表題は「文在寅は外交の天才」と書いたのではなく、「安倍晋三は外交の天才」と書いた。

昨日のBSフジ「プライムニュース」では、御厨貴(東京大学名誉教授)、山口二郎(法政大学教授)、田﨑史郎(政治ジャーナリスト)という3名の大家をゲストに招き、 安倍政権が通算で歴代最長政権になったことを受けて、その要因などを話題として取り上げていた。それなりに面白く見せてもらったが、その際取り上げられなかった重要な観点が一つあった。それは、安倍政権の外交である。あえて取り上げなかったのではなく、おそらく気がついていないのではないかと思う。

私は安倍政権が長期政権になり得た最大の理由は外交であると考えている。外交の力でここまで長期安定政権を作ったのは、内外を見ても安倍晋三以外にいないのではないだろうか。寡聞な私では思いつかない。

外交によって国内の政権支持率を高め、基盤を盤石なものにしようとする方向性は韓国ではっきり見られる。ご存知のとおり、韓国の歴代大統領は反日姿勢を強めることで自分の支持率をアップさせようとしてきた。また、アメリカでは戦争を始めると大統領の支持率が上がることが知られており、戦争は支持率アップの道具に使えると言われている。特に、大統領選挙の前の戦争は当選のために効果的であり、ことによると来年の大統領選挙前にはどこかがアメリカの攻撃対象になるかもしれない。イランや北朝鮮は十分留意すべきだろう。

話が少し横道にそれたが、日本は平和外交の国である。韓国やアメリカと違い、平和外交の国でどうやって外交によって政権支持率を高めることができるのだろうか。それは、以前日本の民主党が政権を握っていたときのことを反面教師として考えると分かりやすい。

私がかつての民主党政権時に危機感を覚えた一番の理由は、外交があまりにもずさんだったことである。アメリカからは「ルーピー」と馬鹿にされ、中国からは尖閣諸島に攻め込まれ(尖閣諸島中国漁船衝突事件)、また、反日デモの際に日系企業を破壊・焼討ちされ、韓国には奉仕したにもかかわらず裏切られる(李明博大統領の天皇謝罪要求)という状況で、このままでは日本が潰れるのではないかと暗たんたる気持ちになったものである。まさしく「悪夢のような民主党政権」であった。

これといったイデオロギーも金も権力も持たない平凡な一国民である私が、民主党外交の稚拙さに気づいて、民主党政権は金輪際御免であり、民主党には国を任せられないという感想を持ったのであり、多くの国民も外交を誤った民主党の支持をやめたと思われる。外交は政権維持の大きな柱になるのである。

そのような状況下で第2次安倍内閣が誕生したわけだが、安倍政権の外交が順調に成果を上げたということではない。民主党政権時のように日本が潰れるのではないかという恐怖はなくなったものの、慰安婦合意などは見ようによっては日本にとって屈辱的なものであるし、ロシア外交などにも力を入れているようである反面、成果は全く上がっていない。さらに、文在寅政権下の韓国との関係は悪化する一方である。

このような安倍政権の外交を見ると、昨日の「プライムニュース」で安倍政権が長期間に及んだ要因として外交が触れられなかったのも無理のないところがある。しかし、それでありながら安倍政権は外交によって確実に支持率をアップさせているのだが、以下それを説明する。

まず第一に安倍総理は外交に熱心である。総理自らあちこちに働きかけ、出向いて会談などを行う。そのため国民は諸外国との関係に目を向け、関心を持つ。国民の目が向けば報道機関が相手国の状況等についてより詳しく報道し、国民は一層確度の高い情報を手に入れる。


日本に嫌韓が浸透するようになったことを否定的に捉える報道機関も少なくないが、なぜ日本人が嫌韓になったかというと、それは一部ネトウヨのSNSでの書き込みなどではなく、安倍総理の対韓外交に応じてマスコミが熱心に報道したせいである。いくら韓国を貶めるつもりがなくても、単純な事実、あるいは韓国の擁護であろうとも、韓国を報道すればするほど韓国の反日姿勢は自ずと明らかになり、日本人はそれに気づかざるを得ない。その結果が嫌韓である。


例えば、安倍総理が北朝鮮の金正恩との日朝首脳会談について、前提条件なしに実現させたいと表明すると、それをマスコミが報道し国民の目が北朝鮮に向く。国民の目が北朝鮮に向いているところに、北朝鮮からは安倍総理や日本を愚弄する発信がなされる。日本人は北朝鮮がそういう国であることを改めて認識する。

例えば、安倍総理がプーチン大統領と度重なる会談を行う。どうやら通算27回会談したそうである。もちろん主題は北方領土返還である。しかし、ロシアはロシアである。うまく事が運ぶわけがない。丸山穂高議員が「戦争しないとどうしようもなくないですか」と思わず失言してしまいマスコミが大騒ぎする。しかし、同時に日本国民はロシアという国の腹黒さにもしっかり気がつく。

そうやって安倍総理が外交をしているうちに日本国民に分かってきたことは、日本が韓国、北朝鮮、中国、ロシアという敵国に囲まれていることである。これは安倍総理のプロパガンダではなく、実際にどこから見ても、つまり厳然たる事実を見ることによってそう思えてしまうのである。

日本が敵国に囲まれているというのは、いってみれば戦争をしているのに近い状態である。国民の危機感は高まり、一つにまとまろうとする。それが政権支持率の高さに反映されることになる。

その一方で安倍総理はアメリカとの友好的な関係を必死で構築しようとする。安倍総理が唯一必死なって行ったのがアメリカとの外交であるのはお分かりであろう。日本が敵国に囲まれているのを周知させるだけでは国民の不安が高まるだけであるが、それをアメリカとの友好関係で和らげ、安心感を持たせるのである。安倍政権への信頼感が生まれる。

以上のようにして敵国に囲まれている日本、そしてアメリカと友好関係にある日本、その情報を国民に知らせることで安倍政権の支持率が高くなり、長期政権が続くことになったのである。

かつての民主党政権は正反対であり、アメリカを敵国とし、韓国、北朝鮮、中国、ロシアと友好を結ぼうとしているように見えた。日本人は民主党が売国をするのかと勘ぐり、支持することをやめた。現在でも立憲民主党や共産党はかつての民主党と同じことをするだろうと思われている。それゆえ、間違っても、どんなことがあっても、野党に政権を渡すことはできないと国民の多くが感じている。

従来、外交は「票」にならないと言われていたように思う。政治家はどちらかというと外交には無関心で、それが外務省の横暴を許す原因にもなった。しかし、安倍総理は票にならないはずの外交をこれ以上ないくらい票にして選挙に勝ち続けた人であり、私が外交の天才と評するゆえんである。ある意味革命的ですらある。

来春には、中国の習近平国家主席を国賓として招くという。賛否両論ある。しかし、安倍外交という視点から見れば結果はどちらに転んでもいいのである。仮に、国賓として招いてはみたものの何一つ成果がなく、尖閣諸島などで日本に対して横暴な態度をとり続けるなら、日本人は中国のイメージを一層敵国として強固なものにする。そしてそれは、自民党政権への凝集力を高め、中国に親和的な野党の支持をますます失墜させる。

反対に、中国が日本に対して融和的な姿勢を見せるようになれば、それは安倍外交の成果となって支持率に、そして選挙の票として跳ね返ってくる。

以上「安倍晋三は外交の天才である」という考え方に納得していただけただろうか。