悪寒の中。朝を迎えた。とてもじゃないけど大分の国東半島から山口県の徳山に渡ったところで何も出来そうに無いぐらい具合いが悪い。
ここに連泊するか?部屋は空いてそうだし。
でも1日寝ても回復しないかもな。
取り敢えず体力つけなきゃ。朝食付きだからレストランに向かった。全く食欲も無いからパンとかコーヒーぐらいなら食べれるかも…。
レストランに向かうと部屋事に朝食が用意されていた。
自分以外にはお二人様が二組泊まってたようだ。
ビジネスホテルの朝食バイキングみたいのを予想してて…少しだけ自由に貰おうかと思ったら…。
こんな時に限って和食膳的な…!!
左奥の鍋は味噌汁。右奥の土鍋プレートにはベーコンエッグ。
さらにサラダバーが付いていた。
無理だ!
ある意味。このホテルは部屋の広さといいオーシャンビューだし温泉だし朝食もちゃんとしてて6336円は良心価格なんだけど…。
すまん…。頑張って食べたんだけど…。
だるくて味も良くわからないし。
サラダバーは一切取りに行けず。
完食出来ないまま部屋へ戻る…。
ぐったり。
虚ろな頭で考えろ。
今日も雨予報だし徳山に渡ってもきっと雨だ。
この体調で野宿地を探し雨の中テントを張るなんて無理だ。
徳山に渡って体調不良のままビジネスホテルに泊まるのも、雨の中、何の為の移動かわからない…。
徳山に渡り気の向くまま走れる気がしない…。
かと言ってここに留まるのも宿泊費もかさむし…連泊しても回復しないかも…具合いが悪いまま何連泊もするのは得策では無い。
まだ横浜は遠いな…うちに帰ってゆっくり寝たい…。
!!
そうだ!!北九州まで走り去年も乗って帰った東京九州フェリーがあったんだ。
新門司港発23時55分。
横須賀着が翌日の20時45分。
今日の深夜便に乗り込み。ひたすら寝てる間に明日には帰れるぞ!
これしか無い。
さっそく新門司のフェリーターミナルに電話するも繋がらないね。
横須賀のフェリーターミナルにかけたら繋がった。
なんとかベッドを確保。バイクと人で26000円は安くは無いけどそんな事を言っている場合じゃない。
帰れる…。
後は北九州まで気合いで走るだけだ!!
ドラッグストアで気休めの液体風邪薬を買ってその場で飲んで走りだした。
すぐに雨がパラつき小雨となり国東半島の山越え時は濃霧となる。
試練だな。前を走る車に先導されるかの様に濃霧を抜ける。
まあ深夜便だしゆっくり走ろう…。時間は有り余る。
かなり身体がだるいが体温を計ったら負け。
感覚的には38℃以上は有るかも…。
なぜだかバイクに乗ってる時は気が張るのかシャキっとする。
こんな時はかつてもっと辛かった旅を思い出せ。
骨折したまま3000キロ走った事だってあったじゃないか!
俺なら走れる。
自分を信じろ!
もう若くは無いけどね…。
ゆっくり走って来たけど15時前にはフェリー埠頭の手前の小倉へ入った。
深夜まで漫画喫茶で寝る事に。
何が辛かったかって漫画喫茶なんて普段来ないからスマホでQRコード読んで会員登録が必要とかで、必要事項を打ち込んだりパスワード設定したり受け付けするのが大変だったよ。
具合いが悪い時に難しい作業だ…。
気長に教えてくれたお兄ちゃんありがとう。
飲み物だけ取ったら。
後はひたすら寝る。
短い周期の悪夢にうなされながら。何度も同じ夢を見る。寝てるのか?起きてるのか?
約7時間後…アラームが鳴ったもうすぐ22時。
そろそろ行こう。
料金は2090円だった。もう少し高いのかと思ったらこんなもんなんだねえ。
寝たら復活したかと思いきや体調は更に悪化してるな…。
フェリー埠頭迄の30分がなんて遠く感じた事か。
到着するとライダーが既に並んでた。
今は誰も話しかけて来ないでね…
自分と戦っています…
ヨロヨロと歩き受付に向かった。
予約番号を告げて料金を支払いチケットを貰ったら出来るだけ人から離れたベンチに座り、バイク積込みまで灰となる…。
アナウンスがかかったなあ。
ヘルメットを持った人達がバイクに向かったなあ…。
ギリギリまでここに居よう。
待合室で最後のライダーとなりやっと重い腰をあげた。
バイクに戻ったら先頭から積込みの移動が始まってた。
ギリギリセーフ。
こんなに荷物積んでるバイク俺だけだ。
視線を感じるが誰も話しかけないでくれ…
今はうまく対応出来ない失礼なライダーになりそうだから…。
いち早く車両甲板を後にして階段を上がり部屋に案内されベッドに倒れ込む。
良かった向かい側に人が居ない。
後はひたすら寝るのみだ。
エンジンの振動がある意味心地よかった。
どうやら九州で憑依された悪霊を振り切ったのかも…。
翌朝になるとだいぶ楽にはなっていた。
今日も雨。
一気に帰るって選択は正しかった。
昼になりやっと食べ物を口にする。
思えば昨日朝食を食べてから飲み物ぐらいしか口にして無かったな…。
レストランで食べた梅シラス蕎麦。
大根おろしが酷く苦かった。もしかしたら味覚障害かも…。ちっとも美味く無かったけどなんとか完食。
15時半…。もう御前崎沖迄来てる。
相変わらずこのフェリーなんと言う速さなんだ!
有り難いよな寝てても帰れるんだから。
少し動ける様になって船内をウロウロ。
♪「いの〜ちかけてと〜ちかったひから〜すてきな〜おもいで〜…」
微妙な歌声が聞こえる。
ロビーの大画面。誰も見て無い映画の中で女の子が歌ってた。
♪「あのとき〜おなじはなをみて、うつくしいといったふたりの、こころとこころが〜」
暫く見てたよ。
吃音の女の子が歌う不器用でたどたどしい青春群像。
なんだか座って見てたら疲れて来てまたベッドに戻り眠る。
ラストはどうなったんだろ。
次に起きたらレストランの夕食営業が始まっていた。
ここで食べて帰ろう。
一ヶ月留守にした家に帰っても冷蔵庫には何も無いし。
フェリーの割高カレー1300円…。
本調子じゃないから美味くないのか。
元々美味くないのか…。
本当に自分の味覚が正常では無い気もするし。
ごめん。くまモン。牛乳飲めないんだ!
勿体無いけどね…。
そしてそして20時半。無事に横須賀着岸!
帰って来たな。
下船時は車が降りてから、この待ち時間が長いのは去年の帰りで知ってたから慌ててヘルメットを被らなくても大丈夫。
ぼーとする頭で待ってたら。
近くに居たスーパーテネレ600のライダーが立ち転けしてて人が挟まった状態で起きられないでいる。
係員と近くのライダーが起こそうとしてるけど持ち上がらない。
とっさに体調悪いのに俺も手伝って起こした怪我は無かったみたいだけど酷く落胆してたな…どうしてそうなった?声もかけられない程。落ち込んでる。バイクも大丈夫そうだけどな。
いろいろ起きるよね。それが旅だよ。
やっと下船。
ここから道に出る迄の渋滞がまた長い。
やっと国道16号に出て一ヶ月ぶりの懐かしの横須賀を抜ける。
そして21時20分遂に帰宅!!
51歳の28日間に及ぶ放浪記が終わった。
一ヶ月も旅してたのに走行距離がたったの
3632キロ。
この日から俺は4日間程体調が悪くて寝込んでた。
そして旅から帰って来て二ヶ月あまり…。
遂にブログを書き切った。
なぜだか家に帰って来た日よりやりきった感が…。
あ〜終わってほっとした。
新シリーズは51歳おっちゃん再就職への道!はたぶん始まりません。
暫くブログも休むかも…。
嗚呼。
燃え尽き症候群。
完。