○もともと私は酒に弱い方で、晩酌が定着したのはよく覚えていないが40歳前後だった。今思うと、狭い家の中で妻子から姿を隠すというか、存在感を消すというか、うざったく思われずにいるためには、酒に酔って寝ているのが一番だったのかもしれない。言ってみれば家族思いの酒である。
○50歳代が一番飲んだ時のように思う。ビール大瓶1本では足りないが、2本あると嬉しいくらいの酒飲みだった。つまり大酒飲みではなく、酒の酔い方もよく知らないまま飲んでいた。外に飲みに行くのは嫌いで、特にホステスのいるような飲み屋が嫌いで、もっぱら家飲みだった。
○酒の種類としては何でも飲んだが、ワインだけはダメだった。今でもそうで、ワインを飲むと気分が悪くなる。添加物のせいかと思って、酸化防止剤無添加というワインを買ってみたが、やっぱり飲むと具合が悪くなる。味は嫌いではないが体質に合わないようだ。
○飲んでも一番影響がないのが焼酎である。それも一番味もそっけもない甲類と呼ばれる蒸留酒である。飲んで酔って、醒めておしまいである。体にも、頭(精神)にもこれといった変化を感じない。そんなわけで、最初にビールか日本酒を少し飲んで、その後焼酎を飲んで終わっていた。酒乱の気は全くなく、酔うと眠くなる方である。
○実は60歳頃から5、6年間、完全に禁酒していた。理由は自分でもよく分からない。今考えると暇でやることがなかったせいかなという気がしないでもない。それとも酒に飽きたのかな。あるいは酒を飲まない自由を行使したかったのかもしれない。
○酒を飲むと意外に時間潰しになる。酔うだけで体力も消耗する。飲まないと暇ができるから、何かすることがあるとき、あるいはしたいことがあるときには酒は邪魔である。酒を飲まない自由というのは、飲まないことで自分の自由な時間ができるという感じ方があったような気もする。飲んでいても自分の時間なのだが、酒に奪われる感じがある。
○ビールと焼酎は、酔う以外に心身への影響をそれほど感じられないのだが、日本酒とウイスキーは感覚に変化を与えるように感じられる。日本酒はダウナー系、ウイスキーはアッパー系である。私の知る限り、日本人の大酒飲みはたいてい日本酒を好む。ダウナー系だからヘベレケになるだらしない酒飲みである。
○私はこの、ヘベレケになるだらしない酒飲みというのが好きである。理由は多分、私が自分のだらしないことを気にしていて、もっとだらしない奴を見ると安心できるせいではないかと思う。酔ってヘベレケの人間を見ても、短気な私にしては不思議と腹が立たない。
○反対に嫌いなのは、マスクをしている人間である。などと書くと、今や全日本人を敵に回すようなものなのだが、いかにも「マナーを守って、衛生に気を遣って、人のためを考えているきちんとした人間」という思わせぶりな、それでいながらその実ときたら、何の効果もなく、不潔なものを顔にくっつけているだけというくだらなさ。「からっぽ みてくれ 上っ面 ごまかし まやかし」カッコマンの典型である。上は総理大臣から下はそこらの兄ちゃん姉ちゃんまで、日本人は全員カッコマンである。
○話が逸れた。ヘベレケに酔う人間には哀愁も感じられる。「そうだよなあ、人生酔わずにはいられないよなあ」と共感させるようなところがある。ただし、酒乱はごめんこうむりたい。逃げ出すしかない。
○私の場合、日本酒を飲むと弛緩していく感じがする。ゆるくなるのだ。体全体が緩くなり、腹具合まで緩くなる。便秘の時は日本酒だね、という感じ。腹が緩くなるくらいだから、頭も緩くなる。全然締まらない。ブログを書くのにも支障をきたすくらいの散漫な感じになってくる。
○そんなわけで、今までは積極的に日本酒を飲もうと思ったことがなかった。焼酎だけでは口が寂しいというか単調すぎるので、箸休めに飲むくらいの感じだった。ところが、つい先日一ついいことを発見した。体が温まり、手足が冷えないのである。
○冬の寒さには困っていて、湯たんぽが唯一のお友達状態だったが、ここにきてもう一つ、日本酒というお友達ができた。4、5日間にわたり1日1合くらい日本酒だけを飲んだところ、まず感じたのは朝目覚めるときになぜか体がポカポカしていること。そのうち、昼間も手足が以前より冷えないことを発見。
○ここ1週間のことだから、本当かどうかまだ確定させられないが、目立った変化である。それで思い出すのが「養命酒」。「つらい冷え症には「薬用養命酒」をおすすめします。」というあれ。養命酒は高いけれど、私の飲んでいる日本酒は米だけの超安物の酒。いいんだな、これが。北海道に春がくるまでのあと2か月余、今年は日本酒で乗り切ることができるかもしれないと思うと少し気持ちが楽になる。
○一方私がアッパー系と感じるウイスキーはどんな感じになるかというと、飲めば飲むほどシャッキリしてくる。キリッとしてくる。もちろん、酒だから飲むと酔うけれども、違いは醒めた後の感じ。日本酒が醒めた後も緩くなっているのに比べ、ウイスキーはキリキリしてくる。そこにコーヒーを飲むとギリギリするような気がする。
○この日本酒とウイスキーの違いは、ひょっとすると米と麦の違いかもしれない。そして、東洋と西洋の違いにまで拡大解釈することが可能かもしれない。米というのは実に優れた作物で、同じ土地の面積であれば、麦よりも人間を数多く養うことができる。よって、米と麦を両方栽培できる地域では米が生産されることになる。また、米を主食とする地域は麦を栽培している所よりも人口密度が高くなる。
○それに加えて、米の成分の中に対人関係を穏やかにするものが含まれている可能性もあるのではないかと私は思う。人口密度が高くなれば、どうしたって人と人との争いが増える。それを回避するために1番良い方法は、人々が鈍感になることである。
○ぶつかっただの、触っただの、近づいただの、見ただのをいちいち気にしていたのでは、人口密度の高いところでは暮らしていけない。米には人口密度の高さを成立させるための、人間を鈍感にさせる成分まで含まれているのかもしれない。あるいは人間の方がそれを消化して取り出すことを覚えたか。よってコメで作られた日本酒もダウナー系なのである。
○今回の新型コロナ騒動では、三密の回避やソーシャルディスタンスが叫ばれた。しかし、それは米食をする、すなわち人口密度の高い地域に住んでいる日本人の発想ではない。麦しか食えない、人がまばらにしか住むことのできない土地に住む欧米人の発想である。
○そして、米食によって人口密度の高い、密な生活を1000年も2000年も続けてきた地域では、対人関係が穏やかに、あるいは鈍感になると同時に、感染症に対して強くなったのではないだろうか。人口が密集していてざこ寝をしているような地域で、コロナのような感染症が猛威を振るうわけがない。そのような地域の人間はとっくの昔に抵抗力・免疫を身につけたからだ。
○三密だのソーシャルデイスタンスだのを口うるさくわめいていた小池都知事には、まず米食をすることからお勧めしたい。パンばかり食っていると、そういうヒステリックで物分かりの悪い人間にしかなれないからだ。そうそう、牛乳を飲む前にご飯を食べてはどうか。河野太郎にして同じである。
○また話が逸れた。ウイスキーはシャキッとする酒であるけれども、私がウイスキーを飲まなくなった理由は味が分かるようになった気がしたからだ。どういうことかというと、ウイスキーは高いウイスキーの方がおいしいと思うようになった。しかし、情けないことに、1本1万円も2万円も出してウイスキーを飲めるほどの給料はもらっていなかった。分不相応とういうことになれば私の場合自然と遠ざかることになるらしい。その点、日本酒は高い安いでの味の違いが私には分からない。焼酎も甲類に限っては味の違いなどないように思う。どちらも分相応の安酒である。気楽なものだ。
○ありがたいことに今回は、日本酒の効能を発見したかもしれない。しばらく日本酒を続けてみよう。冷え性とおさらばできるとしたら助かるのだけれど。
