強固な思想・信条、信念、目標、豊富な経験といったものがあるようには見えません。
それにしても、アメリカは間違いましたね。完全に道を誤りました。原因は何でしょうか。まずは、きちんとした情報を得られていなかったことが指摘できます。負けるのを承知で戦争を始めるはずがありませんから、正確な情報をつかんでいなかったのでしょう。
これは「敵を知り、己を知らずんば百戦危うからず」の格言のとおりです。そんな基本的なことすらできなくなっているのが現在のアメリカになります。ウクライナ戦争に関しても同じでした。ウクライナ戦争はアメリカがウクライナに代理で行わせた戦争ですが、その見通しはあまりにも甘過ぎました。ウクライナがロシアに勝てるわけがないのですが、今のアメリカはそんな簡単なことも分からないのですね。
しかもイラン戦争に関しては、どこから見ても言い訳できないくらいに正義がありません。世界史上でも珍しいのではないでしょうか。ウクライナ戦争は最初にロシアに攻め込ませるだけの悪知恵というのか、用意周到なところを見せましたが、イラン戦争にはそれすらありません。
トランプ大統領は真珠湾攻撃のことを話題にしましたが、イラン戦争とは全然違います。別物です。日本が1941年に行った真珠湾攻撃は、窮鼠猫を噛むという切羽詰まった一面を持っていましたが、今回のイラン戦争でアメリカは、何一つ自国の防衛を心配する必要がありませんでした。
いきなり一方的にミサイルをぶっ放して、イランの最高指導者をはじめとする政府要人を殺害しました。最高指導者であるアリ・ハメネイ師をはじめとして、約40人が暗殺されたそうです。それに加えて小学校にもミサイルを打ち込み、女子小学生を170人前後虐殺したといわれています。
こんなことをしてしまうと言い訳が全くできません。世界中からの非難がアメリカに集中しています。驚くのは欧州の反応です。欧州はNATOに加入していて、アメリカの同盟国になりますが、フランスも、スペインも、イタリアも、ドイツも、アメリカを非難しています。
その点情けないのが日本政府ですね。まあ、いつものことといえばいつものことなのですが、これだけはっきりと善悪が別れることに対しても、アメリカを非難しようとしません。戦後80年以上を経過しましたが、自立への道を歩み始めるどころか、ますますアメリカの属国として、発言権を低下させようとしています。もはや"日本男児"などは消滅したのでしょう。
現在の日本政府、政治家、財界などは、ほとんどが時代劇に出てくる「悪代官と越後屋」になってしまいました。それで一番かわいそうなのは、日本の子供たちでしょう。正義を主張できない大人に育てられた子供たちは、夢や希望を持つことが難しくなります。
「日本列島を、強く豊かに」でしたっけ? 「挑戦しない国に未来はない」「守るだけの政治に希望は生まれない」でしたっけ? ヘソで茶が沸いてしまいます。正しいことを正しいと言えない国、悪いことを悪いと言えない国が、よくもまあ「挑戦しない国に未来はない」「守るだけの政治に希望は生まれない」などと言えたものです。腐っていますね。日本人の意識の低さ、民度の低さ、自覚の乏しさ、軽薄さ、欲深さなどがよく表れています。
さて、イラン戦争は今後どのようになっていくのでしょうか。一番分かりやすい道筋として、アメリカが撤退するというものがあります。アメリカがとりあえず中東から兵を引き上げるのです。誰にでも理解が容易なスッキリした解決策ですが、現実問題としては難しいでしょう。なぜなら、アメリカの権威が地に落ちるからです。
ご存知の方も多いと思いますが、アメリカが世界の覇権を握ってきたのは軍事力が強いためではありません。経済力が強かったためでもありません。軍事力も経済力も確かに世界一だったのですが、それ以上に強力だったのがプロパガンダの能力です。群を抜いて圧倒的に世界一でした。
つまり、アメリカに従っていた方が身のためだ、アメリカに従っている方が経済的に豊かになれる、アメリカに従っていると自由を謳歌できる、その反対に、アメリカに逆らうと痛い目を見る、アメリカと疎遠になると貧しくなる、アメリカに逆らうと自由社会が崩壊するなどと思い込ませるのです。
私はもちろん戦後しか知りませんが、戦後のアメリカのテレビドラマ、映画、音楽など全てがそのようなプロパガンダに捧げられました。それらはアメリカの実態を表しているものではありませんでした。アメリカの宣伝をしていたのです。
最近、アメリカの映画がヒットしなくなったのをご存知でしょうか。アメリカ発の面白い映画が姿を消したように思います。これの意味することは深刻です。アメリカはもはやフィクションであっても夢を描けなくなってしまったのでしょう。元々が文化レベルの浅い国ですから、国が衰退してくるとフィクションであっても痩せ衰えてくるのでしょう。
できるだけ権威を失墜させたくないアメリカ、プロパガンダが生命線のアメリカにとって、単純な撤退はできるだけ選択したくありません。とはいえ、ベトナムやアフガニスタンではそれをやりましたから、可能性がゼロというわけでもありません。
次に考えられるのは現状維持でしょうか。イラン戦争の実質的な決着はすでについているのですが、それを認めずに、トランプは例の調子で嘘を吐き続けるというものです。とりあえずはそうやってごまかし続けることで、メンツを保つというのか、表面上は強いふりを続けることができます。また、日本のような腰巾着の離反を食い止めるための役にも立つでしょう。
他には何か手段があるでしょうか。どうでしょうかねえ。現実的に選択可能なものはちょっと思い当たりません。ということは、今回のトランプの仕掛けたイラン戦争はアメリカを衰退させただけで、他には何の意味もなかったことになります。BRICSを元気付けただけの戦争ということになるでしょう。
当然、トランプはアメリカ国内でレームダック化するでしょう。今年の中間選挙での敗北も間違いのないところかと思います。
そうれに対応して日本がどうなるかは見ものではないかと思います。高市早苗はトランプ対策として総理大臣になったはずです。ところが、トランプ対策がさほど必要とされないくらいにトランプが弱体化すると、高市早苗も必要とされなくなります。もともとトランプ対策以外には必要のない総理大臣ですから、そうなるとお払い箱でしょうか。
高市早苗の次には中露・中東に顔の利く総理大臣がほしいところです。アメリカの腰巾着をすることによって関係が悪化した中露との関係を改善する必要があるからです。そのような人がいるのでしょうか。私は知りませんが。
自民党はもちろんですが、野党も立て直しを図る必要がありますね。日本の政治はすっかり大政翼賛会化してしまいました。つまり自民党があって、その他の野党はいずれも自民党の亜型(サブタイプ)になっています。独立して活躍している野党は共産党くらいのものではないでしょうか。
野党を立て直して日本の民主主義を正常化させるには、自民党を立て直すよりも難しいかもしれません。すっかりプライドというか矜持を失っているように見えるからです。共産党以外の野党は自民党が誘いをかけてくれるならば、喜んで自民党と一体化する野党ばかりではないでしょうか。
おまけに、日本人というのは「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とばかりに、間違っていようが危険であろうが、みんなで一緒に行動したがる民族です。太平洋戦争はそのような日本民族らしい間違いを犯した戦争でした。
最近でも、新型コロナ騒動や今年の総選挙での自民党の圧勝など、同じことを繰り返しています。全国民が一丸となって誤った方向に突き進むことの危険性を日本人は感じ取ることができないようです。日本を救うためにも、日本人を正気にさせるいい方法が何かないものでしょうか。
