You're My Only Shinin' Star (274) ヘイの動揺 7 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

夜の静かな病院の廊下をヘイは足早に歩いている。冷たいリノリウムの床は、カツカツとヒールの音だけを無情に響かせていた。


タクシーの中でミニョへ電話をし、ミナムの容体が少しは判った。手の震えは止まったが、ミナムの顔を見るまでは全身を包む不安な気持ちは消えないだろう。早くこの息が詰まるような感覚から解放されたい、そう思うのに・・・

病室の前で一瞬、週刊誌の写真がヘイの脳裏にチラついた。ミナムに腕を絡ませるミア。ミアへ笑顔を向けるミナム。


この中にいるかも知れない・・・


嫌な考えを振り払うように軽く頭を振ると、ヘイは手の甲をドアへ向けた。しかしヘイがノックをする前に目の前のドアは静かに開いた。


「やっと来たか。」


ドアを開けたテギョンは廊下に立っているヘイを見て口の片端を上げると、部屋の中を振り返った。


「ミナム、精神安定剤が来たぞ。」


ヘイが開いたドアからそっと覗くと、中にはベッドに横になったミナムとその傍には鼻の頭と目を赤くしたミニョがいるだけで、他には誰の姿も見当たらなかった。






ミナムの運転するバイクの前には居眠り運転なのか、ふらふらと車体を左右に揺らしながら走っている車がいた。いつ事故るか判らない車の後ろについているのは危険だと判断したミナムは、前の車を抜きにかかろうとスロットルを開けた。その直後、前の車が大きく右へ寄って行きガードレールに接触。接触自体はそれほど大したことはなかったが、その衝撃で運転手は慌ててハンドルを左に切り、ちょうどそこには車を抜こうとしていたミナムがいて・・・

横からドンッと車に突き飛ばされるようにぶつけられたミナムのバイクは転倒。

ガリガリと火花を散らしながら反対車線へ横滑りしていったミナムの目の前に迫ってきたのは大型トラック。




「よくその程度で済んだな。」


「俺、運がいいんだ。」




高床のトラックの下に入り込んだミナムの身体は、全身打撲、数ヶ所の骨折と擦り傷。ヘルメットのおかげで頭と顔は無傷だった。

相手が普通車なら車体の下に入り込むのはまず不可能で、トラックでも低床だったりタイミングが悪ければもっと深刻な状態だっただろう。その点ではミナムの言う通り、運がよかったのかも知れない。





「ろくに動けないくせにヘイと約束があるから行かなきゃってうるさいから、医者を呼びに行こうとしてたとこなんだが・・・ちょうどよかったヘイが来たんならおとなしくしてるだろう。・・・じゃあ、俺達は帰るから。」


「えっ!?」


一ヶ月ほどで退院できそうだと聞いたヘイはほっと胸をなでおろしたが、そのまま帰ろうとするテギョンに少し慌てた。

事故と聞いて駆けつけてきたが、今、ミナムと二人きりにはなりたくなかった。

レストランでミナムを問い詰めるつもりだった。でも、真っ白なベッドの上、痛みを堪えながら笑顔を作るミナムを見ていると、今はとてもそんな話はできなくて、二人きりにされてもどんな顔で何を話したらいいか判らない。


「他の連中には今日は来るなと言ってある。ゆっくり二人で話をするんだな。」


ヘイにはテギョンの言葉が、ミナムへ『きちんとけじめをつけろ』と言っているように聞こえて。


「じゃあお兄ちゃん、また明日来るね。」


ヘイの動揺など知る由もない二人は、「ちょっと待って」と言うヘイに見向きもせず、病室から出て行ってしまった。


二人きりになった部屋。

残されたヘイはミナムに背中を向けたまま振り向けずに立っていた。


「ヘイ、ゴメン・・・呼び出しておいて、店行けなくて・・・」


静かな声に一瞬唇をキュッと噛むと、努めて平静を装いヘイはミナムを振り返った。


「な、何言ってんのよこんな時に。事故なんだから仕方ないでしょ。」


そう言葉を返したきり次の言葉が口から出てこない。それはミナムも同じなのか、何かを考えるような表情で口を閉ざしたまま。

ぎこちない空気が流れ、沈黙に耐えられなくなったヘイが逃げるように部屋から出て行こうとすると、それにミナムが待ったをかけた。


「話があるんだ、大事な話が・・・」


じっと天井を見ていたミナムがヘイの方へ顔を向けた。それは思いつめたような・・・言葉通り、大事な話をするのにふさわしい顔。笑みの消えたその顔にヘイはこくんと息を呑んだ。


「俺・・・」


別れたいなんて言葉は聞きたくなかった。

それは他の女とつき合ってることへの怒りよりも、目の前の存在を失いたくないという強い思い。

事故の知らせを聞き、心配と不安で胸が押しつぶされそうになりながらタクシーに乗った自分には、泣いて、すがって、たとえどんな醜態をさらしても、傍にいたい人が、そこにいる。


「私は嫌よ!」


ミナムが何かを言いかけた瞬間、ヘイはそれを遮るように自分の気持ちを口にした。



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273話の次にアップしたお話(番外編)が消されてしまいました。

読めなかった方、多いのでしょうか?



本編の下書きのストックがまだ少し残っているので、それを全て出しきってから消えたお話をどうするか考えたいと思います。



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