ベンダー各社のシステム導入提案プレゼンテーションは、1社2時間、1日3社で2日をかけて実施された。プレゼンテーションには高岡を初めステアリングコミッティのメンバーも全員参加した。
池田は予めベンダーの評価表を作成し出席者に渡しておいた。評価表にはパッケージ導入実績等の客観的な情報も記載してある。
評価表における各評価項目の評点はA~Cの3段階にしてある。但し、評価項目の重みづけはしていない。システム導入に関してどの項目を重要視するかは企業が置かれている状況によって異なる。池田はT工業にとって何が重要なのかを出席者に考えてほしかったため、敢えて重みづけはしなかった。
1日目のプレゼンテーションはA社から始まった。
A社はグローバルに展開しているパッケージソフトのベンダーであり、日本においてもグローバル企業の多くがA社のソフトウェアを導入している。
A社は基本的には個別企業用にパッケージソフトの変更はせず、必要があればパッケージの外側にプログラムをアドオンする。その思想の根本にあるのはA社のソフトウェアをそのまま利用することが企業にとってベストプラクティス・・・最適な業務・・・の選定になることである。
A社は営業が1名、プロジェクトマネージャとアプリケーション担当が3名の計4名で来社した。
彼らは、T工業が求める基本要件に関してはパッケージ機能とのフィット・ギャップ分析を行ってきており、T工業の求めている基本要件はほぼ全てパッケージ機能で満たせると提案してきた。
池田はA社のシステムがマスタによってコントロールされており、マスタの設定が正しくできていないと、正しく機能しないという話を友人から聞いていた。そしてマスタの設定はかなり難解であるとも聞いている。
池田は、そのあたりについてA社に質問したが、それほど難しくは無いとの回答を得た。
初日2番目はB社のプレゼンだった。
B社は、システム説明会と同様10名ほどのメンバーが出席した。
2時間の提案時間の内、約1時間がセキュリティやアウトソーシングの提案だった。パッケージの機能については簡単な説明で済まされた。
特に汎用品と特注品の利益管理については納得できる説明がなかった。但し、T工業のようにシステム専門家がいない企業にとって、運用面でのB社の提案は魅力的だった。
初日、3社目はC社の提案だった。
池田達も3社目になると、さすがに疲れてきた。
安田専務と山田常務は休憩時間に喫煙室で意見を交わしていた。
「山田さん、A社のパッケージは有名で、大手の会社に導入されているけれど、どう思われますか?」
「いや、残念ながら我社の身の丈には合わないと思います。我社は当面は少ない人数で柔軟に業務をこなすことによりクライアントからの評価を受けていくことが重要であり、それがベストプラクティスだと思います。」
「確かにそうですね。マスタの設定もあまり難しいようでしたら柔軟な対応が望めませんですね。」
C社の提案はほぼB社と同様だった。但し、利益管理に関しては汎用品の原価計算と汎用品を使用した特注品の原価管理の考え方がよく整理されており分かりやすかった。
長い一日が終わり、明日はD社からのプレゼンテーションで始まる。
この物語はフィクションであり登場する企業・人物は架空のものです。
第15章 完 高石 貢(著)
第16章 -誰に頼んだら(5)- 6月20日頃 アップの予定です。