小林 太樹 『風・遊・記』 ショートシナリオストーリーブログ   -45ページ目

『 オヤジバンド 』

山々に囲まれたのどかな田園風景。


青空のもと、市民会館のような建物。


ホールではライブが行われている。


中年男4人組のロックバンド。


ボーカルの男が曲の合間に語っている。


男 「・・・この4人で、高校ん時の文化祭に一回限りのライブをやりました。

   熱くて、ワクワクして、もう楽しくて・・・最高でした。

   それから30年、それぞれの人生を生きてきて、

   想い出を今一度、自分たちの手で甦らせようと決起しました。

   ・・・今、感じています。まだまだいける、大丈夫だと。

   何よりも、やりたいことをやって心の底から楽しめることが、

   こんなにも幸せなんだと・・・つくづく想います。

   本当に、すべてに「感謝」です。

   ありがとう!

   さあ、みんなで楽しみましょう!盛り上がっていきましょう!

   次の曲は、俺たちが過ごした青い時の応援歌です。

   今でも励まされている想い出の一曲です。


♪ つっぱることが男のたったひとつの勲章だって この胸に信じて生きてきた・・・♪


オヤジバンドのメンバー4人がひとつになる。


♪ 泣きたくなるようなツライ時もあるけど いつも俺たち頑張ってきた・・・♪


4人それぞれが「夢中」を楽しんでいる。


♪ ガキのころ路地裏で見た 夜空にキラめいた 流れる星を見て 誓った想いを忘れちゃいないぜ・・・♪


いつの間にか観客とひとつになっている。


♪ つっぱることが男のたったひとつの勲章だって この胸に信じて生きてきた・・・♪


オヤジバンドが弾ける。


観客も負けまいと奮い立つ。


会場全体が熱気を帯びていく・・・。


山々に囲まれた田園風景が青空に映える。


(ナレーション) 一生、青い時間。











『 我が春祭り 』

春の訪れを感じる気持ちのいい青空。


桜が開花している。


パソコンを見つめている男。


YouTube に夢中になっている。


楽しそうに・・・なつかしそうに・・・。


急にカレンダーを見つめる。


カレンダーから目を外し、ため息をつく男。


男 「無理か・・・・・」


立ち上がり窓に向かう。


青空を見上げる男。


男 「もう・・・20年以上経つのか・・・」


(回想)


満開の桜が咲き誇る広い神社の境内。


豪華絢爛、華やかな化粧屋台を大勢の男衆が担ぐ。


その中心で着物姿の若い男が指揮を執る。


若い男の一声で、男衆の力がひとつになる。


天高く差し上げられた大きな化粧屋台。


見事な光景。


必死に掛け声を出し続ける若い男。


(戻る)


青空を見つめる男のすがすがしい表情。


男 「あー、行きたいなー・・・」


ふっと微笑む。


青空には真っ白な雲がゆっくり流れ、川沿いの桜並木では人々が賑わう。


その中で、まだ蕾のまま花をつけていない桜の樹が、存在感を放っている・・・。


(ナレーション) いつか・・・ふるさとの春祭りへ












『 歩けば 道 はできる 』

青空のもと、一本の道が続く。


ひとりの男が歩いている。


ゆっくりと前へ歩みを進める。


遠くには山々が広がり、近くには川が流れる。


一歩また一歩と、歩いて行く男。



空が曇りはじめる。


男の歩みが戸惑いをみせる。


じっと真っ直ぐ先を見つめる男。


立ち尽くす。


目の前に道がない。


大きな山が立ちはだかる。


男、山を見上げる。


男 「・・・・・」


男の表情がわずかに微笑む。


一歩、前に踏み出す。


立ちはだかる山へ向かっていく。


慎重に、一歩ずつ、坂道を進む。


その男は一点の曇りもない、潔い表情。


まるで楽しんでいるかのように・・・。


前を向いて、歩く。



男、ふと何かに気づき後ろを振り返る。


驚く。


道が出来ている。


そして人々が歩いている。


笑顔で・・・。


男 「・・・・・」


その光景に見とれている男。


突然肩をポンとたたかれ振り向く。


人 「さあ、一緒に前に進みましょう。」


いつの間にか人が集まっていた。


男 「あっ、はい・・・」


男は再び前を向き、歩み出した・・・。


(ナレーション) 

歩いていけば 道 ができる。 そして 人 がつながっていく。