You're My Only Shinin' Star (264) 小さな来訪者 6 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

ミンジュンをベッドの端に寝かせ、テギョンはいつも通りミニョを抱きしめて寝ようと思っていた。しかしベッドから落ちるといけないからとミニョに押し切られ、テギョンとミニョでミンジュンを挟むようにベッドへ入ることに。




「ミニョ・・・ミニョ・・・」


布団を被り、どれくらいたった頃だろうか。なかなか眠れないテギョンは小さな声でミニョを呼んだ。ミニョからの返事はスースーという規則正しい寝息だけ。


一晩だけ、たった一晩子供を泊めればいい。仕事で家に帰れない夜もあるのだから、ミニョの体温を感じられなくても、どうということはない筈。

そうは思っても、同じベッドで寝ているのに、抱きしめることもできないというのはどうも落ち着かない。

いっそ向こうの部屋で一人で寝てしまえば・・・とも思ったが、「ママ・・・」と呟きながらもぞもぞと動き出したミンジュンがミニョの胸に顔を埋めるようにして抱きついている姿を見て、ここを離れる訳にはいかないとテギョンは強く思う。

母親を求めての行動だと頭では判っていても、感情は別。


「こら、離れろ。」


大人げないと思いつつもテギョンは眉間にしわを寄せると、ミンジュンの身体をミニョから引きはがした。

ベッドの上で胡坐をかき、腕組みをしたテギョンはすやすやと眠っているミンジュンを見下ろし、ムッと口元を歪ませた。


「こいつ・・・またやるかもな。」


どうしたらいいかなどと考えるまでもなく、テギョンが出した結論は・・・


”ミニョの横には寝かせられない”


ベッドは広い。二人の身体で子供を挟んでいなくても落ちることはないだろうと、テギョンはミンジュンの身体をもう少しだけミニョから離し、そのできた隙間に自分の身体を割り込ませた。

狭いスペースに身体を横たえると、必然的にミニョの身体と密着する。ミニョの胸がテギョンの二の腕に触れ、一瞬その膨らみに手が伸びたが、歯止めが利かなくなるとマズいと何とか思いとどまった。

かわりにミニョの頭を自分の胸に押し付けるように抱きしめる。

両腕で包んだ身体は柔らかく、シャンプーの香りはテギョンの鼻腔をくすぐるように刺激する。

ざわめきながら自分の体内を熱く力強く流れている血液を感じると、騒ぐ心を落ち着けようとテギョンは目を瞑りゆっくりと大きな呼吸をくり返した。




なかなか眠れなかったテギョンも、いつしかその意識は漸く訪れた睡魔によって眠りの世界へといざなわれる。

しかし、平和な時間は長くは続かなかった。


「てっ!」


突然顔に降ってきた衝撃にテギョンが瞼を開けると、目の前には小さな手が。

ミンジュンが寝返りをうった拍子に、手の甲がテギョンの顔に見事にヒットした。まるで裏拳のように。

チッと舌打ちをしながら顔に乗ったままの手を退かし、布団を引き上げる。しかし、しばらくして再びやってきた睡魔に手放した意識は、不本意ながらあっという間にテギョンの身体に引き戻された。


「うっ!」


右の脇腹にミンジュンの足がくい込む。

いくら寝相の悪い小さな子供のしたこととはいえ、眠っている無防備な脇腹に蹴りを入れられたテギョンは、短い声を上げ顔をしかめた。


「おい・・・」


痛む脇腹を右手で押さえながら上体を起こしたテギョンは、すぐ隣にいる子供を睨みつけた。

ベッドサイドのほのかな灯りに照らされている幼い顔は、無垢な表情ですやすやと眠っている。


「チッ・・・」


やり場のない怒りを呑みこむと、テギョンはミンジュンの身体をあっちへいけとばかりに、ずりずりとベッドの端へと押した。

二人の間に充分なスペースができる。これくらい離れていれば大丈夫だろうと、身体を横たえたテギョンがホッと息をついたのも束の間、端に追いやった筈のミンジュンがごろんごろんと転がってきて・・・


「うわっ!」


テギョンの太腿にミンジュンのかかとが乗っかった。

いや、乗っかったというよりも、衝撃はかかと落としを食らったような感じで、その痛みにテギョンは思わず飛び起きた。


「お前・・・わざとだろう。絶対わざとだよな。」


攻撃を受けた場所がもう少しずれていたら、しばらくは身動きもできなくなるところだった・・・と思うと、ワナワナと震える拳を握りしめ、テギョンは頬を引きつらせた。

一方のミンジュンは、今度は眠ったままテギョンを乗り越え、ミニョへと近づこうとしている。

こいつ本当に寝ているのか?と疑いながら、そうはさせるかと再びミンジュンの身体をベッドの端へずりずりと移動させるテギョン。


”一晩くらい一緒に寝てもどうってことない”という考えがいかに甘かったかを、今、猛烈に痛感しているテギョンと、ぐっすり眠るミンジュンの攻防は、深夜まで続いた。




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