伊藤貫氏に関してはご存知の方が多いのではないかと思うけれど、当ブログで何回も取り上げた私の好きな国際政治・経済アナリストになる。東大卒業後、アメリカのコーネル大学で国際政治学と外交史を学び、もう30年以上もワシントンD.C.に在住している。姉は自民党の参議院議員の山谷えり子氏。

 そんな伊藤貫氏が、新たに「伊藤貫セミナー」というYouTube番組を始め、第1回「伊藤貫、YouTubeはじめました!」が5月4日にアップされたので、今回はそれをご紹介したい。

 

 以下、伊藤貫氏の発言を青字で記載する。

 

 まず、伊藤貫氏は日本のマスコミについて触れる。「国際政治に関する解説のレベルが非常に低いのではないか」「左翼も保守もパターンの決まった非常に見方の浅い報道をしているために日本人の外交感覚が、国際政治の変化をきちんと理解してないのではないか」と問題を提起している。

 こんなセリフを聞くと、私などは嬉しくなって諸手を挙げて賛成をしたくなる。本当にそのとおりだからだ。それにしても、悲しいというか、みっともないというか、もう少し何とかならないのだろうか。

 最近特に日本のマスコミは、NHKも含めて同一の報道をする。なぜかといえば、日本政府から提示された情報をそのまま新聞・テレビで流すからだ。では、日本政府は何に基づいて情報をマスコミに流すのかといえば、それはアメリカのプロパガンダの受け売りになる。

 北朝鮮も日本と同様に報道の自由がないけれども、おそらく自分たちで考えていると思われるだけ日本よりもまともだ。日本ときたら、外国に操られるがままに報道しているのだから、その実態というかレベルは北朝鮮以下になる。

 しかも、右翼であろうが左翼であろうが、関係なくアメリカのプロパガンダを受け入れるのだから、日本人というのは一体何者なのだろうと思う。右翼が愛国心を語るだって? 聞いてあきれる。左翼が革命を語るだって? 聞いてあきれる。少しは自分の頭で考えたらどうなのだろうか。

 伊藤貫氏はさらに痛烈に批判する。「
テレビとか新聞雑誌で国際政治の解説をしているジャーナリストとか評論家とか、それから大学の国際政治の教授たちは、今のアメリカがどういうことをやっていて、そのために国際政治がどのように変化していって、それに日本が全く適応できていないこと(を指摘しない。)」

 「
現在の自民党と外務省と防衛省のように、単にアメリカから言われた高い武器を買って、自衛隊の指揮系統システもアメリカに統合して、米軍の下部組織として動けば、アメリカはずっと日本を守ってくれるだろうとそういう考え方(をしている。)」

 私はたびたび「日本は独立することが必要だ」と書くけれども、そのような観点から見ると、現在の日本という国は大変にみじめな国になる。みじめなばかりではなく、愛国心がなく、日本の将来のことを考えていない。アメリカにおんぶに抱っこしていれば、それで日本という国は安泰だなどとなぜ考えられるのだろうか。実に不思議だ。

 アメリカという国はジェノサイドを行ってツラッとしているような、世界で一番の極悪非道な国であるけれども、では悪のアメリカに追随している日本には責任はないのかといえば、そんなことはない。悪を悪と知りつつ、それに蓋をしてついて行っているのだから、立派な共犯者だ。

 おまけに、アメリカはいつまでもアメリカではない。アメリカの没落が始まっている。日本政府はそんなことはないかのようなフリをしているけれども、もう隠しようがなくなってきている。アメリカが今でも世界の覇権を握っていると思っているのは日本人だけだろう。

 「
自衛隊に統合本部を作って、その統合本部が在日米軍の指揮下に入って日米一緒に戦えば、日本はアメリカに守ってもらえるから大丈夫だと、これが今の日本の岸田政権、それから外務省、防衛省、自衛隊の見解です。

 よくまあ、そんなことを形だけでも信じる気になれるものだと思う。日本人はどうにかしている。日本に原爆を落としたのはアメリカですよ。今現在でも人種差別の国アメリカですよ。そんなアメリカが、日本を助けるために自分たちが犠牲を払おうと思うわけがない。むしろ、いざとなったら敵と一緒になって日本に原爆を落とし始めるのがアメリカだと思っていた方がいいだろうね。

 伊藤貫氏は新たに「伊藤貫セミナー」を始めた動機としてこんなことを言っている。「
40歳以下もしくは50歳以下の人たちででなるべく若い人に見てほしいと考えてるんですね。若い人に刺激を与えてで僕のYouTubeを見ていただいた後、皆さんがご自分で勉強するようになることで、若い人たちに一生懸命勉強してほしい。

 う〜ん。気持ちは分からないでもないけれど、なかなか難しそうだ。伊藤貫氏の話を聞いてなるほどと感心するのは、やはり私のような同世代の人間が多いのではないだろうか。時代の気分を共有して生きてきたからね。違う時代を生きてきた若い人には難しいかもしれない。

 あと、若い人にいかにして疑問を持たせるかというのが大切だと思う。私が政治に関心を持つようになったのは、新型コロナ騒動で日本政府が自国民を無差別に殺すようになったためだけれど、私にとってみれば一体何が起きているのか理解不能で、疑問符だらけだった(今でも)。だからいろいろネットで情報を見始めるようになった。

 若い人に勉強させようと思ったら、「勉強しなさい」と言うのではなく、「あれ?世の中どうなってんの?」と疑問を持たせることだと思う。そうすれば勝手に勉強を始めるから。それにしても、伊藤貫氏はやんちゃだね。暴れん坊というか。それが持ち味で、だから話を聞いても楽しいと思うのだろう。それはそれでいいのだけれど、私と結論が違うのはそのあたりが原因なのかもしれない。

 伊藤貫氏は現在の世界情勢についてこんなことも話す。「
国際政治の状況がどんどんどんどん悪くなってまして、米軍による世界支配能力というものがどんどん落ちているわけですね。このままでいくと悪い場合には今から4年後か5年後、それからすごく運がいい場合にも15年後には日本は中国の勢力権に吸収されてしまう。

 これが私にとって理解できず、より詳しい説明を必要とするところになる。つまり伊藤貫氏は、日本が中国の勢力圏に入ることは最悪のことだと主張していることになるのだけれど、それが私には分からない。理解が不能のことになる。

 分からない理由は二つあって、一つは現在のアメリカは世界で一番の極悪非道な国であるのだけれども、日本はその世界一極悪非道な国の属国・植民地をしているわけで、アメリカの支配を脱することは、そんなに悲観的になるようなことなのだろうか。そこを説明してほしいように思う。

 もう一つは、仮にアメリカの属国・植民地であることをやめて、中国の属国・植民地になったとした場合、日本の運命はそんなに悲惨なものになるのだろうかという疑問だ。今の日本は中国に負けず劣らず独裁国家であり、ワクチンで日本政府がたくさんの日本人を殺すような国だからね。それはアメリカが殺せと命令するから殺しているのだけれど、中国はもっとひどいことをするということ? そして、日本は何の抵抗もなく、それを受け入れるということだろうか。

 東南アジアの国々は、中国の影響下にあると思われるけれども、そんなに悲惨な思いをしているのだろうか。中国にがんじがらめに縛られて、人権も言論の自由も失っているのだろうか。インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジアあたりはどうなのだろう。中国に酷い目にあわせられていつも泣いているのだろうか。

 日本は古代において中国に支配されていたから、その時の記憶が気分として残っていて、何となく中国支配を嫌うのは分かるけれども、アメリカ以上に日本を過酷に扱うかどうかは分からないと思うけどなあ。まあ、日本人はあまりにも常識外れで外交が下手な国だから、明るい見通しは持てないけれども、それにしてもね。

 伊藤貫氏は面白いことに「もし5年後か10年後か15年後に日本が滅びるのならば」という言葉を使うわけ。間違っているねえ。中国の勢力圏に入ることがどうして日本滅亡に繋がるのか、その説明をしっかりしてもらいたいように思う。

 念のため、私の考えは、中国と仲良くしようということではなく、今後何百年かかろうとも、日本は自主独立を果たすことを目標にするべきというものなので書いておきます。

 さて、次に伊藤貫氏はちょっと無茶なことを要求する。
「物を考えるにはやっぱり階層というものがある」「哲学的宗教的なレベル」「パラダイムレベル」「ポリシーレベル」「僕は外国に住み始めて、5、6年目にこれはどうも、ものの考え方と議論のやり方にはフィロソフィカルなレベルとパラダイムレベルとポリシーレベルっていうのがあってこの3つをはっきりさせないと安定性のある、長期性のある議論っていうのはできないんじゃないかというふうに気がついたわけです。

 う〜ん。これは、成績をつけるために学生に書かせるレポートの課題のようなものにしか思えないなあ。現実問題はこれでは処理できないでしょう。「犯人は誰だ?」というときに、「哲学的・宗教的なレベル」も「パラダイムレベル」も「ポリシーレベル」も関係がないように思う。

 問題が片づいたあとで、それぞれのレベルで分析するのは可能かもしれないけれど、あるいは将来の政策を考える上ではそのように考えるのもいいだろうけれど、今動いている現実を前にして、そのようなまどろっこしい思考が可能なようには思えない。人間は現実に直面するときには論理を捨てるからね。直観で判断しようとする。その直観をサポートするものの一つに論理があるけれども、イコールではない。

 このYouTubeの最後で伊藤貫氏は
「僕は右翼にも左翼にも、保守にもリベラルにも、体制派にも反体制派にも、簡単には賛成しないというポジションを取ることが多い。」「なぜ私が右か左か、リベラルか保守か、もしくはグローバリストかナショナリストかという議論に簡単に乗らないのかということを、徐々にこの伊藤貫セミナーで説明させていただきたい。」と述べる。

 これはそのとおりだと思う。私は一面ではグローバリズムに大賛成で、洋服を着て、ベッドに寝て、肉やケーキを食べ、車や飛行機に乗るなどというのはグローバリズムの結果だよね。大いに利用させてもらっているというか、もうそれなしでは生活できないくらいのものになっている。

 じゃあ、日本語はやめて全部英語にするのがいいかとなると、それには大反対せざるを得ない。おいしいもの、使いやすいもの、便利なものなどは放置しておいたところで自然に世界に広がって行く。そこを無理して自分たちだけが金もうけをしようと使えないものを見境なく押し付けるから、「グローバリズム反対」ということになる。

 

 グローバリズムだから良い、あるいは悪いではなくて、一つ一つを日本の問題として日本人が考えて、その方がいいと思えば採用すればいいし、悪いと思えば却下だよね。現在のようにアメリカのいいなりになると、国民がつらい思いをしなければならなくなる。しかし不思議だね。日本人のくせに、なぜ日本の利益を考えようとしないのだろうか。

 

 今の世の中はアメリカを先頭として、自分の金もうけのことばかり考えている。それはことによると、右翼も左翼も、保守もリベラルも、体制派も反体制派も、グローバリストもナショナリストも、全員がそうなのかもしれない。だめなんだよねそんなことじゃ。もっと真面目な気持ちで住みやすい日本を作るにはどのようにしたらいいか、自分の頭で考えるようにしなくては。

 特に岸田政権だよね。住みやすい日本にしようなんて、かけらも思っていないから。私から見ると大変に恥ずかしい人たちだけれど、岸田総理本人はそうは思っていないのだろうね。