本牧読書日記。「シン・中国人」(続)。
著者を紹介しよう。北京在住26年。米国で修士号修得後、北京に国費留学、JICA、北京日本大使館勤務を経て共同通信等日本ジャーナリズムや中国の雑誌など幅広く活躍するライターである。北京で家庭を持ち子育てをしているし中国農村調査経験も有する。何よりも中国の人々を愛する優秀な日本女性であることは初めて著書を読んだ僕でもよく分かる。やや大袈裟に書いた部分もあるかも知れないが刺激的な本である。他の章は*世界一のジェネレーションギャップ(生活・金銭感覚・結婚観)*データで見る中国の恋愛・結婚・離婚と出産*北京20代・30代の恋愛観と結婚観(インタビュー)*Z世代の恋のカタチ*ファミリービジネス化する結婚(結納金は年収の10倍以上)*中国の住宅事情(住宅私有化の波が呑みこむ少子社会)*恋愛は「闇」でする悪いこと?*細くなった一人っ子世代「気まずさ」に悩む若者。……内容は推察して貰えるだろう。
僕の感想を三点書いてみる。①繰り返しになるが経済中心に超高速発展した為に生じた異常な「ヒズミ」である。それが恋愛・結婚に現れる余りにも割りきった打算、潤いの無さ、人間性の欠如である。日本でも「マッチングアプリ」の時代になった。それともまた違った異次元の世界に見える。②国家の人為的政策が「ヒズミ」の元凶となっている場合も多い。現代の制度とも思えない戸籍法、一人っ子政策と人口減少・老齢化に慌てて急変させた多子への変換。本来国有である不動産を財政上の理由で実質私有化させ、猛烈な勢いで住宅を建設、しかも不動産市場未熟のままに強行した為の不動産価格の異常な高騰等々である。各政策にはそれなりの理由があってしたことだろう。日本だって異常な高騰があった。しかし結構長い期間に資本主義の「見えざる手」によって何とか平静化した。中国の場合は全体国家の絶対権力の効率のよい一律性が逆効果を拡大させて、猛スピードの巨艦が急角度の旋回で傾くように、あるいはモルヒネを過度に投与したように、大混乱のヒズミを結婚・恋愛という純粋に私的な分野まで及ぼしているということだろう。最近の例はコロナ政策に端的に現れている。③は結婚・恋愛に「親・家族」が必ず関与していることである。共産化中国の初期に否定されたいわば中国の「古層」の復活である。ファミリービジネスとして本書の全章に渡って必ず「両親・家族」が顔を出す。これは日本でも皆無ではない。しかし中国の具体例をみるとやはり異常と思わざるを得ない。以上の三点は独立した要因ではない。三点共に常に絡み合って結婚・恋愛のみならず進学・就職その他全ての私生活に影響している。そんな感を強く覚えたのである。
「平等と共産主義の理念」はどこへすっ飛んでしまったのだろうか?残っているのは党独裁の強権と帝国主義的世界進出のみである。「資本主義の矛盾」は共産主義の常套句だが、それ以上の「矛盾」を将来的にも抱えていくことになりそうである。それが限界点に達した時に世界はどのように反応するだろうか?そして本書に書かれている「徹底的に実力を問うメンタリティー」を持つ中国人民はどのように反応し行動していくだろうか?海外に逃れる「潤」の人々ばかりではないだろう。様々な将来の中国を想像させる本書であった。ところで、タイトル「シン・中国」の「シン」とは何を意味するのであろう。「新」か「真」かあるいはもっと違った「シン」なのか。興味深いのは内容ばかりではない、タイトルまでも面白い。
画像は本牧・アメリカ坂のある民家。僕はこの家をひそかに「風見鶏の家」と呼んでいます。
画像を入れるとその分文字枠が拡大することがわかったので、これからの(続・続々)にも関係のない画像を入れることにしました。
仕様変更後初めての投稿で、どんな画面となるか心配です。
ただ妙なブログ画面となっても修正するテクニックも再作成する気力もありませんので、お許し下さい。