入院手続を済ませて妻が病室に来たのは19時少し前だった。
私は既に心電図のコードと点滴のチューブに拘束されてベッドに横たわっていた。
「思ったより広い部屋ね。」妻が言った。
私の入った病室は横長の部屋の真ん中をアコーディオンカーテンで区切って2人用にしてあった。今日は同室者はいないそうである。
「下の売店で下着とスリッパを買ってきたけど・・・。小さな売店で品揃えが少なかった。明日、必要なものを持って来ます。先生の話でも最低2週間の入院が必要なようだし。」
「ありがとう。悪いけど帰る前に売店でイヤフォンを買ってきてくれない?」
病室内にはテレビが設置してあるが、イヤフォン着用が必須である。テレビでも見ないと夜は過ごせそうもない。
妻が帰った後、夜担当の看護師が体温、血圧、血中酸素濃度を測りに来た。看護師さんは30代前半の落ち着いた女性だった。私は勝手に主任看護師ではないかと思った。
「酸素濃度が低いですね。測る指を変えてみましょう。」
測る指を変えると、2%程度上昇した。この酸素濃度が2回目の入院のキーになるとは、私自身全く考えていなかった。
「Aさん、すみませんがトイレの洗浄をお願いします。」
簡易トイレの容量には限界があり小用を2度したら洗浄しておいてもらわないと溢れる可能性がある。正直恥ずかしかったが、背に腹は代えられず看護師さんにお願いした。
Aさんはトイレの洗浄を終えると、「何かありましたら、遠慮なくナースコールを押してください。」と声をかけてナースステーションに戻っていった。私は一人病室に残された。
色々な検査、思ったより重篤な病状、急な入院で気持ちが高ぶりとても眠れそうもなかったが、いつの間にか眠っていた。後から考えると点滴に栄養分とは別に精神安定のための薬がはいっていたのかもしれない。
明後日の内視鏡検査を気にしながら、入院初日は夢の中で終わった。
by MTK