芋虫は考えた。
「今すぐ蝶の姿へ、とはいかないものか?」
常日頃から生き急ぐ性分のこの芋虫にとって、
繭の中にて数日間じっとしている事は、
我慢のならない事だったのである。
そこで、自らの口から分泌する粘糸を以て、
背中に落ち葉を二枚張りつけ羽根に見立てるも、
その不格好さは同じ木に住むカブトムシ達からの、
嘲笑の的にしかならなかった。
もしここで心に一本筋が通っているものならば、
「今に見ていろ」
と周りを見返す努力をする事が出来るのだろう。
だが、生憎とこの芋虫の心に限って言えば、
自らの身体同様ぐにゃりぐにゃりとしていたので、
「ひとに笑われるくらいなら」
と、あっさり諦めてしまうのであった。
急ぐ事を諦めた芋虫は普通の芋虫になり、
他の者がするのと同じように、
自らの体を粘糸で包み、
窮屈な繭の中で蝶へ変わる日を大人しく待つ事にした。
数日後、繭から孵った芋虫は驚愕した。
蛾だった。
自分が変態したのは、
街灯にたかり鱗粉をまき散らす蛾だったのだ。
悔しく思った蛾は近くの花畑へと飛んで行き、
蝶の群れに交じる事にした。
そう思い、実際にそう行動に移した。
しかし、そこでも蛾は蝶たちに笑われた。
「ひとに笑われるくらいなら」
蛾は、ゆらりゆらりと夕陽色の街灯へと引き寄せられていった・・・。