気が付くと私はベッドに寝かされ何人かの人に押さえられていた。上半身に二人、足の方に二人の人がいた。上半身を押さえている女性は恐ろしい形相をしている。他の人達は無表情だが、皆冷たい目をして私を見ていた。私は強い殺気を感じた。

 このままだと殺される・・! 私は必死に手足を使い抵抗をしたが、右上半身が動かない。体の右側が強くベッドに押し付けられているようだ。

手足を思い切り動かした。手を上げて振った。足を押さえている人を蹴っ飛ばした。

「落ち着いて!」

「もう少しで終わりますよ!」

「しっかり押さえて!」

怒号が飛び交っていた。

私は処置室のベッドの上で目を覚ました。「終わりましたよ。」との言葉を聞いた。

次に目を覚ましたのは病室のベッドだったと思う。このあたりの記憶はまったくとんでおり、後から思い出しながら書いている。

 数日後、色々な人の話を聞いてそれらを総合して、自分なりに3日目の状況を整理してみた。

 入院3日目の14:00頃から内視鏡の処置が始まる予定だった。私は13:30頃に稼働ベッドに移されて、内視鏡センター内の処置待ち室に連れて行かれ、寝かされていた。

 検査と処置は14:00から開始される予定だったが、担当医は外来患者も検診しているため30分ほど待たされることになった。待たされることにより私の不安と恐怖は増大していった。14:00少し前に先生がいらして、咽喉の麻酔注射をした。その後に今回の検診・処置のやり方を説明された。そして、いよいよマウスピースを通して内視鏡が咽喉に入れられた。

気が付いたらいきなり冒頭のパニック状況にあった。

今回の検査・処置は担当医と相談し『鎮静剤』投与方式でやることになっていた。この方式だと検査・処置の苦痛をほとんど感じさせず、大半の患者は一眠りして起きたら処置が終わっていることに気付くらしい。

しかし私にとっての現実は、処置終了間際までは『鎮静剤』が効いていた、しかし最後までは効かなかった。そのため私が幻覚を見て暴れだしたということだったらしい。

但し、看護師さん達が殺し屋?に見え『殺される』と思ったのは一瞬だったらしい。

 退院前に再度内視鏡検査を受けた。幸いなことにその時は目が覚めたら処置は終わっていた。

 1回目は極度の緊張と過去からのアルコールの蓄積のために?鎮静剤が効かなかったのかもしれない。ただ、そのおかげで、ほんの一瞬だが幻覚を見るという経験ができた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 【蛇足】

 

私は内視鏡検査は通算すると10回以上受けている。しかし全く検査に慣れず、検査が終わるたびに二度と受けたくないと思っていた。あんな苦しい検査、何とかならないものかと?

最近ではカメラもケーブルも小さくなっており苦しくなくなっているという話を聞くのだが、私にはずっと無縁だった。

一度、私の周りの人に「胃カメラ」と「バリューム検査」とどちらが良いかという問いかけをしたことがあるが、驚くことに女性の大半が「胃カメラ」と答え、男性の大半は「バリューム」と答えた。もし、これが統計的事実だとすると、男性と女性のどこに違いがあるかを研究してもらい、内視鏡検査の改善に役立ててほしいと思う。

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