アメリカがなかなか戦争をやめようとしない。ロシア・ウクライナ紛争など勝敗が決している戦争もやめようとしない。イスラエル・パレスチナ戦争も、世界中でジェノサイドをやめるべきだと非難轟々であるにもかかわらず、やめようとしない。

 情報に疎い日本人の中には、ロシア・ウクライナ紛争やイスラエル・パレスチナ戦争がアメリカの戦争ではないと勘違いしている人もいるようだ。両方ともアメリカの仕掛けた戦争なのにそれを知らない。このあたりは、新型コロナ用ワクチンと同じで、テレビや新聞などのマスメディアを信じている人はきれいに騙されているようだ。歴史を振り返れば理解できるはずだけれど。

 どうなのだろう、真珠湾攻撃はアメリカの挑発に乗せられた愚かな日本が先制攻撃をしたものであることを、どのくらい多くの人が理解しているのだろうか。それとも、昔のように、日本は宣戦布告もせずに侵略のために真珠湾を急襲したと、騙されたままの人が多いのだろうか。その他にもベトナム戦争、イラク戦争などが、戦争をしたいアメリカの仕組んだ罠だったことを知らない人が多いのだろうか。

 トンキン湾事件は1964年に北ベトナムのトンキン湾で起きた。「8月2日と4日に、北ベトナム軍の魚雷艇が米軍の駆逐艦に攻撃を仕掛けたというもの。米国は、この事件をベトナム戦争へ本格介入する口実とした。後年、4日の事件は米国による捏造であることが判明した。 」(デジタル大辞泉)

 要するに、ベトナム戦争を本格化させたいアメリカが、自国の艦船が北ベトナムに攻撃されたと嘘を言い、それによってアメリカ国内の世論を盛り上げて北ベトナムの空爆を開始したというものになる。

 イラク戦争は、ご記憶の方も多いと思われるけれど、2003年、アメリカとイギリスが、イラクは大量破壊兵器を所持して国際テロを支援しているなどのデマを流し、それを理由にイラクに攻め込んだものだ。しかし、戦争後にどれだけ探しても、イラクに大量破壊兵器があったという証拠が見つからなかった。つまり、濡れ衣で戦争を仕掛けたのがイラク戦争になる。よくまあそんなことができるものだ。

 興味深いことに、当時日本の小泉内閣は、フランス、ドイツ、ロシア、中国をはじめ多数の国々が反対を唱える中で、この侵略戦争を支持した。ちなみに、1990年に行われた湾岸戦争でも、アメリカは全くの捏造である「ナイラ証言」によってアメリカ世論を盛り上げ、クウェートに侵攻してきたイラクを攻撃した。

 ご存知ない方もおられるかもしれないので、ロシア・ウクライナ紛争に言及すると、ウクライナの東部に住んでいたロシア系住民を、ウクライナ政府が虐殺するようになり、ついには大掛かりな攻撃が予定されていたところにロシアが助けに入ったのが、2022年からのロシア・ウクライナ紛争の始まりになる。

 ただし、それだけではない。ウクライナがロシア系住民の虐殺を始めたことには経緯がある。もともとウクライナは、ロシア語を話す東部のロシア系住民と、ウクライナ語を話す西部の親欧米派に割れていた。そこにアメリカが目をつけて介入し始めたのが、そもそもの事の始まりになる。火種があれば、まるでハゲワシかハイエナのように嗅ぎつけて火をつけることがアメリカの得意技であるのはいうまでもない。

 遡ると2013年に、ウクライナの親露派ヤヌコビッチ大統領が、アメリカにテコ入れされた親欧米派によって追放されたのだが、東部のロシア系住民は納得せずに、ロシアの力を借りて抗戦するようになった。この中でロシアはクリミア半島を自国領へと併合している。

 さらに、東部ロシア系住民はウクライナからの分離運動を始め、ウクライナはそれを鎮圧できずに内戦が続いた。そこで、2014年にドイツ・フランスの仲介によって、ロシアのプーチン、ウクライナのポロシェンコ両大統領も合意しての停戦合意が成立した(ミンスク合意)。しかし、ウクライナは東部住民への攻撃をやめず、大掛かりな攻撃を始めようとしていた時に、ロシアがウクライナに攻め込んだ。実質はロシア対アメリカの戦争になるが、アメリカは直接手出しをせず、ウクライナという傭兵を使う形になっている。

 この伏線は東西ドイツの統一にまでさかのぼる。1990年に東西ドイツが統一されたが、その際アメリカは当時のソ連に対して、NATOを1インチたりとも東に拡大しないと約束している。しかし、実際にはNATOが次第に拡大され、終にはウクライナもNATOになるかもしれないという中での今回のロシア・ウクライナ紛争になる。少し長くなったが、要するに、いつものようにアメリカは汚い手口を使って他国を戦争に巻き込む国であることを示している。

 世界で戦争が起きるとすれば、それはアメリカが仕組んだ戦争であると考えてほぼ間違いはない。アメリカが関与していない戦争もあるのかもしれないが、もしあったらそれは例外になる。アメリカはとにかく戦争が好きで好きでたまらないのだけれども、その理由はなんだろうか。

 一つは、自分たちが被害を受ける心配のないことが挙げられる。それは地理的な条件による。どこの国にとっても、アメリカに攻め込んでいくことは容易ではない。可能性があるとすれば、カナダかメキシコになるだろうが、カナダは同盟国であり、メキシコにはそれだけの軍事力がない。よって、どこの戦争であってもアメリカは高みの見物でいられる。

 もう一つは、戦争が莫大な利益を生むことだ。アメリカはじめ西側諸国はウクライナを支援するために10兆円を超える金を投じているが、それはウクライナに行くのではなく、ほとんどがアメリカに落ちる。アメリカに落ちてどうなるかといえば、軍需産業に渡ることになるが、もちろんそこには斡旋料、仲介料、顧問料などとして数々の中抜きが生じる。キックバックも行われる。それによってアメリカ全体が潤う。日本なども相当の金額を援助しているが、その実質はウクライナへの支援ではなく、アメリカを肥やすための金と考えた方がいい。

 戦争はアメリカにとっては、ちょうど政治資金パーティのようなものだと思えばいいだろう。他国から金をどんどん集めるが、それは政治資金パーティで貧相で少量の料理が出されるのと同様であり、軍備に使われるよりもアメリカが自分のポケットに入れる金の方がはるかに大きい。アメリカの引き起こす戦争は、アメリカ版政治資金パーティであり、アメリカ版裏金作りといえる。

 アメリカの軍産複合体は、戦争をすればするほど利益が得られる構図になっているが、それは一般のアメリカ国民にとってもいい話で、戦争をすれば景気が上向き、収入が増えるということになるから、次々と戦争を起こせばいいと思っている。バイデンばかりが、あるいはアメリカ民主党ばかりが悪いのではない。戦争に利益を求めようとするアメリカ人全体が悪い。

 アメリカが戦争をすると日本はどうなるか。大損をする。経済が悪化するばかりではなく、アメリカに金を巻き上げられる。安全保障も危うくなる。すでにご存知のことかと思うが、アメリカはもう中国やロシアと戦争をしても勝てる軍事力を持っていない。

 それゆえ、万が一日本が中国やロシアなどから攻め込まれても、助けるつもりなど端からない。助けるつもりがないばかりか、日本に戦争をさせて、つまり、日本をウクライナのように扱って、それで大もうけしたいというのがアメリカの軍産複合体の狙いになる。お分かりになるだろうか。アメリカは日本を守るどころか、金儲けのために日本に戦争をさせたがっている。

 しかし、アメリカの提灯持ちをするしか能のない日本は、軍事力を強化するなどして中国やロシアに敵対的な行動をとっている。その反作用として嫌がらせをされ、安全を脅かされ、貿易での不利益も被るなど何もいいことがない。何もいいことがなくても、アメリカへの上納金は増やされるばかりだから、この先も税金がどんどん上げられる。

 この構図から抜け出すのは大変に難しいが、今年の大統領選挙でトランプが勝つと風向きは変わるかもしれない。前回大統領だった期間を見る限り、トランプは戦争をしたがらない大統領だった。戦争好きのアメリカとしては珍しい大統領だった。それゆえ、軍産複合体は今回もトランプには絶対に勝たせまいと必死になっている。

 また、仮にトランプが大統領になって戦争をしなくなっても、それはアメリカが変わったことを意味しない。次の大統領になったとき、あるいはその次の大統領になったとき、ふたたび戦争大好きのアメリカが出現する可能性は十分にある。

 それを食い止めることができるとすれば、現在のBRICSを中心とした非米諸国になるだろう。世界の大きな流れとして、アメリカはこの先衰退する一方になる。もう、世界の覇権を握ることはできない国になっている。反対にBRICSは経済力でも軍事力でもアメリカを凌駕するようになる。

 そのことを踏まえて日本の戦略を練っていかなければならない。現在の岸田政権のように、アメリカの提灯持ちをしていればいい、男めかけをしていればいいというような単純な外交をしていると、日本の未来は暗いものになる。