朝靄煙る池原貯水池。

今日は天気は回復予定。

連泊して我が家の様になりつつあったバンガローを出るのに寂しさすら感じる。


まだ路面は濡れてるけど行こう!

次の景色に逢いに出発だ。




山を下り受け付けに鍵を返しに行く頃には青空に。

1日待った甲斐があったな。

雨の日も有るから晴れた日は感動もひとしおだ。

おー!スプロケットで有名なXAMがある!

思わず停まってしまった。

へ〜。こんな山間部にあるなんて意外だな。


一昨日に走って来た道を戻り北山川沿いに走る。



雨上りの川は生き生きしてる。

路面もあっと言う間に乾いて来たね。

山の息吹を感じながら深呼吸。

空気が旨い。

雲と青空。

桜に北山川の美しさ。

この土地に惚れたかも。

なんて幻想的な世界なんだろ。

北山川を眼下にしばらく並走する。

あっ!

バス(ブラックバス)が居る。

北山川に沢が流れ込んでる辺に浮いてるバスを発見。

散々釣れ無い釣りをして来たけどまだ諦めた訳じゃ無い。

すぐに竿を準備しなんとか石垣の護岸を慎重に降りてみる。

綺麗な沢の流れ込み。



本流では何やら工事してるけど。

降りてみると明らかにここは魚っ気がある。





バスも鯉も鱒系の魚も居るねえ。

先ずは遠投の効く重いスピナーを沖合いの浅瀬に見えてる魚群の向こう側に投げて引く。

バスは反応無いどころかゆっくり姿を消すね。

鱒系の何か(イワナだと思う。)も反応無し。

鯉は微動だにしない。

スピナーには興味が無いみたい。

小魚系かな。

ラパラのフローティングミノー9センチを投げる。

今の時代にフローティングラパラなんて時代遅れだろうなあ。

もっと本物そっくりなリアルミノーが沢山有るからね。

でもこれは30年以上前には確実にバスを釣って来た実績のあるルアー(懐かしくて近年、バス釣りを再開しようと中古を探して買っておいた。)

本流のバスはやる気が無いみたい。スレてるのかな。

支流の流れ込み付近を観察していると行ったり来たり活発に動いてる個体が二匹。

姿勢を低くして石垣沿いにキャスト。

無視されるかなあとラパラを引いて来ると二匹のうちの一匹がす〜っと静かに追って来た。

いかん。ルアーから自分迄、既に三メートル。

巻き代がもう無い。見切られるか?

咄嗟に早引きして足元まで来てしまう寸前、8の字メソッド(リールを巻かないで穂先で8の字を描く様に足元でルアーを踊らせる釣り方。)に入ろうとした瞬間…!

「バホッ!!」

喰った!!

うお〜!バスとの間合い三メートル以下。

デカい!!

一瞬で、のされかけた竿を立てる。

凄え!!かかったよ。

激しく真下に突っ込むバス。

切れるなよ…

「チチチ…。」ドラグが上手く効いてくれた。

改めてドラグを調整してラインを出し少しゆとりを作る。

コイツはかなりデカイぞ。

もう少し弱らせてからだ。

それにしてもこの安物コンパクトロッド頑張るよなあ…。恥ずかしいホワイトトップのチョイ投げ竿なのに。(リールもセットで売ってる様な代物。リールはお蔵入り。)

今までも歳なしチヌ(50センチオーバーの黒鯛)上げたり…何故か腰があってこういう場面で見事にいなしてくれる。

絶対獲るぞ!

激しく抵抗するもナイロンの3号を信じて寄せにかかる。

「バホッバホッ!」

水面を割った。

やべぇ。デカイ!

タモなんて無いからな。

さらに石垣を降りてハンドランディングするしか無い。

降りれそうなルートを探しなんとか慎重に降りる。

届くか?手を伸ばしなんとかバスの下顎をガッチリキャッチ。

やったぜ!

だがまだ安心出来ない。

今度は石垣を慎重に登る。


「うぉっしゃ〜!!」

あがったー!!

ばっくり喰ってる。

こりゃ外れ無いね。

ラパラ良くやった!



遂にこの旅。

第1号の獲物にして大逆転の大物をあげる。


どうだー!

ここ一番持ってるよねえ俺。

勝てば官軍。

釣れれば天狗。

コイツいったい何センチだろ。

メジャーで計測すると47センチ。

50センチは届いて無かったか。

でも実に35年ぶりにブラックバスの自己新記録更新。

これは大きくて旅の途中だし食べ切れ無いな。(ブラックバスも今まで散々フライにして食べて来た。)

釣れてくれた事に敬意を持ってリリースだ。

思い出をありがとうー!!

元気に泳いで帰って行ったよ。

まだやれば釣れるかもしれないけどもう充分だ。

旅の続きへ戻ろう。

意気揚々と新宮市の辺りから海岸線へ出た。国道42号を潮岬方面へ走る。

お腹空いて来たね。

道の駅が有る。

ここを逃したらきっと食べる場所無いぞ。







おー!ここ太地町かあ。

イルカ漁で有名なとこだよねえ。

レストランに入ったら此処で郷土料理であるイルカや鯨を食べれる事を知る。

これは一度は食べ無いと。

400年続く食文化らしいからね。


イルカすき焼き定食1000円を注文して待つ。

来たよ。

これがイルカの肉なんだ。結構筋ばってて硬そうだな。北海道で食べたトド肉にも似てる。

実際噛むと余り脂は無くて硬いんだけど。

不思議と噛んでると独特の旨味がある。

卵との相性もばっちりだし。

味付けも良い。

毎日は食べ無くても良いけどたまに食べたくなる味だよこれ。

たまたま寄ってみた道の駅でこんな希少な物が食べれるなんて!




ここの道の駅で売ってる物が珍しい物ばかり。

ウツボ揚げ煮や。

鯨の内蔵?を茹でたものや。

くじらコロって何だろうな。


懐かしい匂いがする焼き菓子。

これオヤツに買おう。

大きなサバが100円!

買いたいけどなあ。

今晩寝る場所が魚を捌ける様な水道があるとも限らないし…。


結局焼けば直ぐ食べれるムロアジの味醂干しを買う。

ムロアジと言えばクサヤはあるけど味醂干しは初めて見たな。


もうすぐ串本かあ。

潮岬も近い。

でもその前に橋抗岩が姿を現した。


ここも道の駅だから寄りやすい。



前にも来たけど不思議な地形だ。



本当に橋げたみたいに整列してるんだよね。

昔、弘法大師と天邪鬼が一夜で橋をかける賭けをして建てたって伝説があるけど弘法大師(空海)ってもはや実在した人間とは思え無いほどの伝説を日本各地に残してるよねえ。

橋杭岩を出れば潮岬。

前に泊まった魚料理が美味い民宿ミサキロッジに泊まりたかったけどあいにく満室。

潮岬灯台だけは寄ってこう。

前回は夕方遅くに着いて見学出来なかったから初めて中に入れる!

拝観料300円を払うと受付の方が「登れる灯台です」と。



まずは全体像。

脇には壁画?


あー!

これって。

絵本のスイミーの壁画?

やっぱり。

スイミーの話し好きだったな。

これ良く描けてるなあ。








行こうか。

灯台の螺旋階段って心の準備が必要だよね。

黙々と登る。

ぐるぐるしながら登る。



あと半分か…。

途中経過…。

だいぶ上がって来た。

「頭上注意!」


いよいよこのハシゴを登れば頂上だ。


ふ〜。

到着。


中々の眺め。

さっきのスイミーの壁画も見える。


荒々しい海だねえ。


ずっと磯場が続く。

こういう場所。釣れるんだろうけど。

磯釣りの道具までは流石に持って来れなかったよ。

さて。

降りないとだ。



CB190Xが待ってるよ。


降りる方が怖いなこのハシゴ…。

一階は灯台の資料館。






















ゆっくり見たいんだけど。写真だけ撮ったら行こう。

まだ今日の寝場所も確保して無いし足早に灯台を後にする。

潮岬灯台制覇!って事で。

こちらは少しだけ走ったとこにある潮岬観光タワー。

灯台に登った後だし。有料だし登らなくて良いね…。

それより目の前の広場を歩いたとこにある本州最南端の石碑へ。



最南端とか最東端とか最北端とか寄ってしまうのってライダーの性?

二度目だなここ来たの。



2度目だし。たいした感動も無いんだけど。

長旅で延々と下道自走でやって来ました感。

旅をしてます感。

何処かで自分は頑張って此処まで来たんだよって証が欲しくなるんだ。

まだまだだな俺も。

放浪には目的など無いとか言いながら目的を探してる。

目標物を探してる。

ゴールを探してるんだ。

漠然と旅をするって一番難しいのかも。



観光タワーでソフトクリームを買う。

観光タワーとソフトクリームって似てるね。

観光客もまばらな観光タワーの下でソフトクリームを食べながらいよいよ今日の寝場所を真剣に探さないとダメな時間になって来た。

地図で見てもキャンプ場も無い地帯だな。

民宿もあったとしても突然泊めてはくれないかも。

都合良く安い素泊り宿も見つからない。

いよいよ野宿か。

少し走ると海水浴場があるね。

そこでテント張れないかな…。

よし!行って見よう。

串本町を抜けて海岸線を走る。

海ギリギリを抜けるダイナミックな道。

ここだなあ。




どうだろここ。

綺麗なとこだな。



ラーメン屋さん有るけど定休日。

かえって人が来なくて好都合かも。

季節外れの海水浴場。

誰も降りないであろうバス停がポツン。

ちょっと砂浜に降りて偵察だ。

端まで歩く。小川を跨ぎ草むらの奥に廃墟の様な男女別の脱衣場があり。

汚れて放置されたトイレがあった。とても使いたく無い荒れ様だった。

水道を捻っても水は出ないね。

シーズン前には草刈りが入ったり清掃されるのだろうか…。

草むらのぬかるみにはわりと大きな動物の足跡。

イノシシっぽいな。

ちょっと不安だけど出来るだけ開けた平らなとこにテントを張ってしまおう。



この場所平らだけどコンクリートの上に薄く砂が堆積してるだけ。

ペグが効かないから石を集めて来て重石にする。

キャンプスキルの見せどころだ。






ロープを余分に持って来て役に立った。


久しぶりの野宿だなあ。


テントさえ張ってしまえばプライベートビーチだねえ。

ここなら道路からは目立た無いし。

大胆にもこのまま、お風呂に入りに行く事に。

すさみ町に10Km程進めばホテルで日帰り入浴出来る様だ。

空荷で走るとなんて軽いんだろ。

本来このバイクはこんなに軽快に走れるんだな!

久しぶりにコーナーリングを楽しみながら走る。



サンセットすさみと言うホテルに到着。



すさみ温泉 美人の湯


閑散とした平日の温泉。

入ってたら後から一人やって来ただけ。

美人の湯と言うだけあっとお湯がとろとろ。

入って出たら肌がつるつるすべすべ。

野宿ライダーには猫に小判な泉質だった。

さっぱりしたけど今日も焚き火臭くなる予定だしな。


戻り道でビールを買う為にローソンに立ち寄る。



ローソンの横に自己主張強めな崖。

落石と書いてある下の廃車軽トラの屋根に落石が置いてある。


誓鐘。

鐘は車のホイール?

鳴らす勇気は無い。



立ち◯ョン禁止。

中々洒落が効いてるよな(笑)



キャンプ場に戻り。

いや…野営地に戻り。

オヤツを食べよっと。

ビールももう飲んじゃお。

なんでも肴に飲めるタイプ。


流木も集めてと。

テントの至近に有った焚き火跡からも消し炭を拾う。

ここでちょっと気味悪い物が出て来た。

焼け跡の中から骨。

豚のスペアリブとかチキンの骨とかじゃ無い。

絵に描いた様な、はじめ人間ギャートルズのマンモス肉に刺さった様な20センチ程の骨が…。

バーベキューの跡で良いんだよね。

人骨!?

まさか。

更に焚き火跡から10メートル離れた場所に枯れたお供えの花が…。

ちょっと怖いけどもうテント張ってしまったしなあ。

あまり考えたくも無いが…。

誰かが死体を焼きに来たとかじゃ無いよね…。

念の為さらに調べても骨は一本だけ…。

怖いから火バサミで掴んで少し離れたとこに置く。

きっと仏花は骨とは無関係だ。

水難事故で亡くなった人に供えてあるだけだ。

…。どちらにしても少し怖い。(笑)



まあ何処だって亡くなった人は居る。

東京だって戦後焼け野原だったとこに家が立ち沢山人が亡くなった跡地に住んでいるんだ。

そう考えるしか無い!


気持ちを切り替えて海でバーベキューだ。

道の駅で買って来たムロアジの味醂干しを大胆に焼く。

良い感じだねえ。


定番のシャウエッセンとピーマン。


ムロアジ味醂。

食べ応えあったよ。

ビールが進むね。


酔っ払って来ると別に野宿でもキャンプ場でも一緒だね。

お化けも幽霊も出そうに無いし。

すっかり陽気になった俺は今日もマイペースに焚き火を続けるのであった。

今晩。天気持つかなあ…。


つづく。