今日は、耕助のブログから「国家を何十年も貧困に陥れてきた日本の拉致神話」という記事をご紹介したい。原文は「Japan’s abductions myths have kept a nation in poverty for decades」(2024.4.12)であり、以前ご紹介したJohn Menadue(元駐日オーストラリア大使)のウェブサイト「Pearls and Irritations」に掲載されている。

 著者はグレゴリー・クラーク(Gregory Clark)という人で1936年生まれ、87歳。1976年から日本に在住するイギリス系オーストラリア人の外交官、ジャーナリスト、作家、教育者、学者。日本では上智大学経済学部教授、アジア経済研究所開発スクール学長、多摩大学学長→名誉学長、小渕内閣教育改革国民会議委員、 国際教養大学副学長。日本人論の論客。専門は比較文化、国際経済、国際政治。

 今回の記事は北朝鮮による日本人拉致事件に関する論評になる。この問題に対して私はすでに考えることをやめていた。考えたところでどうなるものでもないという気持ちが強いせいだ。北朝鮮が一方的に悪い事件であり、あんな無法者国家と交渉をしたところで、日本に不利益な要求を突きつけられるのが関の山であり、そんなくらいならば放置しておいた方がいいくらいの考えだった。

 ところが、このGregory Clarkの記事を読むと、また違った観点が浮かび上がってくる。「ふ〜ん、そんな見かたもあるのか」と参考になる。

 以下、記事の紹介・要約等を黒字で、私の感想を
青字で記載する。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 まずは表題の「拉致神話」というのが目を引く。神話? え? 神話なの? 国家とは北朝鮮のことだけれども、北朝鮮の貧困と拉致事件が何か関係があるの? などのクエスチョンマークとともに読み始めることになる。

 2001年から1年間にわたる秘密交渉の末、平壌はようやく白状し、70年代後半に拉致した2組の夫婦と、拘束していた朝鮮戦争脱走兵の日本人妻の返還に同意した。2002年の平壌宣言では、日本は最終的に北朝鮮との関係を正常化し、多額の経済援助を提供することを約束した。平壌はその見返りとしてミサイル発射実験を停止することになった。

 もう20年以上前、小泉内閣の時になる。日本中が大騒ぎで、一種興奮状態だったような気がする。私はそれまで、日本人が拉致されて北朝鮮に住んでいたということ自体を知らなかったかもしれない。ひょっとすると「北朝鮮は地上の楽園」と主張する人がまだ生きていただろうか。北朝鮮のミサイル発射実験はその後も行われているところを見ると、結局のところ交渉は決裂し、平壌宣言が無効になったということなのだろう。

 小泉首相が(北朝鮮から)帰国するやいなや、当時の官房副長官であった極右の安倍晋三が、北朝鮮による日本人拉致は800人を超えているという噂を流し始め、その人たちも帰国させなければならないと言った。

 なるほどそういうことなの? つまり、5人が帰ってきたことでとりあえずの対立をやめ、平和条約を結んで経済援助をすれば、日本と北朝鮮の国交は正常化して今頃は仲良くやっていたということ? そして、北朝鮮との関係を悪化させたのは安倍元総理だっというわけ? いやはや、何も知らなかった私としてはビックリだねえ。

 仮にそれが本当のことだったとして、安倍元総理に対して拉致問題を解決するなと指示したのはアメリカだろうね。なぜなら自分以外の国同士が仲良くなるということは、アメリカの国益に反するからだ。

 そのため、日本は中国とも、ロシアとも、韓国とも仲良くすることができずにいる。尖閣問題、竹島問題、北方領土問題は、日本と隣国の関係を悪くするために、そして、できることなら日本と隣国が戦争をするように、アメリカが設定した罠だからね。

 余談になるけれども、私は石原慎太郎はアメリカのスパイだったと思っている。1989年に "「NO」と言える日本 " を共同執筆して雄叫びを上げた人だったけれども、その後すっかり懐柔され、転向したのだろうねえ。賄賂? ハニトラ? 日本と中国の仲が険悪になったのは、尖閣諸島国有化が決定打だったけれども、最初に行動を起こしたのは都が購入すると発表した石原慎太郎都知事だからね。アメリカから「やれ」といわれたのだろう。あ、根拠のない、単なる私的な想像なので悪しからず。

 そんなアメリカにとって、日本と北朝鮮が仲良くなることは許しがたいことであって、絶対に認めないはずだ。そのために、安倍元総理を使って拉致問題を解決させないようにしたのだろう。怖いねえ、政治は。Gregory Clarkのこの記事は、次に横田めぐみさんの話に移る。


 拉致被害者の中の一人に13歳の少女、横田めぐみさんが含まれていた。彼女の名前は、まだ解決していないとされる拉致事件の象徴として使われるようになった。悲しみに暮れる彼女の両親は、オバマ大統領に会わせるためにワシントンに連れて行かれた。この問題に注目させ続けるための日本政府の巨大な広報活動の一環として。

 一方、平壌はめぐみさんが、娘のキム・ウンギョンを出産した後に死亡したと主張し続けた。めぐみさんの火葬された骨が証拠として提出された。日本政府は平壌が嘘をついていることを証明するためにDNA骨鑑定を行ったが、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」にその疑わしさを批判された。


 あ、そうなんだ。この件に関しては、「科学の基本を忘れた権威とメディアの怠慢」という「朝日新聞地方版(新庄)に掲載されたコラム」(2010.7.15)がある。それにしても、日本政府は信用できないねえ。こうやって「あれ?」と思ってちょっと調べるだけで、次々と嘘が出てくる。もはや、日本政府のいうことは全部嘘と思った方がいいようだ。中には本当のこともあるというレベル。つまり、私たち日本人は、戦後も継続して大本営発表ばかりを聞かされていることになる。昨日や今日始まったことではない。

 めぐみさん事件がいよいよ崩れ始めたのは、2014年のことになる。めぐみさんがまだ生きていると主張し続けた日本政府が、ついにめぐみさんの両親と、成人しためぐみさんの娘であるキム・ウンギョンとの面会を、モンゴルで行うことを条件に許可せざるを得なくなった。

 しかし、モンゴルから戻った両親は、母親が「めぐみはまだどこかで無事だと信じている」と言った以外、めぐみさんについて何も語らなかった。

 
そういえば、あったね。横田夫妻が孫と会ったというニュースが。うっすら覚えている。2014年のことだったんだな。でも、会ったとのニュースは流れたけれども、だから何かの変化が生じたというような話は聞いたことがない。

 私たちは何を信じればいいのだろう? めぐみさんはどこかで無事だが、残酷な北朝鮮の体制は彼女を人前に出すことを許さないというのだろうか? 先週(2024.4.5)、横田めぐみさんの弟で被害者の家族会の横田拓也代表が都内で記者会見を行い、「めぐみさんのことが話に出ないように、北朝鮮の工作員がモンゴルにいたことは間違いない」と語った。

 日本政府が何度も捜索を要求した結果、平壌は、東京が主張した17人の拉致被害者のうち、5人は返還され、5人は入国していなかったとし、残りは死亡したと発表した。問題は解決し、日本の岸田文雄首相が先月ほのめかしたように、拉致問題を含むのであれば、これ以上の直接会談の要請は拒否されるだろう。


 要するに、日本側の言い分と、北朝鮮側の言い分が真っ向から食い違っているために、拉致問題にこだわっている限り日本と北朝鮮との間で関係改善は期待できないということになるだろう。

 さて、この記事の最後の段落がふるっている。
「日本国民がだまされやすいこと頼りに、今は亡き安倍元首相は、日本と北朝鮮との関係を長期にわたって膠着させる理想的な方法を見つけたのだ。」と書いてある。


 私としては、岡目八目だろうと思う。そう、日本は北朝鮮との関係を改善したくないのだ。もちろんそれはアメリカも同様であり、いつでも戦争が可能であるような二国間関係にしておきたいのが日米政府の腹だ。さらに、北朝鮮は日本政府が増税をしたり軍備を拡張するための言い訳にもなってくれる。日本の敵国が、中国とロシア2国というのと、中国、北朝鮮、ロシアという3国になるのとでは、増税や軍備拡張の説得力が違ってくる。国交正常化などとんでもないというのが、日本政府及びアメリカの表明されることのない立場になる。

 そして、何といっても " 頼りは日本国民がだまされやすいこと " であるとGregory Clarkは述べているのが目を引く。私も全くそのとおりだと思う。大東亜戦争時の大本営発表、福島原発爆発時の政府発表、新型コロナ騒動及びワクチンの政府の発表やマスメディア報道、ロシア・ウクライナ紛争の政府発表及びマスメディア報道、増税の必要性に関する政府見解などなど。大げさとか、曖昧にしてぼかすなどというものではなく、いずれも「真っ赤な嘘」だ。しかもそれで日本国民の命まで奪う。

 政府はただただ、だまされやすい日本人を頼みの綱にしている。中島みゆきに「信じ難いもの」という歌がある。「十四や十五の 娘でもあるまいに 繰り返す嘘が なぜ見抜けないの」で始まる。「いくつになったら 大人になれるだろう いくつになったら 人になれるだろう」と続く。

 日本人も、本気で大人になり、本気で人になる努力を始めたらいいと思うのだけれど、今日も明日も明後日も、だまされ続けるのだろうね。