「テギョン、ずいぶん情けない顔をしてるぞ。その顔を見たら・・・ファンは幻滅するかもな」
俺の打ちひしがれた様子を見て、シヌは嬉しさが隠しきれないといった感じで顔に笑みを浮かべていた。
「俺の勝ち、だ」
「・・・勝ち?」
「そうだよ、前にも言っただろ、俺の勝ちだって」
シヌがくすくすと肩を揺らした。
「ミニョは俺を引き止めた、そして俺が好きだと言った、だから俺の勝ち。素直に負けを認めたらどうだ?だいたいテギョンは欲張りなんだよ。恵まれた環境で育って、才能もカリスマ性もある。抱えきれないほどいろんなものを持ってるくせに、その上ミニョも手に入れようなんて。自分勝手でわがままで・・・・・・ファン・ギョンセという大きな後ろ盾の上に平然と胡坐をかいて座ってる」
シヌの顔からスッと笑みが消えた。目も口も微笑むことをやめると、俺を突き刺す氷の視線だけがその場に残った。
「俺はずっと、テギョンが嫌いだった」
あまりにも感情的に俺に対する嫌悪を露にするシヌは初めて見た。
父さんとはジャンルは違うが、同じ音楽という世界にいることは間違いない。
だが父さんに何かしてくれと頼んだことはないし、むしろ俺は彼を避けていた。
『ファン・ギョンセという大きな後ろ盾・・・』
そんな風に見られていたとは知らなかった。
しかし、これがずっと抱えてきたシヌの素直な気持ちなんだろう。言い争いをするのは初めてではないが、今日のシヌは今まで見たことのないシヌだった。
勝手な男だと、事務所の会議室で対峙した時とは違う・・・
いや、思い返してみると、あの時のシヌと今のシヌはかぶる。ミニョがどうこうというより、俺に勝ったと優越感に浸った表情の方が印象に残っていた。
俺はふと、アヨンの言葉を思い出した。
ミニョを手に入れたことよりも、それによって俺がダメージを受けることの方がシヌは嬉しいんじゃないか・・・と。
俺に対する敵対心、コンプレックス・・・
ミニョは相変わらず俯いたまま。
シヌを好きだと言ったくせに、肩を抱かれている身体は、嫌がっているように見えた。
やっぱり違う、さっきのはミニョの本心じゃない。シヌと話をしたわずかな時間に、俺を避ける何かがあったのは間違いない。
シヌが俺に近づき耳打ちをした。
「俺たちが一人の女を取り合ってるなんて知れたら、マスコミがすぐに喰いつくぞ。一般人だからとマスコミはある程度抑えられても、ファンは黙ってないだろう。ミニョを護りたいと思うなら、この場合、手を引くのはテギョンの方じゃないか?」
一度消えた微笑みが、再びシヌに戻っていた。
コンサートの告白は演出ということにしてあった。対してシヌはミニョとのツーショットが何度もネットに載っている。ミニョが俺のもとに戻れば、一人の女を取り合ったと面白おかしく書かれるだろう。
どこへ行ってもそのことで記者に追いかけられ、ジェルミとミナムにも迷惑をかける。そしてファンの非難は相手に・・・ミニョに集中する。
ミニョを護るためにはどうしたらいいか・・・
俺は決断した。
「嫉妬か?醜いな。そんなもののせいで、今ミニョに心にもないことを言わせてるなら、俺がそれを断ち切ってやる」
俺は一度深く呼吸すると、腹の底に力を入れ、笑みを浮かべているシヌを睨むように見据えた。
「俺はA.N.JELLをやめる」
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マイページが変わっちゃったーΣ(・ω・ノ)ノ!
これはちょっと・・・
使いにくいよ~
慣れるまで時間がかかりそう(iДi)
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