前回(平和への展望は? その1)の続きになる。

質問7:ロシア国境付近でのスパイ活動、核兵器を搭載した爆撃機の飛行、そして軍事演習の回数が、この1年で大幅に増えています。中国も同様です。これらはすべて、いつもの地政学的ポーズなのでしょうか? それとも、米国の戦略的位置づけにおける危険な拡大や新たな脅威の方向性を示しているのでしょうか? ロシアと中国が挑発行為や攻撃的な態度とみなしていることは正当なのでしょうか。

返答:バイデン大統領は口ではロシアや中国との対立を望んでいないと言う。しかし、彼の政権のやり方は、トランプ前政権とオバマ政権を引き継いでいる。米国の実際の政策は攻撃と緊張を煽るものだ。力の持つ固有の性質上、それ以外のものにはなりえない。米国の政策に法的な正当性はなく、それは侵略であり、国際法上の犯罪であり、国連憲章に違反している。

 米国は虚偽の主張でその政策を正当化しようとしている。例えば、ロシアがウクライナを侵略し、クリミアを併合したと非難している。その証拠はどこにあるのだろうか? 米国とNATOは2014年2月にウクライナでクーデターを起こし、選挙で選ばれた政府を追放した。このクーデターは、2014年3月の住民投票で、何世紀にもわたって文化を共有してきたロシア連邦への加盟を決めたクリミアのロシア系民族を脅かした。

 いずれにせよ、キエフ政権に何十億ドルもの殺傷力のある武器を提供したのはアメリカである。ロシアの国境に軍事力とインフラを増強しているのはアメリカとNATOだ。このような行為は帝国主義国家にとっては条件反射的なものだ。平和を願う多くの道徳的な人々にとっては不合理なことだが、アメリカは資本主義体制のもとで戦争マシンと化している。

質問8:南シナ海での「航行の自由作戦」と、最近表明された台湾独立への意気込みの間で、中国との軍事衝突のリスクは増大の一途をたどっています。これはどこに向かうのでしょうか? 中華人民共和国が台湾の完全統一のために武力行使に踏み切った場合、それを阻止するために米国が戦争に踏み切ると思いますか?

返答:「戦略的曖昧さ」と名付けられた米国の執拗な煽りによって台湾が独立を宣言した場合、中国は軍事力によって台湾を支配することになるだろう。というのも、米国を含む世界各国は、中国の台湾に対する領土主権を認めているのだから。

 米国は中国と台湾の戦争が自国の経済にとって危険すぎることを知っているので引き下がると思う。言い換えれば、中国が米国流のハッタリをかますことで、米国の手札がお粗末なものであることに気づき、その結果米国の経済的存続は危うくなる。

質問9:シリア政府の明確な反対を押し切って、アメリカは重要な土地を占領し、石油を盗み、農業生産性の高い地域へのアクセスを妨げています。世界はこれを、地政学的優位を得るのために、罪のない人々を犠牲にした残酷なゲームであると見ています。 アメリカはこのような評価を望んでいるのでしょうか? それとも、世界の他の国々がどう思おうと、もはや気にしないのでしょうか?

返答:シリアという具体的な国の事例と、米国による明白な甚だしい違反行為は、上で論じたような米国の帝国主義的行為を証明するものと受け止めることができる。米国が良心的な存在なのか、それとも有害な存在なのか、抽象的な議論ならいくらでもできる。しかしシリアは、米国の指導者やメディアが何十年にもわたって言い続けてきた「良心的な権力」や「優れた美徳」という幻想を打ち砕いた。強大で崇高なアメリカという神話は、シリアでの不法行為が示しているようにまやかしである。

質問10:民主主義国家では、少なくとも理論的には、国民は公共政策のあらゆる問題について発言権を持ちます。しかし、結局のところ、最近の軍事作戦や宣言されていない戦争は、どれも国民の賛意や支持を得られていないようです。国の外交政策や軍事的優先順位を決定する上で、国民の役割とは何なのでしょうか、どうあるべきなのでしょうか。それとも、そのようなことは "専門家" に任せたほうがいいのでしょうか。

返答:甘いと思われるかもしれないが、民主主義が本物であれば、外交政策やその実施については国民に対して説明責任を果たすべきである。米国は近代国家として誕生してから246年間、10年ごとに戦争をしてきた。46人の大統領のほとんどが戦争、侵略、あらゆる帝国的陰謀を指揮してきた。第2次世界大戦以降、おそらくすべての大統領が戦争犯罪人として訴追され得る。つまり、これまで国民は発言力も影響力も持たなかったということだ。権力者たち、体制側、寡頭政治、富裕層、ディープ・ステート、その他の何であるにしろ、国民以外が戦争の方針を決めていたのだ。

 大統領は、たとえ寡頭制であったとしても、戦争に向かう船の先頭に立っている人物である。もし米国が本当の民主主義国家であったなら、今のような柔軟性のない戦争路線は変わるだろう。ジョン・F・ケネディは戦争と冷戦を抑制しようとして、結局ディープ・ステートに暗殺された。戦争の決定は、経済政策など他のすべての重要な決定と同様に、民意を反映するものでなければならない。それが民主主義だ。しかしご存知のように、アメリカは4年ごとに大統領選挙を行う寡頭政治(少数者が国家の支配権を握る政治)国家である。

 オバマ、トランプ、そして現在のバイデンが一貫してロシアと中国への侵略を推し進めているのはなぜか? 民主的な民意はどこにあるのか? 寡頭権力と企業資本主義の支配体制のもとでは民意は存在しない。将来的には変わるかもしれないが、現状を民主的な統治に変えるには一般の労働者であるアメリカ人の膨大な動員が必要だ。同じことが、ヨーロッパのいわゆる民主主義国家にも当てはまる。

質問11:国民や連邦議会の大半は、特殊任務、代理資金提供、CIAの工作、軍事作戦、サイバー工作、政権交代工作などの知られていないたくさんの活動が、国民の名において行われていることを知らされていません。破壊工作やテロ行為など、地球上の他の地域にも及んでいる広大な「闇の世界」を支える資金もまた秘密です。そして今、米国国民に対するスパイ活動が国内でも蔓延しています。このようなことが「自由の国」にあっていいのでしょうか? 「人民の、人民による、人民のための政府」など、まやかしに過ぎないということなのでしょうか?

返答:あなたは暗黙のうちに質問に答えていると思う。ジョン・キリアコウ、ダニエル・ヘイル、チェルシー・マニング、ジュリアン・アサンジ、その他多くの名誉ある真実の語り手である内部告発者を迫害し、社会を監視しようとする違法な取り組みが蔓延しているのはそのためだ。権力者たちは、国民への説明責任を果たすことを恐れており、国民の抗議を抑圧し、自分たちの組織的犯罪を隠蔽しようと懸命に努力している。

 根本的に、アメリカの権力は外国に対する侵害だけではない。反民主主義的な結果として、窮乏し変形した社会に苦しむ自国民に対する侵害なのだ。しかし、労働者が組織化され、長年の懸案であった権利を要求し始め、やがて統治機構を構成するようになれば、それも変わるだろう。その実現には何十年もかかるかもしれないが、歴史は正義と平和を求める闘いの味方なのだ。

質問12:最近では、新型コロナ救済として、形だけですが先例となる国民への直接の支払いが見られます。また、奴隷の子孫への賠償についても議論が続いています。

 もし政府が国防総省の資金を乱用し、不当な戦争を推進し、不要な装備を購入し、不必要に米軍の影響力を世界中に拡大するために莫大な資金を不正に使用し、浪費してきたことが明白に立証された場合、そしてこれらの誤った企てや不正な活動に対する同意を得るために米国民に定期的に嘘をついてきたとしたら、現実的・政治的な問題はさておき、国民が適切な補償を特定し、期待し、あるいは要求することに対して、憲法上あるいはその他の法的な障壁があると思いますか? 権力が濫用されたことに対する現金の払い戻しや国民への手厚い賠償は認められるでしょうか?

返答:民主的正義の最良の表れとは、米国の大多数の労働者が、最終的に自分たちの階級的利益のために働く政府を作ることになるだろう。いわば、政治的意識の高い労働者とその家族の大衆運動によって、体制全体に対して訴訟を起こすことである。戦争を好む寡頭資本主義体制を排除し、他のすべての国々と真の意味での国際主義を共有する労働者主導の政府に置き換えることは、何十年にもわたる残酷な不公正に対する最も効果的な補償の形となるだろう。

あとがき:Finian Cunningham(フィニアン・カニンガム)の示唆に富んだ見解に感謝する。インタビューは、 "平和配当プロジェクト" のディレクター、
John Rachel(ジョン・レイチェル)によってアレンジされた。この取り組みは、ワシントンD.C.のネオコン戦争屋の横暴に挑戦し、終わりのない戦争を終わらせ、現在米国と世界の他の国々との関係を悪化させている自滅的な外交政策と軍事的枠組を逆転させるための、強力で、前例のない、終始一貫した戦略を包含している。

 私たちは、過剰な軍事予算と帝国主義的な行き過ぎた行為に組み込まれた腐敗と詐欺を徹底的に告発するドキュメンタリー映画『Peace Dividend(平和の配当)』本編のために、Finianにさらなるインタビューを行いたいと考えている。この映画は、国民が自分たち自身と子どもたちのために望む未来を決定する発言力を持つために、情報を与え、団結させ、力を与えるだろう。

 

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 引用させていただいた記事は以上になる。私にとっては頷けるところがたくさんある記事だった。その中で印象的だったことをいくつか挙げてみよう。(青字は私のコメント)

 

・「アメリカの企業資本主義とその軍産複合体は、不安と敵意に満ちた世界に完全に依拠しており、麻薬中毒者のようなものだ。定期的に戦争の発作が必要なのだ。

 つまり、アメリカという国は自分たちが生存するために戦争を必要しているという指摘であり、アメリカの歴史がそれを証明しているように思う。

 

・「第二次世界大戦以降、米国以上に戦争を行ってきた国はない。それどころか、どれだけたくさんの国が侵略されたことだろうか。「テロとの戦い」や「人権の保護」という、全く嘘の口実のもとに、何百万人の命が破壊されたことだろうか。」

 このことを知らない、あるいは認識したがらない日本人が、残念なことに日本では多数派を占める。

 

・「もしプーチンが1990年代にエリツィンが行ったように、アメリカの資本主義的搾取のためにロシアを開放すれば、プーチンは突然ワシントンとそれに従順なマスメディアに受け入れられ、賞賛されるようになることは間違いない。

 現在、エリツィンがはまったのと同じ罠にかかっている、軽薄で悪徳な日本人政治家がいる。それはもちろん岸田総理になる。

 

・「権力者たちは、国民への説明責任を果たすことを恐れており、国民の抗議を抑圧し、自分たちの組織的犯罪を隠蔽しようと懸命に努力している。」「アメリカの権力は外国に対する侵害だけではない。反民主主義的な結果として、窮乏し変形した社会に苦しむ自国民に対する侵害なのだ。

 現在の日本はこのようなアメリカの後追いをしている。大変に恐ろしい。ただし、それについても、気がついているのは少数派だろう。

 

・「戦争を好む寡頭資本主義体制を排除し、他のすべての国々と真の意味での国際主義を共有する労働者主導の政府に置き換える

 このような意見を持てることが、欧米と日本との一番大きな違いではないかと思う。欧米は過去において、実際にそのようなことを行った経験がある。それに対して、日本はその経験が一度もない。よって、日本は欧米に追随するか、天才が日本流の政治変革の方法を編み出すしかないように思える。