初めての方は注意事項に目を通してからお読みください。


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俺は小学4年生くらいまで、サンタクロースは本当にいるのだと信じていた。

それをかわいいと見るか単に幼いと考えるかは任せるとして、こんなことが関係しているかもしれないと思う出来事がある。






うちの家庭には、プレゼントの習慣がない。


菓子折りを持って知人宅に挨拶に行くようなことはあっても、子供の誕生日や何かの記念にお祝いするということはしない。

母の日、父の日然り、結婚記念日も忘れている夫婦である。

七五三もなかったし、成人式なんか覚えてもいなかった。


知ってる習慣なら頑なにそれを守るが、自分で考えてプレゼントするようなことが出来ないのがアスペルガー。

だから、当然と言えば当然だったのだろうが、当時はもちろんそんなこととは知らない。






そんな家でクリスマスプレゼントというと、当然のように親がよく利用するデパートに連れて行かれた。

そこで子供本人が選び、親が預かった後クリスマスに開封を許されるというスタイルだった。


自分で選べるといっても、金額も買う場所も決められているし口出しする親の価値観もある。

親が激しく反対しないものを選ばなければならない。


それでも楽しみな日だった。

それが、年に一度、うちで許された唯一プレゼントをもらえる日だったから。






ある時、クリスマス気分の街中で、子供にインタビューしている様子がテレビで流れていた。


「サンタさんに何お願いしたの?」なんて聞くインタビュアーに、幼稚園くらいの子供が無邪気に答える。

隣にいる親の困惑をよそに、無茶なお願いをしていたのかもしれない。


それを見ていたうちの母親が、ぼそっとこう言った。




「サンタさんなんていないのにね。クリスマスプレゼントだって、結局親が買うだけなのに…」




俺はもう小学生だったかもしれない。

普通の子供なら、もうサンタクロースは親が夢を持たせているものだと理解している年齢だったようにも思う。

だが、俺はどこかでサンタさんを信じていた。


そして、その俺の幼さと親がテレビに話し掛ける習慣を差し引いても、何だか不自然だった。




テレビに出ている子供は、まだ何も知らない子供だ。

その子供に向かって現実はこうだと言う必要がどこにあるのか。

また、その場にいる俺に何を言わんとしているのか。


アスペルガーの嘘をつけないという特徴は、何も知らずに口走るムゴイ子供のようだ。




ショックだった。


サンタクロースが実在しないことではない。

サンタクロースの代わりが親であることが、衝撃だったのだ。


希望に満ちたサンタクロースの物語と、金と親の都合という現実のクリスマスが、あまりにも掛け離れていたから。




この出来事から、俺はむしろサンタクロースを信じるようになった。