なかなか命令に従わない神童だった。なぜ俺だけと思う気持ちでいっぱいだった事と、何とか出来ると思う気持ちがあったから。
「 貴方はどうしてそんなに戦いたいのですか?負けると分かっている戦いなのに。」
「 そんなの勝手に決めるなよ!!誰が負けるって?やってもいないのに何が分かるってんだ!」
「 ・・・・・そんな次元じゃないいんですよ。貴方はあの王の事がホントに分かっていない。本気じゃない今でも今の神童と比べても力の差は歴然としてます。貴方はリミッターを外せば何とかなると思っているんでしょ?それが根本から間違ってるんですよ。今のままではダメなんです。」
「 それでも俺は逃げない。逃げたくないんだ。逃げたら俺は今後戦えなくなる。」
「 ・・・・・・貴方という人は。」
真剣な眼差しで応える神童。魔神は迷っていた。そんな時だった。
「 いいじゃないですか魔神さん。そんなに分からず屋は戦ってみて初めて分かるんですよ。自分という存在が。」
「 でも・・・・・。」
「 それじゃ、私が許可しますよ。ほら、これを。」
現れたのは鍵、紅蓮の鍵だった。それを手に取りリミッターに差し込む神童。完全にすべてのリミッターが解除される。
すさまじく立ち上がる闘気。以前に解除した時とは遥に力量が違っていた。自信に満ちた顔つきと固まっていた体が軽くなる。
「 やっと本気の私が解放されるんですね。・・・・・行きますよ。」
それは今までの神童とは違っていた。穏やかな声とはウラハラに力に満ち満ちた黄金の闘気に包まれた体から放たれる高速、いや神速の拳だった。
神童の様子、それは天界から舞い降りた天使の様な飛翔の羽を纏った容姿。それは神が光臨したように見えた。だが・・・・。
『 それが貴方なのですね。さあ、私を楽しませてください。』
神童の拳を軽々と片手で止める。王の拳は一瞬潰れたようになったが次の瞬間にはすぐさま元に戻って神童の拳をギュッと包み込むように握っていた。
その後神童は右拳を引き、連続で左右の拳を王に向かって振るう。だがその状況でさえ簡単に止められていた。壊れてはすぐさま再生を繰り返す王の右手。片手だけでその無数に繰り出される神童の拳を防いでいた。
『 ・・・・・・失望しますね。それが貴方の力なんですか?つまらない。』
「 ・・・・・・まだですよ。まだ感覚が戻ってませんから。久しぶりの本当の私なのです。これからですよ。楽しませてあげますよ。それとも楽しむのは私の方かも知れませんが。」
まだまだ余裕を見せる神童だったが、それを心配な目で見る魔神。
「 心配ですか?魔神さん。」
「 正直、そうですね。神童が本気になっても敵わないでしょうから。」
「 その時はどうするのです?」
「 その時は・・・・・・。」
魔神は神童が戦う様を見ながらどうすべきか考えていた。難しい選択が近づく足音が心の中で響いていた。