システム説明会からプレゼンテーションまでの間、池田は各社からの質問の対応に追われていた。質問は単純なものから専門的なものまで多岐にわたっていたが、ほとんどのものは池田だけで回答ができた。

 しかし、生産管理や在庫管理に関する専門的な質問については田部や河合に相談して回答した。専門的な質問 には下記のようなものがあった。


E社からの質問


 「埼玉工場と横浜工場では同一部品を使用しており、在庫もそれぞれの工場で保有しているとのことですが、原材料所要量展開と発注予定データの作成は両工場併せて実施しますか?」


 

 上記の質問メールが届いた翌日に田部生産管理課長・雪野資材課長と池田が集まった。


 「池田さん、すみません。実はこの質問が来ることは想定していたのです。」

田部が言うと雪野が相槌を打った。


 「ご存じのとおり我社は汎用機を横浜、埼玉の両工場で生産しており、汎用機には多くの共通部品を使用しています。そして共通部品を各工場で在庫しています。また共通部品の発注も両工場でバラバラに実施しています。これは全社的に見て在庫を増加させ、発注・入荷の手間も増加する要因になっています。」


 「渡辺部長は、『システム導入によってこんな無駄を無くせ』と言われるでしょうね。」池田が言うと、「もう言われていますよ。」と田部が苦笑する。


 「しかし私は、必ずしも両工場を合わせた部品在庫の管理を導入することには賛成ではありません。」

 「私も田部さんの意見に賛成です。大企業のように生産計画がある程度フィックスする企業では共通管理が良いと思いますが、うちのような企業の場合、柔軟な対応が求められます。各工場に対応を任せて、田部さんがモニタリングできるようなやり方が良いと考えます。」雪野が言う。


 「池田さん、今回一緒にシステム化計画を策定してきました。その中で「基本要件」を決めきれないものが何点かありました。それらについて私は敢えて曖昧なままにしておきました。」

 「その理由は、提案企業がどこまで我社のことを考えてくれるか?また幅広い経験から最適な提案を出せるか?を知りたかったためです。」


 池田はなるほどと思った。システム化計画はもちろん完全なものではない。その計画に対して会社のことを考えて積極的に提案してくる企業が、システム導入のパートナーにふさわしいかもしれない。


 「田部さん・雪野さん、了解しました。」

 「E社への回答は下記のようにしたらどうでしょうか?」


E社への回答



 両工場共通部品の管理方法については弊社においても結論が出ていません。貴社の提案を待ちたいと思います。なお、必要な追加情報(共通部品の単価、在庫金額当)があれば遠慮なくお申し出ください。


 「池田さん、ありがとうございます。E社へのご連絡をお願いします。」


 各社のプレゼンテーションの日程は来週に迫っていた。


 この物語はフィクションであり登場する企業・人物は架空のものです。



14章 完 高石 貢(著)

 

14 -誰に頼んだら(4)-  613日頃 アップの予定です。