ウクライナでも、イスラエルでも、アメリカは散々な目に遭っている。世界の覇権を失ったどころか、足元を見られてコケにされていると考えた方がいいようだ。その原因は軍事力でBRICSに歯が立たなくなったことの影響が大きいが、ただし、それは表面上誰にでも分かりやすい現象というだけであって、本質は軍事力だけの問題ではない。

 では本質とは何かといえば、アメリカに正義がないことになる。正義がないどころか、過去世界中で悪の戦争や侵略を繰り広げたものだから、多くの国から恨まれている。そんなアメリカには誰も救いの手を差し伸べようとはしない。アメリカが負けることを、世界中が「ザマア」と思って見ている。

 これまでは、アメリカがどれだけ悪を他国に押し付けようとも、軍事力でも、経済力でも太刀打ちできないと思っていた世界の国々は、しぶしぶ服従しているしかなかった。しかし、悪の力でねじ伏せていては、反抗心や敵愾心を生む。それが、軍事力でも経済力でも、いかにしてアメリカに対抗するかという工夫や努力を生じさせた。

 それがようやく、ウクライナやイスラエルで花開いてきたと考えていいように思う。つまり、アメリカは世界戦略を誤ったのであり、それが現在のアメリカの衰退に結びついていると考えていいように思う。

 アメリカの誤りは建国の時から続いている。アメリカインディアンをだまして皆殺しにしたことでアメリカは建国することができたが、以後、現在に至るまでアメリカはその路線で進んできた。表面上は「自由と民主主義」を標榜してきたが、その実質は「だましと力による支配」であり、日本人のようにきれい事のプロパガンダで騙される国民もいないわけではないが、多くの国は気がついていた。

 それにしても、正義がないのはつらいものがあって、落ちぶれても同情してくれる人がおらず、自業自得としか思われないばかりか、なんなら傷口に塩を塗り込んでやろうかくらいに思われているに違いない。

 そのような世界情勢の中で、何とも空気を読めないのが岸田政権であり、自民党政権であるといえる。戦後一貫して、 " アメリカに隷属する " 姿勢で日本を維持してきた。それで何とかやって来れたのは1990年頃まで、宮澤内閣あたりまでだろう。

 なぜやって来れたかといえば、ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)という国があったからだ。当時のソ連はアメリカのライバルであり、アメリカと世界の覇権をめぐって競っていた。そのためアメリカは、横暴に振る舞うことができなかった。なぜならアメリカが外交上の失点を重ねることでソ連の信望が厚くなってしまえば、世界の国はソ連陣営に近づいていき、アメリカは世界一の座を追われてしまうからだ。だからアメリカは、親米諸国が離れていかないように配慮した外交を行っていた。

 ところが、1991年にソ連が崩壊した。それによってアメリカはライバルがいなくなったと思い、天狗になった。「世界は俺1人のものになった」と思い込んだ。となると遠慮はいらなくなる。「世界のお宝は全て俺のもの」とばかりに、それまでに輪をかけて傍若無人に振る舞うようになった。おまけにそれを止める者はいなかった。

 当然のこととして、日本もアメリカが搾取する対象に変わった。それまで一番アメリカにへいこら隷属していた日本が、一番搾取されるようになった。以後現在までの30有余年、日本は豊かになることを禁じられ、つまり経済成長することを禁じられ、その分は全部アメリカに吸い取られることになった。

 個人的に特にひどかったと感じるのは民主党政権の頃だろうか。なにしろ、給料が下がった。給料が上がらないのは我慢するとしても、下がることにはつらいものがあった。それゆえ、民主党は支持を得られなかったけれども、今考えてみればそれはアメリカが仕組んだことだったと思う。日本が不景気になれば、その分アメリカがもうかるというのがアメリカの考え方だからだ。

 そして、現在の岸田政権は、民主党政権以上にアメリカにやられてしまっている。ステルス増税を含めて、増税に次ぐ増税を連発している。増税した金はどこに行くのか。もちろんアメリカに決まっている。

 岸田総理はご丁寧に、2022年5月5日、ロンドンの金融街シティーでの講演において、「日本人は約2000兆円の個人資産を持っている。」と述べて、日本への投資を呼びかけた。よくそんな馬鹿なことを言えたものだと思う。まるで、オオカミの前に柔らかい子羊の肉を放り投げたようなものだ。

 それと同時にアメリカは、日本人の個人資産を引き剥がしにかかるようになった。増税はその一環になる。増税した金は、軍備増強にしろ、海外支援にしろ、アメリカへと回っていく。アメリカへの上納金を生み出すために私たちは増税されていると考えていいだろう。もちろん、国民への還元は一切なしだが、一部の政治家や企業へのキックバックは、アメリカならすることだろう。

 ところで、私は岸田政権になってからは、ワクチン接種にしても、増税にしても、軍備増強にしても気に障ることが多く、岸田総理を批判することはどんなことであってもそれは正義だとまで書いた。そのくらい岸田総理の政治姿勢は間違っていると考えている。一番の間違いは、国民に背中を向けてつらい思いをさせ、アメリカと財界に媚を売っていることだけれども、私がそれに腹を立てるのはなぜだろうか。

 私は元々政治には関心がなく、学生の頃からずっといわゆるノンポリであって、自分としては左翼でも右翼でもないつもりでいる。その私が、自分で読んでもビックリするくらいに政権批判をしたり、岸田総理を攻撃したりするのはなぜだろうか。それはどこから出てくるものなのだろうか。

 そこで思いついたことが、「時代劇的正義感」になる。「時代劇的勧善懲悪」といってもいい。以前は日本のテレビで盛んに時代劇が放映されていた。その中でも私が一番評価しているのは「必殺仕事人」になる。まずは映像が美しい。あれはイギリスのBBCにも負けないくらいの美しさだ。白黒を基調とした、感情抑えた日本的美術表現とでもいったらいいだろうか。

 必殺シリーズは1972年の「必殺仕掛け人」から始まり、2009年の必殺仕事人で終わっている。テレビスペシャルでは2023年12月にも放映されたようだ。ドラマの内容としては、無茶苦茶に腹黒い悪人が登場して、無茶苦茶に悪質な殺人を行う。その犯人は極悪非道の人非人という描き方をされる。

 それを成敗するのが、必殺仕事人の面々。藤田まことが同心役で主役。あとは町人で、飾り職人、何でも屋、三味線屋などがいる。被害者ないしは被害者の知り合いから犯人の殺害を委託され、金を受けとって実行するが、金額は事情によってはわずかな金でも請け負う。

 加害者は誰が見ても「こんな奴殺してしまえと思うような悪人」になるけれども、権力者あるいは大金持ちである。この点が日本の時代劇における勧善懲悪の面白いところのような気がする。悪者がれっきとした役人や武士の中でも身分の高い者であったり、大店の主人であったりする。

 アメリカのドラマは、そのような加害者は例外であるように思う。大体は悪の組織の一員が悪いことをする。「刑事コロンボ」あたりは権力側の人間の犯罪という側面があったが、日本の時代劇における悪人ほど徹底して善人や弱い物を踏みにじるような悪質さはなかったように思う。

 そして、面白いことに、現実の社会においてはテレビドラマと逆の傾向がある。日本は現実世界において、時代劇の悪人ほどひどい悪人は出現しない。反対に欧米では、まるで日本の時代劇に出てくるような悪人が、現実の社会において跋扈している。ビル・ゲイツやバイデン、ビクトリア・ヌーランドなどはその代表だろう。

 どう考えたらいいだろうか。おそらく、日本は想像できる最大の悪人を、時代劇というテレビドラマを通して全国民に見せていた。見せてどうしていたかというと、現実社会においてそのような悪者が表れることや、そのような悪が行われることを防いでいた。

 つまり、とてつもない悪い奴がバッサリと斬り殺されるシーンを全日本人に見せることによって、あんな悪いことをしてはいけない、あんな悪い奴になってはいけないと教育していた。だから日本の支配層は、アメリカのような極悪人が少なかったと考えることができるように思う。その結果、日本の庶民は欧米ほど虐待されてはこなかった。

 ところがである。昭和の時代には毎日のように地上波テレビで放送されていた勧善懲悪の時代劇が現在はすっかり消えてしまった。水戸黄門、銭形平次、遠山の金さん、大岡越前、桃太郎侍、暴れん坊将軍、子連れ狼、鬼平犯科帳などの時代劇はどこかに行ってしまった。あまりにも定型化され過ぎて飽きられたという見方もできるように思うけれども、疑い深い私はアメリカから放映禁止の指示があったのではないかと思っている。

 水戸黄門の最終回は2011年。その頃にはアメリカは日本を食い物にすべく計画がかなりの部分出来上がっていたことだろうと思う。これから日本の財産をアメリカが露骨に掠め取ろうとしているというときに、時代劇で悪人がバッタバッタと斬り殺されているようでは都合が悪いとアメリカは思ったのだろう。また、日本人の悪に対する拒否感を低減させる必要があるとも思ったのだろう。

 そして、岸田総理や、上川大臣や、河野大臣や、武見大臣や、小池都知事などの悪徳政治家が存分に活躍できる日本にしておきたいと思ったのだろう。

 私などは、幼稚園の頃にテレビがわが家にやってきて、アメリカのテレビドラマを頻繁に見ながら育ったものだから、そういう意味ではアメリカナイズされているように思う。しかし、どこで身に付けたのか、時代劇的な日本の価値観、道徳観念、勧善懲悪などはやっぱり染み込んでいるようで、今たまたまYouTubeで見つけた「遠山の金さん捕物帳 第01話[公式]」を飛ばし見してみると、やっぱり目頭が熱くなってしまう。殺陣のシーンをご覧になりたい方はこちらがいいかな。必殺仕事人は厳しいせいかYouTubeにはいいところが上がっていないけれど。

 悪徳政治家連中はアメリカに魂を売った連中だから、このような時代劇を見ても、何とも感じなくなっているのだろうか。そういえば、悪徳政治家は男女を問わず、まるで悪代官の風貌をしている。武見大臣などはカツラをかぶせれば今すぐ時代劇の悪代官役で通用する悪顔だ。あれで、ニコニコしながら視聴者に愛想を振りまき、ニュースキャスターをしていた過去もあったのだから、その人間性の軽さに驚く。

 

 時代は変わり、日本の道徳や文化、人情や風情、勧善懲悪の意識などは、時代劇の衰退とともに寂れていき、それと呼応するように悪徳政治家や悪徳財界人が増えていくのだろうか。アメリカ人は他民族を殺すのが大好きだけれども、異文化を破壊することも負けず劣らず好きだからね、