部屋の中が明るい。でもそれは朝陽が部屋の中を照らしているからではなく、煌々とついた灯りのせい。今の時刻は・・・午前1時。電気さえ消していればカーテンが開いていても真っ暗な時間だ。
いつものように電気をつけたままベッドへ入ったが、いつまでたっても一向に眠気が来ない。
理由は判ってる、ミニョのせいだ。
ひとつ屋根の下、2人きりだと思うと、そわそわと落ち着かなくて眠れない。
・・・くそっ。
俺は布団を跳ね上げた。
ミニョはもう眠ってるだろうか。あたり前だよな、真夜中なんだし。いやでも・・・
ベッドに座ったまま、じっとドアを見る。
もしかしたらあのドアが開いて、ミニョが顔を覗かせるんじゃないかとチラリと思ったりもしたが・・・まずそんなことはありえないだろう。
俺は軽くため息をつき、ふるふると頭を振ると立ち上がった。
なぜだか妙に喉が渇いている。
水を飲みに下へ行こうとした俺の足は、ミニョのいる部屋の前でピタリと止まった。
このドアの向こうにミニョが・・・
こくんと唾を飲みこむ。
ゆっくりと手がドアノブへと伸びていき、冷たい金属を掴み、そのまま・・・・・・俺は手を離した。
「はぁ・・・何やってるんだ、俺は」
冷蔵庫から取り出した青い瓶で喉を潤すと、大きく息を吐いた。
これから朝までどうするか。ベッドで横になったってどうせ眠れないだろう。かといって曲を作る気分でもないし、部屋へ戻ってもうろうろと歩き回るのが関の山。
こうなったら朝までテレビでも観て時間をつぶすかと考えていると、ふと地下へ続く階段に灯りがついているのが見えた。地下にあるのはピアノ室と練習室。
つけた憶えのない灯り。
誰がつけたんだ?と考えるまでもない。今この家にいるのは俺とミニョだけなんだから、不法侵入者でもない限り、つけたのはミニョ。
下にいるのか?
俺は妙にどきどきとしながら階段を下り、ピアノのある部屋を覗いた。
階段の途中でチラリと覗いただけではピアノの前にミニョの姿はなく、誰もいないように見える。しかし近づいていくと、ピアノの下で倒れているミニョが見えた。
「ミニョ!」
俺は慌てた。カフェで店長が倒れてるのを見た時の何倍も何十倍も慌てた。
急いで膝をつき、ピアノの下にもぐった。
「ミニョ!大丈夫か!」
軽く身体を揺すった後、ミニョの顔を覗き込む。
顔色はとくに悪くない。表情も穏やかで、呼吸も規則正しく、まるで眠っているよう・・・
「・・・う~ん・・・もう、お腹いっぱい・・・」
ミニョの口から発せられたのは、苦しい息遣いでもなければ痛みを訴える声でもない。動揺しまくってる俺をあざ笑うかのような平和な言葉。
まさか・・・本当に、寝てる、のか?
俺の首が眉間にしわを寄せたまま傾いていく。
穏やかな呼吸に苦悩のかけらも見られない表情。
落ち着いてよく見ればミニョは倒れているのではなく、寝ているだけということが判った。
そしてミニョはむにゃむにゃと何か言いながらごろんと俺に背を向ける。
・・・・・・・・・こいつ!
俺はミニョの尻を蹴飛ばしてやった。
1クリックお願いします
更新の励みになります
↓