今日はいよいよ3連泊させてもらった兄宅を出発だ。



兄はもう珈琲屋で営業中。こちらは久しぶりにバイクに荷物を積み込み、お店の前にバイクを置いて自宅で兄嫁◯カちゃんとお喋り。

思えば三日間良く喋ったなあ…。

山だから近くに家もあまり無いし。

誰か来ないと兄以外に喋り相手も居ないもんねえ(笑)

兄が淹れたての珈琲とケーキを自宅に持って来てくれた。

最後の珈琲と◯カちゃん特製のケーキを食べたらいよいよまた一人旅へ出なけければならない。

数日間楽をしちゃったからな…

またテントを張るのが面倒だって気持ちと、そろそろ焚き火がしたいって気持ちが入り混じる。



11時前にやっと出発だ!

お店に顔を出そうとしたら、丁度出て来たお客さんの男性に声をかけられた。

男性「このバイク、箱を積んでるからこつぶちゃんが来てるのかと思った!」

こつぶちゃん(笑)知ってる!女性ライダーで日本一周したyoutuberだよねえ。


おっさんライダーに絶大な人気みたいだよねえ。

こつぶちゃんだったら良かったねえ。

ちなみにこつぶちゃんの箱は俺が釣りに使ってる箱と一緒かも…。

バイクでホムセン箱を積みだしたのはもう30年前…こっちが元祖だから。

兄「コイツたぶん日本何周もしてますよ!」

いやいや…正式には一周しかして無いから。

後は日本中をウロウロ…。津々浦々。

男性もバイクに乗るんだとか。

暫く立ち話しをして皆に見送られ遂に居候生活に別れを告げて出発!!

「ありがとうねえ〜!次来るのはまた10年後かも…」

出発したは良いけど行き先は決まって無かった。

国道197号を走り道の駅ゆすはらで地図を見ながら考える。

う〜む。無策だ。

もう兄のとこも十年ぶりに来れたしさ…

これから九州に向かうって言う大雑把な計画しか無いんだよなあ…。

実際の所。今日は何処へ向かうんだよって話しだよな。

考えがまとまらないまま宇和島方面へ走る。

今度は道の駅 日吉夢産地で停まる。

放浪も楽じゃないね。自由気ままに全部自分で行き先を決められるけど逆を言えば全部自分で決めなければならない。

誰かの後ろに着いてけばホテルが予約してあって泊まれる様な旅では無い。

先ず行き先を決めよう!

暗くなってから寝場所を探す様な事だけにはなりたく無い。

四万十市の隣りの辺りに三原村ってのが有るなあ…無料キャンプ場があるみたい。

そこにしてみようか…。

決め無いと先に進め無いからね。

ヨシ!そこに決定!!

鬼北町の辺りを抜けてこのまま進めば宇和島市と言う辺りで左折。

松野町を抜けて進むとなんだか懐かしい地名が出て来たな江川崎か…30年前の日本一周の時も、十年前の四国放浪の時も通った道だ。

江川崎で四万十川に再会した。

四万十川の源流を出発してもう四万十川に会う事は無いと思ってたのにこの川は海に流れ込む迄にどれだけ蛇行しているんだろう。

江川崎の辺りでスーパーを見つけてビールと食糧を補給する。これで後はキャンプ場を目指すだけ。

しばらくは四万十川と並走する国道441号だな…

懐かしい道だ。

もう絶対戻れ無い若き日を思い出すと胸が締め付けられる思い。

想い出の口屋内集落…口屋内沈下橋…を横目に走る。かつて連泊してた無料小屋。旅人良心小屋はとっくに無い。

お世話になった川漁師の野村のおんちゃんも、もう亡くなってしまったと聞いた…(椎名誠さんやカヌーイスト野田知佑さんの著書にも出て来る。)

良心小屋に良く遊びに来てくれた同い年のあっちゃんと弟君はまだ此処にいるのかな…弟君がバイクに乗せて欲しいって言うから良いよって言ったら「うち帰ってヘルメット取ってくるー!」ってダッシュで帰ってしまったんだよねえ。

ふ〜ん。ヘルメットは持ってるんだねえって思ったら。戻って来たら通学用の自転車のヘルメットだった。

まあ田舎だし良いか…。

俺「よし行くか!乗れ!」

弟「オマエ本当に安全運転するのか?」

弟「安全運転するなら乗って来て良いってお母さんに言われた。」

俺「わかった!乗れ!」

…。

弟君「安全運転するなら乗る!」「安全運転するなら乗る!」「安全運転するなら乗る!」レコードの針が飛んだかの如く連呼し始めた。

駄々っ子か!苦笑いしなから俺は言った。

俺「わかった安全運転するから乗れ!」

走り出したら嬉しそうで…しばらくしたらヘルメットを叩くんだ。

俺「なんだ?どうした?」

弟「タヌキが死んでるよ。」

轢かれて死んだタヌキがそんなに珍しいか?

弟「止まって!」

バイクを停めると。

弟「可哀想に…埋めてやろう…。」

そう言うと死んだタヌキを素手で掴み路肩に運んだ…コイツ良く素手で触れるなあ…

一緒に路肩に穴を掘ってタヌキを埋葬した時には地元少年の純朴さに驚いたんだよなあ。

それから黒尊川の脇にある玖木のサーキットまで一緒に見学に行ったっけ…

もう三十年も前の思い出だ。

二人を探したい気もするけど思い出は思い出のままそっとしておこう。

俺は行く。

くたびれた身体で今を走る。



また沈下橋…。

長い沈下橋だなあ…。


ゆったりした流れなのに恐ろしい場所らしい。





恐ろしい渦って表現が怖いね…。

水深が18メートルもあるのかよ…。

きっと今まで何人もの人を飲み込んだんだろうなあ…。


下流に下ればどんどん四万十川は成長して大河となる。

源流からの渓流がいつの間にか清流に育ったねえ。

そろそろ四万十川とお別れ。川澄の辺りで橋を渡り県道50号へ。

更に南下すれば国道56号に出た。

宿毛方面へ向かいつつガソリンを補給。

海沿いの宿毛市街には出ないで県道21号へ。

いっきに交通量も減る。

そろそろキャンプ場があるはずなんだけどな…。

グーグルさんで見てももうほぼ着いてる。

ちょっとした小道がどうやらキャンプ場に続く様だ。

直ぐに砂利道になり。石がゴロゴロ。

本当にこの先にキャンプ場なんてあるんだろうか?


バイクを置いて歩いて偵察に行く。

このゴロタ石セクションを登るのか…

車高が低い車なら腹擦るだろうなあ。

ゴロタ石を歩いてあがれば道が続いていてその奥の川沿いに誰も居ない林間キャンプ場が広がっていた。

この石の登りだけクリアすれば何とかなりそう。

エンジンをかけた。

気合いで登るぞ!

慎重に行くと後輪が石に阻まれて登らない。

半クラにしてもパワー不足でエンスト。

所詮184cc。非力だ。

押してダメなら引いてみなだな。

1メートルバックして再スタート。「ブォン!」

行った!でかい石を乗り越えた。

そのままアクセルは戻さない。

荷物満載でやる事じゃ無いよ。中々ハードだな。

何とかクリアしてキャンプ場に辿りついた。

やれやれ。ちょっとしたトライアルだったよ。


着いてしまえば誰も居ないし。

今日は誰も来そうに無いし良い場所だな。



渓流を抜ける風が心地よいなあ。


早々とテントを張り薪を集めに行きがてら偵察だ。

結構奥行きがあり。目の前には渓流。


後ろには野池かなこれ?



鯉が居る。

これは誰かが放したのか?野生なのか?

落ちていた長い枝を引きずって来てテントまでもどる。

鋸で挽いて。斧で割る。

良い運動だよ。


焚き火をする前から熱くなったよ。

テントも張って薪も確保したから自分へのご褒美。


「くうー。この瞬間が堪んないねえ。」

ちなみに肴はキビナゴの南蛮漬けだ。

川を見ながら海の魚を食べるなんて…。

落ちついて来たところで釣り。

四万十川源流ではイマイチだったが。どうだろ。

川虫を捕まえて針につけて流す。

「来た!」

オイカワだ。

石をひっくり返して川虫をまた探す。

ええ!何このムカデみたいな川虫。

調べたらヘビトンボの幼虫らしい。

ちょっと気持ち悪いけど大きいからハサミでチョキチョキ5分割ぐらいして餌にする。

「来た!」

凄い食いが良い。アタリが頻繁にある。

ヘビトンボの幼虫大人気!

あっという間に5匹のオイカワとカワムツ。

これよく揚げれば骨ごと食べれるはず!

鱗と頭を取ってワタ出して即座にこうなった。



天麩羅にする!






出来た!!

うん!!

じっくり揚げたから中骨も気にならない。

そして臭みが全く無い。

カリッカリで美味いね!

「グビッ!」

ビールが進む。




暗くなって来て焚き火も良い感じだ。




安物。中落ちロース行きまーす!


「ジュー!」


焚き火で焼く。これがまた良いんだよなあ。



誰も居ないキャンプ場で禁断の遊びをしている気分だ。

まだ薪はふんだんにある!

キャンプファイヤー風に薪を組む。

ウフフ。

でっかい火を作ってやる。

「シュボボー!!」

凄え。来たぞ〜!

歌う!俺は歌う!

♪「燃えろよ燃えろよ炎よ燃えろー火の粉を巻き上げ〜天まで届け〜!」

こうして、ダメなオッサンの焚き火は何時までも続くのであった。

つづく。