急行【高千穂】 | こころ豊かに

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少々のことはボヨヨーンとはね返す “丸い大きなふうせん玉” のような 豊かな心 の持ち主になりたいものです。

 高1の夏休み、当時祖父母が住んでいた鹿児島まで、急行『高千穂』の普通車自由席で行ったことがあります。日豊本線周りで東京駅から西鹿児島駅(現鹿児島中央駅)まで約28時間の旅でした。

 列車は、背板が木製の4人掛けのボックス席で、エアコンも付いていないこげ茶色の旧式客車。節約旅の大学生、お盆で家族の元に返る単身赴任(出稼ぎ)の人が多かったように記憶しています。見ず知らずの4人の相席、最初はお互いを探るようにして、そして微妙な距離感で展開していく会話は結構楽しいものでした。全線を乗ろうとしている高校生は“会話の糸口”には絶好だったようで、メンバーが替わる度に「君、どこまで行くの・・・、鹿児島まで、エッ東京から・・・」と話しかけられました。今はどんな話をしたか忘れてしまいましたが、「頑張って・・・」とアイスクリームや冷凍ミカンをくれた大阪から柳井まで相席した漁師の方のことは覚えています。

 路線地図を片手に変わりゆく車窓を眺めながら、列車の振動、音に身をゆだねた心地よい28時間の列車旅。今ではもう味わえない贅沢な時間でした。