すっかり「ほぼ週末ランナー」に染まる。
いやね、望んだわけじゃないのよ誓って。
走りたいってのはあるんだけど忙しいのよ色々。
で、走るって、俺的には結局のところ遊びだから、優先順位は低くなっちゃうわけだ。
ある日の休み時間、同僚との雑談中ウォーキングの話題になった。
彼は俺より2つ3つ年上で、さほど不健康には見えないが医者から勧められ、最近は朝と晩5〜6kmも歩いてるという。
コースを聞くと俺が以前走ってた遊歩道、しばらくして散歩やウォーキングしてる人の邪魔だと気づき足は遠退いていた。
最近の体たらくぶりに若干の焦燥感も加え、こういう話に感化されがち。
今日も夕方歩くと言う彼にだいたいの時間合わせで同じコースに行く、会えたら一緒にな、くらいの緩い約束をした。
久しぶりに定時で帰れる金曜日、軽く飲みにも行きたかったが、彼のおかげでベクトルは久しぶりにジョギング向き。
とはいえ、彼とはあくまでウォーキングなので早目の時間に逆方向へ走りにでた。
頃合いをみてそのコースに合流する算段だ。
上はシャカシャカ、下ジョガーパンツと、いわゆる冬仕様で走ってるもんだから汗が吹き出る。
そのはず、俺が知らぬ間に桜は散り、季節は新緑を纏いはじめていた。
心の余裕が減るたび、走る頻度が減っていくたびに何か置き去られていく気がする。
だからか、たまのジョギングでも周囲からの小さな気付きは心にささやかなアクセントを与えてくれ、ささくれが解けるような感覚を覚える。
やはり俺にとってランニングは尊い。
逆方向、橋まで折り返しの5km。
まあ〜身体が重い。ペースはキロ7分だが十分過ぎるくらいの負荷を感じる。
河川敷の遊歩道に到着した。
さて、彼と合流といくか。
だが、いつどこで待ち合わせってわけじゃないので所在は不明。
今いる橋から対岸へ渡り、再び下流の橋を渡り帰って来る、ようは川を挟んで約3kmの時計回りコースなのでいつかは出会えるはずだ。
その一周目で完全に日が落ちる。
遊歩道を街灯が照らすのは橋下の一部のみ、対岸はかろうじて人を認識出来る明るさ、彼の姿は見当たらない。
俺はキャップのひさしにライトを付けてる、特徴的だからすぐわかる、って彼に伝えてた。
暖かくなったこの時期、とくに水辺には小さな羽虫が発生する。
その羽虫が俺のライトをめがけて飛んでくる。
か〜!ペッペ!
そしてまれに口の中に入ってきたりする。
彼はいったいどこにいるのか、いや、その前に本当にウォーキングしてるのか若干の疑心が芽生える。
俺のジョギングはここまで5kmと遊歩道一周の合計8km。
いい加減飽きてきたしバテ気味だ。もう一周で出会わなければあきらめよう。
最後の一周ゴール間近、出会えなかった腹いせに呼び捨てで彼の名を叫んだ。
「なにー?」
なんて返事があるわけもなく、人影のなくなった河川敷の遊歩道は川の流れる音しかしなかった。
出会えなかったな、おかげで10km以上走る羽目になったよ。
走れてなかったんだろう、10km以上?良かったじゃん。
たしかに…そうだな、良かったかな。
なんだか心の中のノイズが消え、視界が開けたような週末だった。

