You're My Only Shinin' Star (257) 新しい日常 6 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

見慣れない壁が見える。

目が覚めたジェルミはまだ覚醒しきっていないぼんやりとした頭のまま、のっそりと身体を起こした。


「そっか、昨日・・・痛ててっ」


辺りをぐるりと見回した途端、頭にズキンとした痛みが走る。

片手でこめかみを押さえつつ、近くで寝ている二人の男に声をかけた。


「アン社長、マ室長、朝だよ。」


昨日は予定していた仕事が突然延期になった。久しぶりに皆でサウナに行くかというアン社長の誘いをテギョンはあっさりと断り、シヌは一人で練習をするからとやんわり断る。ミナムはいつの間にか姿を消していて、残ったジェルミはマ室長と共に半ば強引にアン社長の相手をさせられることになった。


まずは腹ごしらえということで食事に行き、その後はアン社長待望のサウナへ。

三人並んで汗を流しながら、アン社長の説教のような愚痴のような話を聞かされたとこまではジェルミにも想定内のことだった。しかし、それで解放されるというジェルミの思惑は外れ、次は飲みに行くぞと引っ張られ。

店で飲みながらアン社長に加え、今度は酔っぱらったマ室長の愚痴まで聞かされた挙句、アン社長のマンションで飲み直すことになり・・・

ローテーブルの上にビールの空き缶やつまみの袋が散乱するリビングで、男三人の雑魚寝で朝を迎えたジェルミは、二日酔いの頭痛と闘いながら他の二人を起こした。






「俺はね、別にアン社長のサウナに付き合うのが嫌だとか、マ室長と飲みに行くのが嫌だって言ってるんじゃないんだよ。ただ、俺だけが二人の愚痴をずっと聞かされて、悪酔いして二日酔いの今日くらいは、少しのミスなら大目に見てくれてもいいじゃんって言いたいの。」


事務所の練習室。テギョンに「たるんでるぞ」と睨まれたジェルミは、スティックを握りしめながらムッとテギョンの方を見た。


「何だかいつもは完璧みたいな言い方だな。」


「そりゃあ本番でトチっちゃうこともあるけど・・・」


痛いところをつかれ言葉を詰まらせるが、今日はこのままでは引き下がれない。マ室長の愚痴はアン社長の手前、社長のことではなくテギョンに集中していて、あいつは付き合いが悪いだの目つきが怖いだの、独り言のようにぶつぶつと口の中で呟いていたかと思うと、突然ジェルミの腕をがしっと掴み、「聞いてるか?」と顔を覗き込んでくる。

人の好いジェルミはテギョンを擁護しつつマ室長に賛同もして、ビールを飲みながら完全に酔っぱらっているマ室長の愚痴と、時々思い出したように口を挟んでくるアン社長の相手でぐったりだった。


今、この自分の胃のムカつきとドラムを叩く度にひびく頭痛は、テギョンがアン社長の誘いをあまりにもあっさりと断ったことが影響してるんじゃないかと思うと、全てテギョンが悪いような気がして、つい反抗的な態度をとってしまう。

昨日、いかに大変だったかを話したジェルミは、そこのところを全く判っていないテギョンに対し、ムスッと不満げな顔を見せた。


「要するに、俺が、昨日、サウナに、行かなかったせいで、ジェルミが、二日酔いになったと、そう言いたいんだな。」


「え?あ、別に、俺はそんなにハッキリとは・・・」


細かく区切るテギョンの言い方が、不機嫌さを表しているようで、ジェルミは言葉を濁した。


「・・・悪かったな。俺が忙しいせいで、ここのところずっとミニョは一人で食べてたんだ。久しぶりに一緒に食事ができると思ったら、足が家に向かっていた。」


人のせいにするな!と一喝されると思っていたジェルミは、「悪かった」という言葉に驚き、一瞬でテギョンに対する不満がどこかへ行ってしまった。それに何よりミニョの為だと言われては文句の言いようがない。


「あはは、俺が飲み過ぎちゃったのがいけないんだよね。ヒョンは悪くないよ、うん。ミニョも一人でご飯じゃ寂しいよね。昨日は喜んでたろ、いいなーあそこの店、おいしいって評判なんだよな。」


ジェルミには何気ない言葉だったが、テギョンの眉はピクリと動いた。


「何で俺達が外で食べたって知ってるんだ?」


確かにジェルミが言ったように、昨日はミニョと二人で外食をした。

ソユンを車で送った際、近くに最近できたおいしい店があると教えてもらい寄ったのだが・・・


「やっぱ、どこにいても目立っちゃうんだね。」


誰にも話していないのに、ジェルミが知っているということは、ネットだな・・・とテギョンは舌打ちする。

最近はミニョと一緒に出かけていても、以前ほどは騒がれなくなった。それはミニョとの時間を大切にしているテギョンにとっては喜ばしいことだったが、だからといって、周りの人間がテギョンに無関心になった訳ではない。

昨日も店の中でサインをねだられることはなく、声をかけられることもなかったが、常に複数の視線は感じていた。

昨日は変装といっても伊達眼鏡をかけるくらいのことしかしていなかったが、たとえしっかりと変装していたとしても、どこかしら目立ってしまうテギョンは、どこへ行っても完全に人の目を避けることは難しいだろう。そして、そんなテギョンの傍にいるミニョも。

記者に張り付かれていないだけマシか、とテギョンがため息をついていると、バタンと勢いよく開いたドアから、マ室長が息を切らせて飛び込んできた。




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