今思うと、入院2日目の記憶はかなり曖昧である。多分、その時におこったことがしっかりと記憶されていなかったためだと思う。まあ、状況を考えるとやむを得ないと思う。  

以下はぼんやりとした記憶を振り絞って書いた内容だが、多少の思い違いはご容赦願いたい。

 

 2日目の昼過ぎだった。うとうとしている中、隣室がざわついてきたのを感じた。隣室と言ってもアコーディオンカーテンで仕切られたスペースであり、普通の音はもちろん、話す人が意識しない限りほとんどの声が聞こえてしまう。

隣では簡単な掃除が始まり、新しい寝具が入れられたようである。先輩のおばさんが後輩のおじさんをきつく叱っている声が聞こえた。

その後、しばらくして看護師に案内された入院者と付添者が入ってきた。部屋を仕切っているアコーディオンカーテンは両引き戸の真ん中と対面の窓の間を仕切っているため、同室者達の姿は見えない。

私は友人・知人のお見舞で入院病室に入ったことはある。しかし、自分自身が入院者として入るのは初めてであり、同室者との付き合い方はよくわからなかったが、どうやら入室の挨拶はしなくても良いようだ。

同室者は70歳過ぎの老人で、明日何かの手術があるため入院してきたらしい。そして、彼は何年か前にガンで当病院に入院したことがあるようである。そのため、彼らが入室して1時間ぐらいしたころに知り合いの看護婦が数名来て談笑して行った。看護師さんに囲まれるのは羨ましい気もしたが、やはり私は遠慮したいと思った。二度目の入院はしたくない。



お断り:以降、便宜上 女性の看護師:看護婦 男性の看護師:看護師 と記載させていただきます。

ぼんやりとテレビを見ていると夜勤担当が挨拶と検診に来た。食事は採れず点滴だけだと時間の経過が分かりにくい。もう夜の検診らしい。

今回の夜勤担当は20台後半の元気な看護婦さんだった。彼女は「イシーン」と言ってカーテンを開けた。ちなみに彼女は富山出身の日本人である。

検診を終えて9時過ぎになった。同室のご老人は翌日の手術に際して非常に緊張しているようだった。頻繁に寝返りを打ち、時々何かをつぶやいているようだ。私もその緊張感を感じできるだけ音をたてないようにしたが、トイレ使用とその清掃依頼に関しては音の発生を防ぎようがなかった。

ただ、しばらくすると隣が急に静かになった。点滴の中に睡眠導入剤が入っていたのかもしれない。少しほっとしたが、私の方が眠れなくなった。私も明日は内視鏡治療があるのだった。不安はあったが「鎮静剤」を使うことになっていたので、苦しくは無いのではと期待していた。

しかし、明日治療中に幻覚を見て暴れることになることを、私は知らなかった。

                                   

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