5月24日の東京新聞で、自民党の茂木敏充幹事長が、インターネット番組において「国民が求めているのはパンじゃない、サーカスだ」と発言した旨が報道された。同紙によると、19日に公開されたユーチューブチャンネル「ReHacQ―リハック―」のインタビュー番組での発言であり、以下のように話したという。

 「今国民の皆さんが求めているのは、多分ローマ時代のパンとサーカスで言ったら、パンじゃない、サーカスなんだと思うんですよ」
 「例えば、給付金の支給も悪いことではないですけど、それよりも景色が変わった、何かやっぱり新しい日本が見える、自分たちの未来が見えると。ある意味、コロッセオ(闘技場)で展開したのとは違った決闘ですけど、サーカスなんです、やっぱり」

 さてこれはどのような意味の発言なのだろうか。そのことを理解しようとすると、まずローマ時代の「パンとサーカス」を知る必要がある。東京新聞の記事では以下のように説明されている。

 「「ギリシア・ローマ名言集」(岩波文庫)によると、「パンとサーカス」という言葉は、古代ローマの詩人ユウェナリスの「(民衆が)熱心に求めるのは、今や二つだけ パンとサーカス」という風刺詩から来ている。」

 「パンは、食料として無料配布された小麦で、サーカスはコロッセオで行われる剣闘士と猛獣の決闘などの見せ物を指す。ユウェナリスはそれに熱狂するローマ民衆の堕落をやゆした。これが転じて、権力者が民衆に食べ物や娯楽を与え、政治への批判精神を忘れさせる愚民政策を象徴するようになった。」

 これを読んだだけでも、茂木幹事長がおかしなことを言っているのではないかと気がつく。パンもサーカスも、ローマ市民の不満を抑えるための道具として使われたものであって、どちらが効果的か、どちらが適切かなどという二者択一的なものではなく、どちらでも与えれば与えるほど目的にかなう。

 また、通常の社会において、食料も娯楽も満ち足りていることはあり得ないことで、私などは自分が平均的な年金生活者だろうと思いつつも、最近は物価が上がって好物を食べる機会がずいぶん減ったと感じている。SNSなどでは日本の小中学校の給食の貧相さが話題になったりもする。

 もう一つ見過ごせないことは、パンもサーカスも " 愚民政策 " であることだ。愚民政策とは、「為政者がその権力を保つため、人民を政治的に無知な状態にしておこうとする政策。」(デジタル大辞泉)のことをいう。茂木幹事長もずいぶん国民を舐め腐ったことを言うものだ。日本国民をあからさまに愚民呼ばわりしている。

 そうそう、なにもローマ時代にまで飛ばなくても、戦後GHQの占領政策の中にも似たようなものがある。それは「3S政策」というもので、3Sとはscreen、sport、sexのことだったという。 screenは映画やエンターテインメントの興隆、sportは国民的娯楽としてのプロ野球、あるいは大相撲、sexは性風俗の開放になる。(参考:ウィキペディア(Wikipedia)「3S政策」)

 GHQの立場としては戦争に勝ったとはいえ、敵国民を統治しなければならなかったから、このような " だまし " を取り入れるのも理解できないことではない。脅してでも、すかしてでも、日本人を大人しくさせておくのはGHQの大切な仕事であり、不満が高じて暴動でも起き始めると戦争に勝った意味がなくなってしまう。是が非でも日本人を静かにさせておく必要があった。

 GHQが愚民政策を行ったのはそのような合理的な理由があったはずだけれども、では、現在の自民党(与党)幹事長が、なぜ愚民政策の話をあえて持ち出すのだろうか。上記のネット番組で、茂木幹事長は司会者から「パンが食べられない人もいる。切り取られて炎上しますよ」と注意されているが、それでも話をやめなかったという。

 つまり、茂木幹事長はついうっかりとか、口が滑ったということではなく、確信犯的に、日本国民は愚かであるから、この先別の種類の愚民政策を行うべきであると自分の意見を述べたことになる。

 おそらく国民に対して相当に腹を立てているのだろう。何をやっても政府や自民党の支持率が上がらず、衆議院の補選や地方選挙では連戦連敗が続いている。「このくそったれ愚民どもめが」というのが、茂木幹事長の腹の内だろう。国民の側から見れば、自業自得としかいいようがないのだけれども、自民党の舵取りをしている責任者としては、国民がアホだから支持率が上がらず、選挙にも負けるとしか考えられないのではないだろうか。

 ところで、ローマ時代の「パンとサーカス」とはもう少し具体的にはどのようなものだったのだろうか。個人的に興味があったものだから " ChatGPT " に質問してみた。

 まず、「パンとサーカス」は古代ローマにおける政治的な戦略と市民の心理を示す有名な言葉であり、「ローマの支配者が市民を政治的に満足させ、反乱を防ぐために無料の食糧(パン)と娯楽(サーカス)を提供することを指している」という。まあ、要するに餌を与えて大人しくさせておくということだね。

 パンとは具体的にはパンの材料となる穀物(小麦やトウモロコシ)を配給したそうで、日本でいえば米を配ることに相当する。その他にも、オリーブ油や塩なども配給され、また、皇帝あるいは裕福な貴族が主催する大規模な宴会や祝祭では、大量のワインが振る舞われることがあったという。ことあるごとに酒も飲ませていたということになる。

 一方、サーカスとは、皆さん写真で一度は見たことのあるコロッセウムという競技場などを使って、戦車競走、剣闘士の試合、猛獣狩り、演劇などが行われた。競争や試合においては、金を賭けること(賭博)も行われ、また、勝者には多額の賞金や名声などが与えられたという。

 こうしてみると、なんだか思い当たることがたくさんある。オリンピックなどは愚民政策の一環として考えた方が良さそうだ。不評を買っている大阪のIR構想も、要するに愚民政策だろう。自民党幹事長としては積極的に推進したいに違いない。そのような視点から考えると、大谷の大リーグでの活躍も私には政治ショーに見えてくる。連日の大谷報道などは間違いなく政治的な愚民政策の意図が背景にあると考えてよさそうだ。

 さて、ローマ帝国は「パンとサーカス」を使うことによって、市民の歓心を買い、暴動や反乱を防ぎ、政権の安定を図っていたけれど、それが成功し続けたのであれば現在もローマ帝国が続いているはずで、そうでないということは失敗したことになる。ネックは何だったのだろう。 " ChatGPT " は以下の3点を挙げる。

1 経済的な負担
 無料の食糧配給や大規模な娯楽イベントには莫大な費用がかかり、国家財政に大きな負担となった。経済の停滞やインフレが深刻化し、財政的な持続可能性が問題になった。

2 依存性の増大
 市民が無料の配給に依存するようになると、自立した経済活動が低下し、生産性が落ちた。また、配給が減少したりなくなったりすると、それが社会不安を招いた。

3 構造的問題の未解決
 「パンとサーカス」は、一時的な不満解消策としては有効だったが、根本的な社会経済的問題を解決するものではなかった。土地の集中や貧富の格差、地方の荒廃などの構造的問題は解決されることがなかった。

 なんだか今の日本の身につまされるような指摘だね。オリンピック、大阪万博、大阪IRはローマ帝国の誤りの繰り返しになりそうだ。それに加えて、増税で国民の不満を一層高めようというのだから、政府も、自民党も何を考えているのか分からない。さらに、裏金や公金流用などの政治の腐敗が駄目押しをする。

 その一方では、能登半島地震の復興を意図的に遅らせて、日本の生産性を低くするというのだから、今の日本政府や自民党のすることは箸にも棒にも掛からない。日本には愚民がいるというよりも、愚政府や愚与党があるといったほうがよさそうだ。

 ところで、本記事のきっかけとなった茂木幹事長とは何者だろうか。ざっと概括してみたい。いずれ総理大臣になるかもしれないからね。

 茂木敏充は1955年生まれの68歳。岸田総理の2歳年上、安倍元総理の1歳年下になる。この3人は当選同期で、安倍元総理が冗談紛れに「同期で一番頭がいいのは茂木敏充」と紹介した動画がある。

 

 栃木県足利市出身。東京大学経済学部卒業、ハーバード大学ケネディ行政大学院に留学。東大→ハーバード大学ケネディスクールというのは上川陽子と重なる。やはりネオコンの血を引いているのだろうか。これはダメかも分からんね。

 

 1993年日本新党公認で初当選。翌年自民党入党。当選回数10回。外務大臣、経済産業大臣、内閣府特命担当大臣などを歴任。

 紛れもない自民党の超大物議員であるけれども、私としては腑に落ちない人だ。まず、東大を卒業しているのに、インテリというか、知的な素養があるようには全く見えない。小池百合子じゃないけれど、本当に東大卒業したの? と思わせる。顔が黒くて腫れぼったいけれど、「これって酒焼け?」なんて思わせる。

 顔つきというか、表情も全く冴えない。これから人を殺しに行くか、今人を殺しをして帰ってきたかのような様子に見える。これで実際にも短気で怒りっぽいというのだから、こんな爺さんのそばにいる官僚などは怖いだろうに。

 エピソードにも事欠かないようで、「茂木敏充の評判は天才でも短気で人望なし!流出トリセツが超細かい!」(2021.11.2 mimiful NEWS)との記事や「衝撃!官僚が作った「茂木新幹事長対策マニュアル」のヤバい中身」(2021.11.12 FRIDAY)という記事がある。

 そして、今回の東京新聞の記事でも分かるように、国民を愚民扱いすることに対して何のためらいもない。ダメだね、こりゃ。案外酒の飲み過ぎで、アル中のレベルに達しているのかもしれない。それにしても、自民党はやる気ないねえ。というか、いないね人が。
二階俊博とどっちがまともだろ。