成川渓谷キャンプ場で朝を迎えた。
ガスバーナーで湯を沸かしコーヒーに菓子パンと言ういつもの簡単な朝食を食べたら出発しよう。
朝から焚き火しないと早く出れる。
出発したらまだ７時過ぎだった。
山間の狭い道を走り抜け下界に降りて来た。
土佐街道。国道320号に出たらずっと圏外だったスマホがやっと息を吹き返した。
一晩スマホが入らないだけでも不便さを感じたな。
昔はこんなもん無かったのに…。
今日はいよいよ四国とお別れ。
佐田岬半島から国道九四フェリーで大分へ渡る予定だ。
いよいよ九州なんだけど…天気は下リ坂。
昨年秋にも行った九州なので気負いは無い。
宇和島市街から国道56号に出て西予市を抜け県道25号で八幡浜市方面へ走る。
なんだ！マンモス？
凄い！
藁で作ったマンモスの親子が闊歩してる。
良く作ったねえこれ。
藁の質感でマンモスを上手く再現してる。
そのまま走ると八幡浜市に出た。
まだ９時過ぎだけどお腹空いて来たな。
「すき家！」
旅も二十日目。そろそろチェーン店の味が恋しくなって来た。
牛小鉢ベーコンエッグ朝食。520円。
この値段で食べれるんだもんなあ…
何だかんだ言ってもすき家って凄いよねえ。
そして久しぶりだと余計に美味い！
そのまま佐田岬半島に入り走る。程なく現れる三崎港からフェリー乗る予定だったんだけど。
四国最西端の佐田岬灯台へ行かなくても良いのかと？自問しながら走る。
まあ良いか行かなくとも昔行ったし。などと思いながら走って居ると荷物満載の野宿装備のライダーが停まってたり。
これまた荷物満載のチャリダーが道に座り込んで休んでたり。本気の旅人が四国最西端を目指してるんだなと思ったら昔の自分を思い出した。
30年前。もう家を出て５ヶ月目ぐらいだったか。だらだら長い佐田岬半島を走って佐田岬灯台を見に行ったっけ。
30年前もこんな天気だったかも。
ちょっとどんよりしてて肌寒かった気がする。
日本一周５ヶ月目で、もはや好奇心すら摩耗してた。
バイクもボロボロで膝が破れたジーパン履いてさ。
腹がへったら荷物から食パン出してマヨネーズつけて囓りながら走ってた。
何の為に走ってたんだろ。
日本を走破したい！日本一周を走った漢になりたい！何かを成し遂げる達成感が欲しい。
そんな気持ちで走ってた気がする。
今はなんで走ってるのか？
なんとなく…。
仕事辞めちゃった勢いで…。
放浪に理由などは無い（笑）
あの頃を思い出したらなんだか熱いものを少しだけ思い出したね。
まだ僅かに残ってた熱い思い。くすぶっていた炎が突然佐田岬を目指しはじめた。
「行くぞ！30年ぶりに！」
三崎港に入るカーフェリーかな。
ちょっとした思いで岬の先端を目指さなければあの便に乗ってたのかも…。
当時はこんなに風力発電は無かったような…。
佐多岬までがだらだら長かったのは覚えてたけど、だんだんと道が狭くなり当時もペースがあげられ無かったんだな。
なんだか今にも雨が降り出しそう…
佐田岬って最後はどうなってたっけなあ。
この先、更に道が狭くなり信じられ無いほどゆっくり走る車に追いつく…。プリウスかな。
時速15キロ出て無いぐらい。狭いから抜くに抜けず我慢しながらついて行く。
抜きたい…。
道譲って…。
テレパシーは届かない…。
だらだら走りながらプリウスと同時に佐田岬灯台手前の駐車場に到着。
プリウスはおじいちゃんの一人旅だった様だ。
と。ここで雨が降って来た。しかもかなりの強風。傘もさせないほど。
ヤバい！！
走ってトイレに逃げ込む。
プリウスおじいちゃんも降りたけどすぐ車内に逃げ込む。
「降って来ちゃったねえー！」
トイレの軒下には雨宿りするチャリダーの若者も…。電動ママチャリでどこから来たんだろ。やけに軽装だし。
ここから徒歩1.8キロかあ…。
もはや暴風雨となりつつあるし。どうしよかと考えてたら電動ママチャリの若者は合羽を着込むと遊歩道へと消えて行った。
アイツ行ったか…。
プリウスおじいちゃんは早々と諦めて引き返して行く。
此処まで来たけど俺もやめておこう。
遭難しかねない程の暴風だしね。
若い頃には制覇してるから、まあバイクで来れる最終地点迄は来たって事で納得しよう。
合羽を着て長靴も履いて引返す。
呆気なく僅かに残ってた熱い炎は雨で消化された様だ。
佐田岬灯台に行かないなら無駄に走った感も…。
やっぱりあの頃には戻れ無いんだよ。
５分も走ったら超低速プリウスおじいちゃんに追い付く。やれやれ。
絶対に譲ってはくれないから一瞬広くなった僅かな区間で抜く。良かった〜抜けた。
それにしても雨脚が強く強くなって来たぞ。
三崎港のフェリー乗り場に着いたら先着ライダー１名。
さっきこの人、停まってた人だな。
多摩ナンバーだ懐かしい！若い頃は俺の地元だったし。久しぶりに関東ナンバーを見た。
バイクはこれは何だ？YAMAHAのMT07とか…？
ライダーの姿は無い。
チケットを買って待合室で待機。乗船時間になったのでバイクまで戻るとライダーが戻って来てた。
60代半ばぐらいかなあ…
良く喋るおじちゃんだ。
楽しい人なんだけど。
勢いが凄い。少しタジタジ気味…。
おじちゃんは大分に渡ったら別府方面でビジネスホテルを予約したとか。そうだよねえ雨だしね。
俺はどうしよう…フェリーに乗ってる間に宿を探すかな…。
積み込みが終わり一番乗りで客室に上がる。
おじちゃんは隣に来るんだろうか…。
良く喋るおじちゃんだったから。
フェリーに乗ってる間は休憩したいなあ…（笑）
おじちゃんも上がって来た。
おじちゃん「これ、席とか何処座っても良いんだよねー！」
私「大丈夫だと思います！」
おじちゃん反対側の窓際に行った。
ヨシ！休憩だ（笑）
天候が荒れて来たね。
今日は、これから先が思いやられるな。
１時間ちょっとの航海で対岸の大分県佐賀関港へ到着予定。
あっと言う間に対岸だ。
着いてからのプランもまだ決めて無いのに。
佐田岬半島よりは少し雨が弱いかも。
雨止んだ？
何となく明るくなって来たような。
佐賀関港に入ったね。
なんだか古そうな製錬所を横目に見ながら港内へと進む。
あれは国道九四フェリーの「遊なぎ」かな？
順調に定刻13時40分に到着。
雨は上がっていた。
これなら何処かでキャンプ出来るかも！
フェリーから降りておじちゃんは別府方面の右へ俺は取り敢えず左へ。最後は手を振って別れた。それぞれの旅へ出発だ。
すぐ現れたファミリーマートでホットコーヒーを飲みながら作戦会議だ。
「熱っ！」 やばい！コーヒーの蓋がきちんと閉まって無く上着に殆どかけちゃった。フェイクレザーの革ジャンだったから染みなくて火傷は免れたけど…九州の洗礼を受けたな。
さてキャンプするにしても今日は確実な場所を探したい。
大分のキャンプ場…。あっ！去年の秋に泊まった原尻の滝の近くにある辻河原公園（無料キャンプが黙認されてる）はここからどれぐらいだろ。
65キロぐらいか…。行けるな！ここを目指そう。
今日からは時間切れで不完全燃焼で終わった去年の秋の九州旅をやり直そう！
もう今回は時間の制限は無い。
気が済むまで九州を走ってやる！
そうと決まれば出発だ。
わざわざ海岸線で写真を撮ってたら雨がまた降り出した。
慌てて合羽を着こんだけどここからの海岸線の道が暴風に！
国道217号線を臼杵市方面へ走るも飛ばされ無い様にタンクに伏せたほど。
四国カルストの暴風を思い出す。
バイク旅も命懸けだね。
内陸に入ってからは土砂降りに…。
あ〜あ。この土砂降りでキャンプ場目指してもテント張れないかもだけど他にあても無い。
今から宿を探すのも面倒なので行くだけ行ってみよう。
ひたすら雨の中走る。
雨の中立ち寄ったセブンイレブンでビールと食糧を買うのも一苦労。
買った物を仕舞う為に荷物をほどくのも土砂降りの中だ。
走り出したけど水溜りを走ってる様だ。
前も良く見えない程。
それでも行った事がある場所だと安心だ。
ようやく道の駅 原尻の滝を通過。
此処まで来れば辻河原公園は目と鼻の先だ。
16時過ぎに到着！！
佐賀関から約2時間の苦行であった。
やれやれ。水も滴るいい男になっちゃったよ。
ここで奇跡が！
降ってた雨がほぼ到着と共に止む。
あちこち水没してるけどむしろ今、水没して無い場所は安全な場所。
速攻でブルーシートをひいてテントを設営。
設営完了したのを待っててくれたかの様にゲリラ豪雨がやって来た。
凄い！これはきっと各地の神社に10円づつお賽銭したり。通りすがりのお地蔵さんに挨拶してた御加護だよ（笑）
「ジョロジョロ…」
前室のひさしにあっという間に水が溜まり重くなる度に水が流れる。
雨は強くなったり。小康状態になったり…。
雨が弱くなって来たタイミングで温泉に行く事に…。
隣町の竹田市までやってきた。天然温泉月のしずく。
なんて洒落たネーミングなんだ。
柴崎コウの歌を思い出す。
500円だった。良い湯だった。
お風呂出たら柴崎コウがバスタオル持って待っててくれたらもっと良かったのに…。
雨はまだ小康状態。
急いで公園に戻ろう。
セブンイレブンのお惣菜パックを開けて大人しく飲もう…。
むむ！美味いなこれ。
セブンイレブンのお惣菜買った事が無かったけどこんなに美味しいのか…。
湯煎したモツ煮込み。
洗い物が出ない様に袋のまま食べる。
枝豆も個食サイズでセブンイレブンシリーズはソロキャンプには良いなあ。
明日は晴れるらしい。
明日は連泊で良いかも。
去年やり残した事がこの辺りには沢山あるしな。
「ザー…！」
また降って来たな。
テント閉めて早目に寝るかねえ…。
こんな日もあるさ。
つづく。